田崎智咲斗

乳児院、児童発達支援センター、放課後等デイサービスでの勤務を経て2021年独立。合同会…

田崎智咲斗

乳児院、児童発達支援センター、放課後等デイサービスでの勤務を経て2021年独立。合同会社虹縁(こより)代表。相談支援センターにこら(虹愛)を開所し、相談支援専門員として子どもと大人の計画相談を担う。人として性的マイノリティ当事者として、自分らしさをテーマに「対話型講演会」を実施。

マガジン

  • 児童発達支援センターB園での物語

    「A乳児院」の物語に続き、「児童発達支援センターB園」をまとめました。身体、知的または精神に何らかの障害のある子どもたちが通う児童発達支援センターでの経験をお伝えします。

  • 子ども・思春期時代の「ちいちゃん」

    「ちいちゃん」という1人の女の子の成長を振り返ります。幼少期から思春期を経て自立の時を迎える中で次第に大きくなっていく心と体の性の違和感についてお話しします。

  • 性と生を考える仲間との出会い

    性を人権の視点で考える会合に初めて足を運んだときのこと、私自身が自分の言葉で「性」の問題を講演会などで語り始めるようになったこと、そして、ただ私が一方的に語るだけではなく、1人ひとりが「自分らしさ」について性と生から考える「対話型講演会」を始めるに至るまでのことをお話しします。

  • 高校生の質問に回答!

    講演会で出会った高校生からの質問に答えたnoteをまとめています。

  • 女性として生まれ、男性として生きる彼と、私が結婚した理由

    トランスジェンダー男性である私の「妻」が、私と出会い、そして結婚に至るまでを語ります。彼女の正直な言葉を聞いていただければと思います。

最近の記事

「ちさと」変わってないなぁ

私は「縁がある」という言葉が好きです。 「またここか。まるで、この会場に呼ばれてるみたいだ」 月をまたいで3回、多い時は同じ週に続けて2回、同じ会場で講演会をすることは本当に珍しい。それに加えて、講演会活動を始めて9年目、初めての出来事がありました。 同じホールで2回目の講演会当日。次の講演会の責任者(会長)が講演会前にご挨拶に来てくださいました。ある小学校の校長先生でした。名刺を交換しフッと顔を見上げた瞬間、「なんか見たことあるな~」と思い、もう一度名刺と顔を確認しまし

    • ○○から見たトランスジェンダーの私その⑤職場の元同僚のHさんから見た私

      「一緒に働いていても、実は相手のことを知ろうとしていなかったことに気づいた」(Hさん)◆出会いから2か月後のカミングアウト 田崎さんと出会ったのはもう10年以上前です。 知り合いの紹介で、私は、障害のある子どもたちの通所施設でヘルパーとして働くことになりました。それまで、デイサービスセンターで高齢者介護にかかわったことはありましたが、障害のある子どもたちに接したことはありませんでした。 初めての仕事はわからないことだらけでした。目の前で子どもが泣いていても、なぜ泣いてい

      • ○○から見たトランスジェンダーの私その④職場の上司のO元園長から見た私

        「男でありたい自分をどう周囲に見せたらいいのか、田崎さんは迷っていました」(O元園長)田崎さんのことを知るずいぶん前のことです。私の子どもの幼馴染に、保育所に通っている時期から、自分のことを「オレ」と言い、髪もお兄ちゃんよりも短くしている、活発な女の子がいました。周囲の大人は「この子、男の子みたい」と言っていましたが、保育所のほかの子どもたちはそんな彼女を素直に行け入れ、野球ごっこやドッチボールに誘っていました。 小学校に上がるころには、「オレ」が定着し、もうだれも何も言い

        • ○○から見たトランスジェンダーの私その③男友達のふっちゃんから見た私

          「ちーとはバカ話、下ネタ、何でも話したし、女の子のいる店にも一緒に行きました」(ふっちゃん)ちーのことを知ったのは10年以上前。ちーと自分の嫁さんが児童発達支援センターの同僚職員でした。嫁さんから「身体は女性だけど、心は男なんだよ」と、そんな感じで聞いていました。 嫁さんは、障害のある子どもたちの療育に携わる仕事をしていたこともあって、当時からLGBTQに関して知識もあったと思います。でも、その頃の自分は、LGBTQのことをよくわかっていませんでした。まあ結局障害? 病気?

        「ちさと」変わってないなぁ

        マガジン

        • 子ども・思春期時代の「ちいちゃん」
          16本
        • 児童発達支援センターB園での物語
          13本
        • 性と生を考える仲間との出会い
          7本
        • 高校生の質問に回答!
          4本
        • 女性として生まれ、男性として生きる彼と、私が結婚した理由
          3本
        • 性別適合手術と妻へのプロポーズ
          12本

        記事

          【○○から見たトランスジェンダーの私その②】職場の同僚だったトモコ夫婦から見た私

          「男になるためにたくさん苦労してきたけど、今、笑顔でいられてよかったね」(トモコ)「カミングアウトも、へえそうなんだという感じでした」(トモコ) 私が田崎と出会ったのは、児童発達支援センター・B園で保育士として働き始めた時です。障害のある子どもたちを支援する仕事に就いて、すでに5年ほど経っていましたが、私は別の社会福祉法人で働いていましたから、同じ法人から異動してきた田﨑を職場の先輩のように頼りにしていました。 B園の同期は田崎、私のほかに3人いました。5人は経験も年齢

          【○○から見たトランスジェンダーの私その②】職場の同僚だったトモコ夫婦から見た私

          【○○から見たトランスジェンダーの私その①】女友達・ひいちゃんから見た私

          「ちぃちゃんが男か女かはどうでもいい。大切なのは、何でも相談できる友人だということ」(ひいちゃん)■元気で明るく、男の子っぽい、大切な女友達 私とちぃちゃんは、中学が一緒。でも、中学ではクラスが違ったので、そんなに付き合いはありませんでした。ちぃちゃんは部活動でフルートをやっていました。でも、見かけたときはいつも練習そっちのけで友達とおしゃべりしていて(笑)。明るく、元気な子というのが私のちぃちゃんに対するイメージでした。 ちぃちゃんには、いつでも一緒にいる仲のいい女の子

          【○○から見たトランスジェンダーの私その①】女友達・ひいちゃんから見た私

          性と生を考える仲間との出会い⑦対話を通して築きたい、多様性を尊重できる社会

          性的マイノリティとしての苦労を語り、「田崎さんはかわいそう」と同情してもらっていた講演会から、私の話をもとに参加者と一緒に性と生について語り合い、「多様な性と生を尊重できる社会」を考える講演会へ。私は、「対話」によるまちづくりに取り組む山口覚さんとともに、対話型の講演会に挑戦しました。2019年2月のことです。 私は、福岡県で開かれた、山口さんがファシリテーション(対話の進行)を務める対話の場に、ゲストスピーカーとして参加しました。参加者は、中学1年生を最年少に、高校生、大

          性と生を考える仲間との出会い⑦対話を通して築きたい、多様性を尊重できる社会

          性と生を考える仲間との出会い⑥正解のない問いにみんなと向き合う「対話」との出会い

          32歳になったころから、教育委員会や学校などから、人権に関する講演会の講師として招かれ、「女性の身体と男性の心」という身体と心の性が一致しない自分の苦しみ、そして性別移行など、自分の人生を時系列で語る機会をたくさんいただくようになりました。 講演を聞いて、たくさんの人たちが涙を流してくれました。泣いてくれる人が多いほど、よい講演をしたと自分でも満足していました。 でも、あるとき、私は気がついたのです。講演を聞いて泣いてくれるのは、自分がひどくかわいそうだと思われているから

          性と生を考える仲間との出会い⑥正解のない問いにみんなと向き合う「対話」との出会い

          性と生を考える仲間との出会い⑤区別、分断を生んだ「感動的な講演」

          私は、32歳になったころから、教育委員会や学校などから人権に関する講演会の講師として招かれるようになりました。多いときには月に8回ほどの講演を行いました。 講演では、「女性の身体と男性の心」という身体と心の性が一致しない自分の苦しみ、そして性別移行など、自分の人生を時系列で語りました。 講演を通して、私は、「自分は特別な存在でも、まして奇妙な存在でもない。みんなと同じなのだ」という思いを伝えたいと思っていました。しかし同時に、「私が経験してきた悲しみ、苦しみをわかってほし

          性と生を考える仲間との出会い⑤区別、分断を生んだ「感動的な講演」

          性と生を考える仲間との出会い④性と生の尊厳の守り方は人それぞれ

          性的マイノリティの当事者をはじめ、様々な人が集まって性と生について考える会合に参加したことがきっかけで、私は、性的マイノリティの当事者として講演活動を行うようになりました。 その頃、私は、障害のある人たちが自立した日常生活や社会生活を営むことができるよう支援する通所事業所を運営するNPO法人に保育士として働き始めていました。このNPO法人は、障害のある子どもの保護者たちが、親亡き後のために子どもたちの養護学校卒業後の進路の選択肢を増やそうと立ち上げたものでした。 私は後に

          性と生を考える仲間との出会い④性と生の尊厳の守り方は人それぞれ

          性と生を考える仲間との出会い③命を守るために、性と生について語る

          27歳になった頃から、性的マイノリティの当事者など様々な人が集まり、性と生について考える会合に参加するようになりました。 会は2か月に1回くらいの頻度で開催されました。そこではいろいろなテーマで話し合いが行われました。エイズや性同一性障害などがテーマになるときもあれば、「高齢になった同性愛カップルはグループホームに同居できるのか」「トランスジェンダー女性がDV被害者となった場合、女性用シェルターを利用できるのか」といった、一般にはまだ可視化されていない、しかしまさに生き方

          性と生を考える仲間との出会い③命を守るために、性と生について語る

          性と生を考える仲間との出会い②特別な人はいないけれど、だれもが特別な存在になる場

          性的マイノリティの当事者をはじめ、様々な人が集まって性と生について考える会合に足を運んだのは27歳のときです。それまでは、性的マイノリティの当事者が参加する会合などには参加したことはありませんでした。 当時の私は、自分がトランスジェンダーであること、つまり性的にマジョリティではないことに罪悪感のようなものを持っていました。普通じゃなくてすみません、男なのか女なのかわかりにくくてすみません……そんな気持ちでしたから、性的マイノリティの当事者が参加するコミュニティに積極的に足を

          性と生を考える仲間との出会い②特別な人はいないけれど、だれもが特別な存在になる場

          性と生を考える仲間との出会い①「マイノリティ」である自分自身に向き合う

          27歳になった頃、性的マイノリティの当事者など様々な人が集まり、性と生について考える会合に足を運びました。今から13年ほど前のことです。女性として生まれ、育ち、しかし自分の心が男性であることに気づき、悩み、苦しみながら、性別適合手術を目標に、男性ホルモンの注射を始めたころでした。 中学、高校と進んで、身体と心の性の違和感に気づいたころから、そして、自分の恋愛の対象が男性ではなく女性だと気づいたころから、それまでおよそ10年間、性的マイノリティの当事者が参加する会合などには参

          性と生を考える仲間との出会い①「マイノリティ」である自分自身に向き合う

          高校生の質問④「お互いを理解し合うことって必要ですよね?」

          【高校生からの質問】 高校生「多様性を尊重する社会をつくるためには、お互いを理解し合うことが欠かせないと思うのですが……」 *** 僕は、トランスジェンダー男性であり、性的マイノリティの1人ですが、みなさんに「理解してもらいたい」とは必ずしも思っていないんです。 もちろん、トランスジェンダーはどのような人たちなのか、事実を多くの人に知ってもらうことは大切だと思っています。でも、知ったからといって理解できないかもしれない。僕はそれも仕方ないと思っています。ただ、理解でき

          高校生の質問④「お互いを理解し合うことって必要ですよね?」

          高校生の質問③「女子校、男子校と分けることについてどう思いますか?」

          【高校生からの質問】 「田崎さんは、学校を女子校、男子校と分けることをどう思いますか? 共学の方がいいと思いますか?」 *** 【田崎の回答】 実は僕、女子校出身なんですよ。僕の通った女子校の制服はなかなかかわいくて、気に入っていました。 女子校や男子校については、僕個人は、なくした方がいいとは思っていません。きっとどの学校も、女子校、男子校としての意義、使命を持って教育をしてきたのだろうと思います。もちろん生徒に「女らしさ・男らしさ」を求めすぎるのは、今の社会には

          高校生の質問③「女子校、男子校と分けることについてどう思いますか?」

          高校生の質問②「同性愛者が登場するドラマに対する感想は?」

          【高校生からの質問】 「『おっさんずラブ』など、同性愛者をはじめとする性的マイノリティが登場するテレビドラマを見て、田崎さんはどう思いますか?」 *** 【田崎の回答】 テレビドラマや映画、マンガなどで性的マイノリティが登場人物の1人として描かれるケースは確かに増えてきましたよね。2019年に大手広告会社が、「日本のLGBT層は人口の8.9%で、左利きの人の割合とほぼ同じ」という調査結果を発表し、話題になりました。自分の身近に存在するはずの性的マイノリティがドラマの登

          高校生の質問②「同性愛者が登場するドラマに対する感想は?」