見出し画像

サンタ疑心メーター

「サンタいないよな。」
「うん、俺の母ちゃんも言ってた。」
「悪い子のところは来ないよ。」
「お前ら、いつも先生に怒られるやん。」
「はあ?子供やわー。」
 
今日も舌戦を繰り広げる。
 
サンタいる派 vs サンタいない派
 
小学生の中学年にもなると別れるのだ。
 
僕はサンタいる派だった。
なんせ良い子してるから。
 
サンタ疑心メーターは0%だった。


小学4年生のクリスマス

午前夜2時ぐらいに目を覚ました。珍しい。
 
枕元にはもみの木のような緑の包装に
赤色のリボンが結ばれていた。
 
今年のプレゼントは
ゲームボーイアドバンスと
ソニックザヘッジホッグのゲームだ。
 
ソニックは音速で走ることが出来るハリネズミ。
 
フィールドを回転しながら縦横無尽に走り回り
空気を切り裂くような音を鳴らしながらゴールを目指す。
 
A:夜ふかしはしない
B:今からゲーム
 
Bのボタンを押した。
 
バレないようにゴソゴソとプレゼントを開ける。
 
カセットを入れて、ゲームのスイッチを入れた。
 
ピロ〜ン、チン!と、音がなる。
 
親に起きていることがバレるじゃないか。
音を消してプレーすることにした。
 
ソニックがフィールド上を無音で駆け回る。
無音のソニックは実に退屈だった。
 
A:音をダスマイカ
B:音をダスカ
 
Bのボタンを押した。
 
ただし、布団の中に潜り込んで。
 
回転してジャンプして走ってジャンプして
キュイーンと音を出す。ポップなサウンド。
 
やっぱり、ソニックは音がいいね。
 
突然、後頭部に眩しい
聖なる光が差し込んでいた。
 
悪魔のような顔をした母親が
僕を見下ろしていた。
 
電気をつけて
布団を引っ剥がしたのだ。
 
「キュイーン、キュイーン
うるさいんやけど。
あんた、また目悪くなんで。」
 
「ごめんなさい。」
 
ゲーム機は取り上げられた。
 
あまりに唐突にゲーム機を奪われた僕。
 
寝ぼけた母には夢もかけらも何にもなかった。
 
サンタさんの「サ」の字も言わない。
 
プレゼントが届いたことは何も触れず
強引にゲーム機を奪っていったのだ。

何の特別感もない、ただの一夜。
 
サンタさんへの幻想と
ただ怒られた現実が混ざり合う。
 
ゲーム機と一緒に僕の幻想も奪われた気分だった。

仮面ライダーが存在しないように
サンタも存在していないのだろうか。

いや、プレゼントは届いているしな。
 
僕のサンタ疑心メーターは
キュイーンと急上昇したが
50%ぐらいで、止まった。
 
次の日の朝、居間に降りると、父親がいた。
 
「サンタさん、来たか?」
「うん、夜ゲームしたのバレてお母さんに取られたけど。」
「はは、来年はやめろよ。」
 
父は告げた。
 
小学5年生のクリスマス
 
また、ゲームのカセットがプレゼントだった。
 
僕はクリスマスの深夜にゲームする快感覚えた。
サンタさんは望まないBボタンを連打する。
結果、ガッツリ寝不足顔で居間に降りる。
 
「サンタ来たか?」
「うん。」
「来年もいい子にしてな。」
「うん。」
 
サンタ疑心メーターの針が
消えかけているように見えた。

故障したのか。

まあ、サンタが届けようが届けまいが
ゲームがあれば、何でもいいのだ。
 
小学6年生のクリスマスイブ
 


「こっちに来なさい。」
「分かっていると思うけど、サンタはお父さんや。」
「中学生になるからな。サンタ役、終わらしてくれ。」
 
B連打音がフィンランドまで届いたようだ。

疑いようのない現実を聞いた後
メーターの針は消え失せてしまった。
代わりに、GAME OVERと表示が。




↓ご紹介。


とらねこさんの文豪へのいざないに参加致しました。
お題は、「サンタを疑った子ども心」でした。

確かにあの日、サンタを疑い、
そして疑うことすらなくなりました。

それでも僕はクリスマスは好き。

多分、クリスマスに流れる音楽が好みなんだと。

例えば、ケンタッキーのCMが流れるたびに
その神聖さとハッピーが織り混ざった曲調に
釘付けになっていました。

クリスマスソングのプレイリストを
自作するぐらいのこだわりようでした。

友達にバレた時は鼻のみならず
耳の裏まで真っ赤だったでしょう。

↓今回のお題と前回の投稿はこちら!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?