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プロダクトアウト型の製品開発を上手くやるための考察

プロダクトアウト型の製品を約3年半開発してきて思う、プロダクトアウト型の製品開発を上手くやるための考え方を自分なりに書いてみたいと思います。
プロダクトアウトやマーケットインと言う言葉の定義に曖昧さがあると思うので、この記事では終始自分の解釈でまとめます。

プロダクトアウトとマーケットイン

まず前提として、

プロダクトアウトは起業家のビジョンや新技術を起点に製品開発を行い、マーケットインは市場や見込み顧客のニーズを起点に製品開発を行うこと

と理解しています。

プロダクトアウト型の製品開発を上手くやるための考察.001

上記の解釈をもってプロダクトアウト型の製品開発の強み・弱みを挙げると以下が思い当たります。

強み

・今まで市場にない革新的な製品が生まれやすい
・既存製品とは提供価値やアプローチが違うので、初期市場で優位性を得やすい(一方で競争する相手もおらず比較対象が無い場合は、市場すら形成できていないのでニッチで終わる可能性もある)

弱み

・顧客獲得のためにサービス提供側の価値や考え方の啓蒙が必要になる
・立ち上げ期を超えても自分たちのビジョン(目標)への到達の仕方(山の登り方)に柔軟性が無いと、一向に顧客ニーズとの接点が持てず、Problem Solution Fitせずに終わる。そもそも顧客の課題を解決するモデルではないという見解もあるかもしれませんが、ここでは私の考え方で述べます(プロダクトアウトでも顧客の課題解決が重要と考える理由は後述)
・開発メンバーの目線を揃える提供価値の定義がビジョンや技術起点となり、顧客目線での合意形成を得づらい

一方で、マーケットインはプロダクトアウトの逆の強み・弱みがあり、開発メンバーの目線を揃える提供価値の定義が顧客起点となり、製品開発における合意形成を得やすい反面、正統進化の機能開発のみに陥り、コモディティ化しやすく競争優位性を得づらいなどネガティブな面もあると思います。また、差別化要素がユーザー体験など使ったら分かる細やかな点になりやすく、使い始めてもらうためには営業やマーケティング力が重要になるのも特徴と思います。

プロダクトアウトの考え方

前置きが長くなりましたが、この記事で焦点を当てたいのはプロダクトアウト型の製品開発において陥りがちな、市場や顧客ニーズを捉えられないリスクを避け、強みである創造性をどう活用するかという点です。
この点をプロダクトアウト型の製品開発における自分の考えを図示して、お伝えしたいと思います。

プロダクトアウト型の製品開発を上手くやるための考察.002

この図では現在の課題を解決するモデルをマーケットイン、未来の課題を解決するモデルをプロダクトアウトと定義しています。さらに上図をベースにプロダクトアウトを上手く機能させる自分なりの考えを表したのを下図A、市場や顧客ニーズを捉えられないアンチパターンを表したものを下図Bとして示します。

図A

プロダクトアウト型の製品開発を上手くやるための考察.003

図B

プロダクトアウト型の製品開発を上手くやるための考察.004

ポイントは2つあります。
1つ目は、顧客の潜在的な課題を分析して、自分たちのビジョンや技術と掛け合わせ提供価値を提案する点(図A)です。いくらプロダクトアウト型とは言え普遍的なものは、顧客は自分たちの課題解決や自己実現をフォローし、サービス事業者をフォローするわけではないということです。顧客の課題に従属するのが顧客自身とサービス事業者であり、サービス事業者がビジョンや技術に固執してそこから動かない(図B)と一向に市場や顧客ニーズを捉えられません。これがプロダクトアウト型の製品開発で一番犯してしまう過ちだと思います。

2つ目は顧客の既知の課題・顕在的な課題に向かうのではなく、未知の課題・潜在的な課題に向かうと言う点です。既知の課題に取り組んでも、期待値としては「あって当たり前」の域から脱することは出来ず競争優位性を得ることは難しくなります。これはマーケットイン型の製品開発のネガティブな面でもありますが、プロダクトアウト型の製品開発では、顧客も知り得ない潜在的な課題を探り当て、自分たちのビジョンや技術と掛け合わせ解決策を創出する点がポイントと思います。

解決策の創出方針と導線開発

では次に、顧客の潜在的な課題をどう見付け出し、自分たちのビジョンや技術と掛け合わせ創出した解決策へ誘うのかと言うこと(図Aの導線開発)についての考えを書こうと思います。

まず顧客の潜在ニーズの見つけ方は、今のところ古典的なUXデザインの手法以外に思い当たりません。
ユーザーから得るものは顕在化されている意見ではなく、行動調査やディープインタビューから得た事象をKJ法などと組み合わせ抽象化、グループ化し、問いの精度を上げつつ繰り返し行うことで深層心理を分析していく手法です。複数の課題の裏返しとなるニーズを体系化し関係性を炙り出すことまでは科学的な手法で行うことが出来ると思います。体系化にはペインやゲインを「〇〇できる価値」などと表現して、それが現在の自社サービスや代替手段で充足されているか未充足なのかを表す価値マップなどの手法が使えると思います。

価値マップの抽象図

プロダクトアウト型の製品開発を上手くやるための考察.006

ここで出てきた課題から自分たちのビジョンや技術と相性の良いものを選び出し解決策を創出します。抽象度の高い課題と掛け合わせると汎用性のある解決策になりますが、サービスの定義や顧客を誘う難易度が高くなり、より具体的な課題と掛け合わせるとターゲット市場は狭まりますが、サービスの定義や顧客を誘う難易度は低くなります。

導線開発としては、具体的な課題をプロダクトアウトの強みを活かすビジョンや技術と掛け合わせ、今までに無い解決策やサービス像を創ることをまず目指し、それを皮切りにより周辺の課題=マーケットに手を広げ、最終的には抽象度の高いサービス像でも広いマーケットにProblem Solution Fitしている状態をつくるのが理想的と思います。

価値の深度を表した抽象図

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また、中長期的なアプローチとして、マーケットインの考え方でユーザー体験などを強みに既存市場でのリプレイスを果たし、そのロイヤル顧客をアップセル、クロスセルさせて本来自分たちのやりたかった方向に誘うと言う考え方(下図)もあると思います。この場合は予め捉える顧客層がその後自分たちがやりたい方向性と相性が良いかを事前に調査・分析し、誘い方まで計画しておけると成功確率が上がると思います。

マーケットインからプロダクトアウトへのパス

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終わりに

抽象度の高い内容と思いますが、お読みいただきありがとうございました。顧客の御用聞きでは良いプロダクトはできないと言うカウンターの意見として、プロダクトアウト型の製品開発が推奨されることもあると思いますが、その考え方が顧客は欲しいものを知らないから、自分たちの思うものを創ろうとなってしまうと、あまり良い結果にはならないと思います。たとえプロダクトアウトだとしても顧客と一緒でなければ目指す世界には辿り着けません

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また、以前にもビジョン提案型のサービス開発と顧客視点の活用と言う記事でプロダクトアウト型の製品開発における顧客視点の取り入れや導線開発について違う角度から書いていますので、お時間あれば読んでいただけると幸いです。ありがとうございました。

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