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【映画】ミッドサマー《ドン引きに潜む普遍性》

「ヘレディタリー 継承」の監督、アリ・アスターの次作。

ヘレディタリーもかなり精神にくる映画だったので、この映画も心して観ました。Amazon primeで観ました。

不慮の事故により家族を失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンを訪れた。彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加だった。太陽が沈むことがないその村は、美しい花々が咲き誇り、やさしい住人たちが陽気に歌い踊る、楽園としか形容できない幸福な場のように思えた。しかし、そんな幸せな雰囲気に満ちた村に不穏な空気が漂い始め、妄想やトラウマ、不安、そして恐怖により、ダニーの心は次第にかき乱されていく。

映画.comのミッド・サマー紹介ページより引用

怖さの種類

面白かったです。

この映画、怖くて不気味でドン引きすることがいっぱい起こります。

怪奇現象や生命の危機を感じさせる従来のホラー映画に描かれていた恐怖というより、

他の文明から隔絶された閉鎖的コミュニティにおける文化、因習、信仰に狂気を感じ、恐怖を感じる映画だと思いました。

人が怖い映画。

閉鎖的な社会で狂気に押し包まれ、精神をゆっくりと締め上げられるような恐怖を味わえる映画なので、怖いのが苦手な人は観ない方が良いかもしれません。

本人達はある意味幸せそう

先ほど述べた通り、圧倒的ドン引き集落に迷い込んだ主人公達。

そこで狼狽してるのは主人公一行のみなんですよね。

異常な出来事を引き起こしてる張本人達は、むしろ、みんな何だか楽しそうで幸せそうです。そこがまたドン引きポイントなんですが。

狂気を目の当たりにし続ける中で、ふと、逆に現在、自分の所属している社会において正常とされている価値観について考えさせられます。

ここに観ているものの何に自分は恐怖を感じ、本来どうあるべきと自分は考えるのか。

正常とはなにか。

人にとっての幸せとは何か。

あの集落の登場人物たちは、自分たちの行動に何の疑いもなく、幸せを信じています。
そんな人たちに、外部から何かを言えるのか。

それこそ、多様性への冒涜。
余計なお世話なのでは。

そんな風に、自分の現在地を疑い、改めて別の観点から見つめ直すきっかけを与えてくれる映画という側面もあるのではないかなと思いました。

ちょっと笑えるかも

監督は、以下の記事の通り、自分としてはこの映画はホラーとは思っていない、ダークコメディだ、と言っていました。

よいホラーというものは、コメディと紙一重、だと思っています。

どちらも、「そのシチュエーションで本来なら起こるはずがないこと」を描いているという点で共通しているためであり、

そういう、共通する本質に迫ることができている映画は、共通するがゆえに、笑いと恐怖の類似性を意識させるから、紙一重と感じるのだ、と考えています。

異文化に翻弄される様はある意味普遍的であり、未知に遭遇した際の、怖いとも面白いとも言えないような独特の困惑した感情は、誰しも感じたことはあるのではないでしょうか。

そんな普遍性を描いた映画だとも言えるのかもしれません。

元気なときに観よう

ただの不気味で怖い映画、では終わらない何かを与えてくれる映画だと思います。

とはいえ、精神を追い詰めてくる映画だとも思いますので、興味があるけど、耐えられるか自信がない方は、せめて元気な時に観ましょう。

(トップ画像はTwitterミッドサマー公式アカウントから引用)

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