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本を選ぶときに考えていること・本を読むときに考えていること

「近いうちに週末本屋を開けたら…」
そう思ってからこの方、加速度的に手元の本の点数が増えている気がする。

それはさておき、最近「どうやって本を選んでいるのか」、そして「本を読んでいるときには何を考えているのか」ということを立て続けに人から聞かれたので、自分用のメモも兼ねて少し書いておきたい。

①どうやって選ぶか

結論から先に言ってしまえば、「直感」である。
だが、そう言ってしまっては元も子もないので、補足をしたい。

まず、私の中には「信頼している出版社」がいくつかある。例えば、古いところだと白水社やみすず書房、筑摩書房など。比較的新しいところだと、夏葉社や水声社など。
そして、そこの出版社の新刊一覧はなんとなくでも目にするようにして、タイトルだけでも記憶の片隅にとどめておく。

その後、実際に書店に行ってみて、その記憶をたどりながら、それらの本がある場所に足を運び、本を手に取る。

この手に取ったときの第一印象も重要で、装幀はもちろんのこと、「ハードカバーだと思ってたらソフトカバーだった」とか、その逆であったりとか、ともかく肌感覚として「しっくりくる」かどうかが大切。この時点で買うかどうかの8割は決まっていると言っても過言ではないかもしれない。

そして、帯があれば帯文を読み、「はじめに」と目次とあとがきをパラパラとめくって、何かしらピンとくるものがあればとりあえず買う。「ホントの出会いは一期一会」だと結構本気で考えているので、迷うことは少ない方だと思う。

まとめるならば、本を選ぶ基準は「出版社、装幀、肌感覚」がほとんどを占め、最後の決め手はチラ見した内容。
この方法が良いのは、自分の「好きな」本がどんどん手元に集まってくること。
でも、良くない点ももちろんあって、(それは直前のことと表裏一体だけれど)「好きな」本しか手元に集まらないこと。言い換えれば、「価値観を揺るがすような出会い」がある確率は低くなってくるかもしれない。
だからこそ、「誰か他の人が好きな本」を知ることは、とても楽しい。そして、その「誰か」が、自分と根っこの部分の価値観は共有していながらも自分とは違った生き方をしている人だったりすると、なおのこと良い。

皆さんはどんな本がお好きですか。

②何を考えているか

「本を読んでいるときって、何を考えているんですか?」

先日こう聞かれたとき、咄嗟には返事ができなかった。奇妙なようだが、「何を考えているか」について考えたことがなかったからだろう。
そんなわけで、やや苦し紛れに返した答えは「"ふんふん、なるほどね~"って感じ…かな」などという、なんともお間抜けなものになってしまった。そして、それだけで終わってはあまりに申し訳ないので、「話しかけられても反応しない、ってくらいのめり込んではいなくて、常に周囲の世界に対して開いてはいるかな~」と、補足になっているのだかいないのだかよく分からない言葉を接いだ。

後になってよく考えてみれば、「ふんふん、なるほどね~」と思っているときは、書かれてあることを自分の身に引きつけて、これまでの生に呼応する部分があるか、もしくはこれからの生の道標になる部分があるか、のいずれかのときだと思う。「本を読むこと」は「生きること」につながっている。

そして、「世界に対して開いている」。実は「本を読む」という時間の中には本の世界に没頭している瞬間だけではなくて、自分の周りにある状況を楽しむ時間も含まれている気がする。
これは、初台のfuzkueさん (http://fuzkue.com/) で本を読んでいるときに顕著なのだが、お店のドアを開けて人が入ってくる音や気配、店主の阿久津さんがコーヒー豆を挽いたりフードをせっせと作っている音や気配を感じ取って「あぁ、なんか良いなぁ」と思うことも含めて、私にとっては「読書」なのだ。そんな状況を楽しみつつ、また本の世界に戻っていく。そしてまたふと状況を楽しみ…という往復は、とても楽しい(その意味でも、間違いなくfuzkueさんは「本の読める店」だ)。

5月19日に、グラフィックデザイナーの新井リオさん (https://twitter.com/_arairio) の素敵な事務所で開かれた素敵な読書会も、まさにそんな「状況も楽しむ」ものだったと思う。本を読みつつ、ふとした瞬間に周りで交わされている会話に耳を傾け、それが終わるとまた本に戻って没頭する…。

本があると、世界は面白い。

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