次代を創る「スマートビル・スマートシティ」:その1
海外で進む不動産のデジタル化「スマートビル」:ミレニアル世代
ミレニアル世代と呼ばれる80年代以降に生まれた10代、20代の若者たち。生まれた時からインターネットに接し、デジタルネイティブとも言われる。
そのミレニアル世代、黒電話を知らないらしい。黒電話を見せたら、電話であることは認識したものの、使い方を聞くと、ダイヤル番号が書かれた数字を押して使う、と回答したそうだ。
携帯電話に慣れたミレニアル世代にとって、電話をかけるとは、プッシュボタンを押すことを意味するからだ。
いまの常識、次の時代には非常識
いまの常識も、次の時代には非常識になる。
これまで車と言えば、ずーっと、エンジンで動き、アクセルがあって、ブレーキがあって、ハンドルで方向を決めて進むものと、だれもが今は思っている。
しかし、次の20年は自動運転が当たり前になって、アクセルもブレーキもなくなるかもしれない。アクセルペダルがある車を見ると、その時代の子供は、このペダル何のためだろうと思うであろう。
どこでも充電できるようなワイヤレス給電が実現すれば、電線がいらない社会が実現する。その時は電線を地中化することさえ、無意味な世界が来るかもしれない。
建設産業のIT化
建設産業も、今の常識が、次の時代の非常識になるはずだ。
ビルも、人が管理する時代から、IoTセンサーが随所に配され、AIやITが最適なビルの空調や管理を行い、人がいなくても自動でビル管理できる時代がくるはずだ。
不動産や建設という最もテクノロジーから遅れた業界でも、当然ながら、デジタル化、IT化の動きを止めることはできない。
スマートビル
その解を導くのが、「スマートビル」だ。
80年代にはインテリジェントビルとかが当時のPCやコンピューターネットワークの普及・需要に伴い、オフィスコンピューターと端末を設置するためのフリーアクセスフロアの設置や電話回線との接続、空調負荷の増加に伴う機器の設置など、通信と建築技術の融合が主眼であった。
スマートビルの概念は、さらにあらゆる信号がネットワークで結ばれ、個々人の端末ともつながり、ワーカーにとっては、スマートフォンや顔認証の生態認証により、個々人にとって働きやすい物理環境を提供する一方、高まるCO2削減やエネルギーコスト削減に対して、AIを活用して徹底的に無駄を削り、最適化するビル管理を行うなど、IT、AIを用いて高次のビル管理システムを構築することをいう。
建物を維持管理するためには
建物は、柱、梁、床、壁、天井、電気機器、空調機器、防災機器などから構成されている。
1万㎡の建物であれば、目視できる数は平米あたり5点から7点程度であるので、建物全体では、5万から7万点を維持管理しなければならない。建物を維持管理するためには、清掃、警備、保守、修繕など、さまざまな活動が必要だ。たとえば空調機だけでも、点検、フィルター交換、保守、測定、修繕などの「管理」や「保守」が必要となっている。
これまでは、人により、維持・管理してきたが、これから少子高齢化や熟練者の減少もあり、さらにIoTセンサーの高度化、低額化により、ビルの7万点のデータを人に代わってITが管理する時代になりつつある。
7万点もの数を管理するためには、明確でわかりやすい情報を提供する必要がある。そのためには、建物や機器の随所に設置された各種高度センサーとその場所をむすび、故障の原因や必要な定期修繕を的確に指示できる「ビルの位置情報となるデジタルデータ」が必要不可欠だ。
さらには、数多くのマスデータを解析し、ビルのエネルギーを最小限化したり、CO2削減を実現したりするなど、データ解析を瞬時に行い、最適なビル管理へとつなげることができる。
働き方や住まい方
一方で、働き方や住まい方を最新の技術によりサポートできる。
AI、ITを活用して人の生活を豊かにするだけでなく、より良い社会の構築につながるビルこそ、「スマートビル」だ。ぜひとも、読者のみなさんには、本書(次の記事以降)で得られた知識を大いに活用し、スマートなビルの構築に役立ててほしい。
本書(次の記事以降)では、不動産・建設のデジタル化活用の最先端技術について調査した最新の資料に基づき構成されている。
少しでも読者のみなさんのお役に立つことができれば幸いである。
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スマートビルの概念は、さらにあらゆる信号がネットワークで結ばれ、個々人の端末ともつながり、ワーカーにとっては、スマートフォンや顔認証の生態…
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