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不安な心も全部、海が抱きしめてくれた

つい先日、大学生最後の夏休みを彩る思い出を作ろうと、友人二人と鎌倉へ出かけました。浴衣で小町通を散策し、お寺でお茶を飲んだ後に江の島に移動して浜辺に向かいました。

夏の海には白ワンピでしょ!ということで3人でそれぞれ買った真っ白なワンピースを身に纏い、まもなく日が傾き始める海へと向かいました。サイダーの瓶を片手に裸足で砂浜へ降りると、じんわりとした熱が足の裏に広がり、その心地よさと煌めく海の綺麗さで心が踊りました。

大学4年生、21歳。私たち3人は来年、それぞれ全く違った道を歩いていこうとしています。1人は大手企業に就職。1人は内定を得たものの自分の夢を追うために大学院への進学を決めました。私は今年を自分と徹底的に向き合う年と決めたため、来年就活をします。まだ何も見えない未来を形作るために別々の生き方をしていく私たちが共に過ごす最後の夏。圧倒的に不安が心の中を埋め尽くして居座っているけれど、今日だけは心の底から夏を楽しむと決めていました。

真っ青な空と真っ青な海が私たちを迎え入れ、心を照らします。私たちはそれを全身で受け止めながら、はしゃぎました。おろしたてのワンピースが濡れるのもおかまいなしに、波に向かって走って波と戯れて。この時間が終わってしまうのを惜しむことすら忘れて、喜びと海の匂いで心を満たしました。

だんだんと日が暮れてきて、海は青から夕焼け色へと移ろっていきます。日が暮れ始めると、今日という日の終わりを感じて切なくなりますが、この日だけは違いました。煌々と輝く夕陽も、照らされ煌めく海も、私たちを包み込んで離さないでいてくれました。それにこたえるように私たちは何度も海に入り、波を、しぶきを、見える限りの海を愛おしんでいました。

完全に日が落ちたあと、私たちは線香花火に火をつけました。線香花火のわずかな灯と波の音が、切なさを押し殺している心を優しくなでるように洗っていきました。この時間は有限で、ずっと続くわけではないことをどうしようもなくもどかしく感じながらも、だからこそこんなにも今を素敵だと思えるのだと気付かされました。

来年、私たちはそれぞれが選んだ道を歩きながら、その途中で何度も今日の事を思い出すでしょう。この日の私たちを抱きしめてくれた海での思い出は、迷いや葛藤を繰り返していく3人の背中を押してくれるはずです。またいつの日か、3人で笑顔で同じ海に出かける日を迎えられるよう、これからを懸命に生きてゆきたいと思います。

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