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『はみ出しスクール水着』:1986、日本

 青葉学院高校のシンクロナイズド・スイミング部に所属する秋野素良は、プールで演技を披露した。しかし女性コーチは、「行水かと思ったわ」と酷評する。同じシンクロ部の宋源寺蘭子が演技を始めると、コーチは「完璧だわ。世界の頂点を狙えるわ」と絶賛する。
 蘭子も自信満々で、もうすぐ行われるアジア大会の予選でも優勝を確信している。しかも彼女は「アジア大会なんて小手調べよ」と軽く見ており、目標はオリンピックだと素良に語る。素良が「オリンピックか。出たいなあ」と漏らすと、「無理よ。その胸、大きいだけで品が無いし、脚は太くて短い。向いてないんじゃないの」と冷たく告げる。

 下校時、素良は友人の村田奈美子に「恋人はいるの?」と質問し、「いるよ、10人くらい」という答えに驚く。「素良は?」と問われた彼女は、「いるに決まってるじゃん」と嘘をつく。すると奈美子は「たまには浮気しようか」と持ち掛け、テレクラに電話を掛ける。
 彼女は喫茶店に5人の男を待機させ、外から電話で順番に呼び出して観察する。長崎というデザイナーの男を気に入った奈美子は、彼と共に去った。実家の銭湯へ帰宅した素良は、仕事の手伝いを要求する父を軽く受け流して部屋に入る。テレクラのビラを眺めた彼女は、長崎とセックスする妄想を膨らませた。

 翌日の練習前、コーチは部員たちに「シンクロ連盟からの通達で、今年から水着の食い込み度と土手の高さも採点の対象になる」と説明した。彼女は部員たちに、水着の食い込み度を確認すると告げる。
 コーチは蘭子を計測して絶賛した後、素良には「もっと努力しなさい」と手厳しいことを言う。続いて松原繁子を計測しようとしたコーチは、色気が無い水着なので「測定不能」と告げ、着替えるよう命じた。繁子はビキニの水着に着替えるが、あまりに毛深くて腹部まで生えているのでコーチは仰天した。

 繁子はコーチから、剃毛と3日間の自宅謹慎を命じられた。彼女は男子生徒の手島に声を掛け、剃毛を頼んだ。電気カミソリで綺麗に毛を剃った手島は、繁子に誘われてセックスした。素良は父に頼まれ、セーラー服姿で番台に座る。
 そこへ奈美子がやって来て、「凄かったよ、こないだのデザイナー」と胸のキスマークを見せた。奈美子は素良に頼み、番台の仕事を体験させてもらう。そこへ手島の先輩部員であるタカオが現れ、そのチンコの大きさに彼女は驚愕した。

 素良はテレクラに電話を掛け、男と会う約束を交わした。しかし指定された喫茶店へ赴くと、待っていたのが歯抜けで無精髭の冴えない男だったので慌てて逃げ出した。
 次の日、素良は通学中の電車で痴漢に逢うが、近くにいた男に助けられる。電車を降りた彼女が礼を言うと、男は「気を付けて」と軽く告げて立ち去った。練習に赴いた素良と部員たちは、アメリカから招聘された特別コーチの龍神俊一をコーチに紹介される。龍神は、素良を電車で助けてくれた男だった。

 龍神の指導の下で、アジア大会に向けた練習が開始された。奈美子は練習が終わった後、部室の近くでタカオと関係を持った。理事長はコーチを呼び、大金を積んで招聘した龍神の指導について質問する。
 優秀だと聞いた彼は満足し、「名誉も金も手に入れた。今は蘭子をオリンピックに出場させることだけが、ワシの生き甲斐じゃ」と口にした。理事長は愛人であるコーチから「少しは私のことも」と言われ、セックスに及んだ。

 素良は家に戻ってからも、銭湯で自主練習に励んだ。一方、蘭子は燃えるような恋がしてみたいと思っていた。予選まで2週間となり、龍神は「青葉学院高校から出場できるのは1名だが、5日後の学内選考会で決定する」と部員たちに通達した。
 素良の練習を見た龍神とコーチは、その上達ぶりに危機感を抱く。素良が練習後にシャワーを浴びていると、龍神が現れた。彼は「今の君なら、宗源寺君に勝てるかもしれない」と褒めた後、素良にキスをして体の関係を求めた。

 素良は龍神を受け入れ、初めてのセックスに至った。すると龍神は彼女に「今度の学内選考会で、宗源寺を勝たせてやってくれ。それが俺の仕事なんだ」と告げ、その場を後にした。帰宅した素良は、さらに厳しい練習で自分を追い込む。
 龍神は蘭子の個人レッスンを担当し、下半身の硬さが弱点だと指摘した。彼は蘭子の男性経験が3人だと知り、「たった3人しか知らないようでは、あの流れるような躍動感は出せないんだ」と語る。龍神は蘭子とセックスすることで、弱点の解消を図ろうとする…。

 監督は滝田洋二郎、脚本は高木功、プロデューサーは半沢浩、撮影は志賀葉一、照明は岩崎豊、編集は酒井正次、美粧は庄司真由美、振付は土田一代志、録音は銀座サウンド。

 出演は清里めぐみ、森田水絵、川上雅代(織本かおる)、野川雪美、小林あい、蛍雪次郎(蛍雪次朗)、池島ゆたか、野上祐二、外波山文明、ジミー土田、古田信幸、会田雄二。

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 『痴漢電車』シリーズの滝田洋二郎が、獅子プロダクションで最後に手掛けたピンク映画。日活が買い取り、ロマンポルノとして公開している。この次に撮った日活ロマンポルノの『タイム・アバンチュール 絶頂5秒前』で、滝田監督はピンク映画の世界から卒業する。脚本を担当したのは、『痴漢電車』シリーズを始めとする数多くのピンク映画で滝田監督と組んで来た盟友の高木功。
 素良を清里めぐみ、蘭子を森田水絵、コーチを川上雅代(織本かおる)、繁子を野川雪美、奈美子を小林あい、素良の父を蛍雪次郎、理事長を池島ゆたか、龍神を野上祐二が演じている。

 この映画で最も注目すべきは、ヒロインを務めた清里めぐみである。1985年7月封切の『絶倫海女しまり貝』で日活ロマンポルノに初出演した彼女は、1987年まで活躍したが、2年に満たない活動期間で引退している。
 「主演女優なんだから、注目するのは当然でしょ」と思うかもしれないが、そういう意味ではない。彼女が引退したのは、滝田洋二郎と結婚して「千多枝夫人」になったからだ。彼女が滝田監督作品に出演したのは、これが最初で最後。つまり2人が結婚するきっかけとなったのが、この映画なのだ。

 滝田洋二郎&高木功のコンビなので、コメディー映画である。冒頭シーンでは、プールに潜った男子生徒2人が素良の演技を観察し、興奮しながら会話を交わす様子が描かれる。水中なので明確に声が聞こえることは無いが、字幕によって表現している。
 状況は全く異なるが、『痴漢電車 車内で一発』ではモールス信号を字幕で説明する演出が使われていた。ちなみに、ゴーグルで顔の一部が隠れているから少し分かりにくいが、その男子生徒はタカオと手島である。

 シンクロ用のプールを使っていないので、水深が浅くて演技には不向きである。しかし、そもそも出演する女優陣が本格的にシンクロの出来るメンツではないので、そんなに支障は無い。それに、ホントに演技をしているシーンは、どう考えてもスタント・ダブルだろうし。
 そこを掘り下げるとボロが出まくるから、「シンクロを練習するシーン」に割いている時間は、そんなに多くないしね。ちなみに1986年と言えば、日本では小谷実可子が活躍していた頃だから、そこに目を付けて作られた映画ってことかな。

 「シンクロ連盟からの通達で、今年から水着の食い込み度と土手の高さも採点の対象になる」という、真剣にシンクロをやっている人から激怒されそうな設定が用意され、コーチは部員たちの水着をチェックする。大きな分度器を股間に押し付けて食い込み度を計測し、陰部を触って土手の高さも確認する。
 ただ、ここはハッキリ言って「繁子の陰毛が多すぎて水着からハミ出している」というネタをやるためだけに用意されたシーンだ。実際、「水着の食い込み度と土手の高さが採点の対象」ってのは、後のシーンで全く使われないし。

 素良は電車で痴漢に遭うが、本気で嫌がったり怖がったりする様子は無く、むしろ恍惚の表情で喘いでいる。いかにもピンク映画らしい描写だが、『痴漢電車』シリーズではないので、そのまま絶頂に至ることは無い。彼女が気持ち良くなっているせいで「龍神が助ける必要なんて無かったんじゃないか」とツッコミを入れたくなるが、そこはスルーしておこう。
 で、その後には「助けてくれた男が新任のコーチだった」という、ベタベタな展開が用意されている。もちろん誰もが容易に推測できるだろうが、その2人がセックスに至る展開も待ち受けている。ただ、これが普通の映画なら恋愛関係になりそうなものだが、それは無い。ピンク映画なので、「セックスする関係」さえ成立すれば、それで充分なのだ。

 龍神の指導が開始された直後、「奈美子とタカオが部室の裏にあるベンチでセックスする」というシーンがある。この時、茂みを挟んだ道路に現れた男子生徒が帰ろうとするが、呼び出しを受けたので自転車を放置して校舎へ戻るという描写がある。
 で、その後も奈美子とタカオの情事が続くので、わざわざ男子生徒の行動を描くからには、「そこに誰かが現れるとか、自転車が絡んだトラブルが起きるとか、何かあるんだろう」と思っていたら、何も起きずに終わってしまう。

 龍神は蘭子の下半身が硬いことを知ると、「今まで、何人の男と寝たんだ?」と唐突に尋ねる。何の関係も無い質問に思えるが、蘭子が3人だと答えると、「オリンピックは諦めるんだな」と告げる。「どうしてですか?」と問われると、「たった3人しか知らないようでは、あの流れるような躍動感は出せないんだ」と彼は説明する。
 メチャクチャな論理だし、シンクロを真剣にやっている人からすると不愉快だろうけど、なんせピンク映画なのでね。

 龍神は蘭子に、「1982年、第4回世界選手権で優勝したアメリカのトレーシー・ルイスは、試合の直前までコーチとセックスをした。あの時のルイスの演技は、ため息が出るほど見事だった」と語る。もちろん、それは真っ赤な嘘だし、そもそもトレーシー・ルイスという選手が実在しない。
 でも、蘭子は「全日本の代表選手になるためなら、どんなに辛い試練にも耐えてみせます」と力強く告げ、龍神はデタラメな論理に従って彼女とセックスする。そこに「女とセックスしたいから」という邪念は無く、あくまでも「コーチとして教え子を勝たせるための行動としてのセックスだ。スポ根とエロを合わせると、そういうことになるのよ。

 龍神と蘭子の濡れ場の後、水着姿の素良が銭湯でBGMに合わせて軽快に踊る様子が描かれる。BGMとして流れるのは、カラオケ版の『なんてったってアイドル』。女湯にいた女性客4人も体を動かし始め、タオルで股間をゴシゴシする動きを音楽に乗せたりする。
 そして途中から全員が立ち上がり、両手に洗面器を持って素良と同じ振り付けで踊る。外で覗き見ていた素良の父と男性客たちも、音楽に乗せて踊る。唐突な展開だけど、一応は「素良のシンクロ練習」という体裁だ。

 言うまでもないだろうが、それはシンクロの練習としては、全く意味が無い。だけど、ミュージカル・シーンを入れたかったんだろうし、楽しいのでOK。滝田洋二郎&高木功のコンビは作品ごとに色んな実験を盛り込んでいて、それが今回はミュージカルだったということだ。
 ただし楽曲がカラオケ版なのは、ちょっと残念。そうそう、ちなみに銭湯の壁には、なぜかパーマンやドラえもんの絵が描かれている。もちろん、著作権なんて完全無視よ。

 滝田洋二郎&高木功のコンビは、当時の流行を積極的に取り込むことも多かった。そもそもシンクロを題材にしているのも、そういう意識が感じられる。小ネタとしては、学内選考会の当日、シャワールームにいた繁子の所へ男子生徒が現れ、「ちょっとすいません、このシェーバーで剃ってみましょうね」と言うシーン。
 男子は「今朝、何時ごろ剃りました?と質問し、沿った毛を見せて「ほら、まだこんなに剃れますよ」と告げるが、これはブラウンが放送していた「モーニング・レポート」というCMのパロディーだ。ひょっとすると、前述した「自転車の男子生徒」の意味不明なシーンも、何かのパロディーだったのかもしれない。

 いざ学内選考会のシーンになると、まず最初の奈美子は浮き輪と足ヒレを付けたままで飛び込み台に立ち、血液型やスリーサイズを自己紹介のように話す。プールに飛び込むが、音楽が流れずに笑いが起きて、そこで終了。続く繁子は番傘を持ち、古式泳法として参加しようとするが、笑われると座り込んでしまい、そこで終了。続く蘭子は『白鳥の湖』に乗せて、ようやくシンクロの演技を披露する。
 そして最後の素良は、『なんてったってアイドル』で演技する。ここでは、ちゃんと小泉今日子の歌が入ったバージョンだ。普通に考えれば、『なんてったってアイドル』で演技している時点で負けだと思うが、もちろん彼女が勝利して終わる。「そもそもシンクロってソロよりもデュエットやチームでしょ」という基本的な問題は、とりあえず忘れて観賞するべし。

(観賞日:2017年1月31日)

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