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ライブハウスで叫べないから外に出た

時間と労力を払い、ライブハウスに入る。
 
僕の耳に、悲哀に満ちたロックが流れ込む。

息苦しい。
 
ただ、ライブハウスを出ると、少し安心した。

自由に叫べない、ライブハウスは辛かったのだ。
 
ライブハウスでキャリア研修が行われる。
 
本日の一曲を聴いてください。
 
○年後における、あなたのキャリア目標は?
 
この曲を聴いて、目標と計画を策定するのだ。
 
なんて、綺麗で簡潔な曲調だろうか。
目標を立てるまでの道筋も体系化されていた。
 
誰かが合いの手を挟んでいる。
 
課長!課長!5年後!GO!GO!
 
僕の脳裏に言葉がよぎる。
 
この会社と関係のない目標を叫べば
演奏者はどんな顔をするのだろうか?

それすら出てこない自分に苦笑した。
 
この会社で幸せになることを前提とした曲。
 
今、ないっす!合いの手、無理っす!
 
僕には、本音を叫ぶ勇気はなかった。
 
研修内容は勿論、実施する企業ですら
会社で内製化されているのだ。

本音は時に嵐を呼ぶ。
 
お馴染みのアーティストによる
本日の一曲は終了し、M Cタイムだ。
 
** 今回のライブへの合いの手は
全て録音されています。
 
合いの手が上手く出来なかった方々は
別室に来てください。
 
一緒にお話しましょう。**
 
呼ばれた人間にはバツのスタンプを押される。
 
従業員と会社の間には利益関係があるのだ。
 
時間と労力を払って、給料を頂戴する。
 
会社は従業員のことを大切にしている風でも
結局は会社の為が根っこにはあると思うのだ。
 
だから、定期的に人材の正常確認を行う。
 
資本主義である以上、通常運転だと思う。
 
結局は、ライブハウスがいかに儲かるか。
 
実施先と研修内容は全て外部に?
 
外部アーティストに変わっても
結局はライブハウスが招待するので
本音を叫べない状況は続くだろう。
 
どうやっても一部の人間の感情は
救われることはないと思った。
 
全体最適で大部分の人にはノーダメだ。
 
この箱に一生通い続けて
時間と労力を代替に
給料を貰えさえすれば良い人は割と多い。
 
この人にはキャリアプランは
簡単なのかも知れない。
 
望む生活の為に、目標の空席を狙えばいい。
 
叫べばいい。私に席をくださいと。
 
全く間違っていないし、理想的な従業員だ。
 
僕はおかしいのか。

席を眺めて、何も思わなかった。終了。

話が噛み合うわけがないのだ。
 
こんな僕でも箱に入れて貰った恩義はある。
 
故に何枚かのスライドに
心が揺さぶられるのだ。Swing, Swing。

席に座ってから話せ。理論は
席取りゲームの永久参加を意味する。
 
ライブハウスで上の空の僕に救いがあった。
 
外にいる友人達だ。2年振りに会った。
 
取り留めない悩み話や愚痴やら
最近の生活の変化などなど。

僕も少しだけ本音をぽろり。
 
色んな箱と生き方があるねえ。
 
ただ、みんな、ちょっとだけ不幸。
 
けれど、みんな、生きているのだ。
 
なんか、いいねえ。

俺はな、自分のライブハウスを盛り上げて、
こんなことがしたいんだよ。1人が言う。

熱いの苦手やねん。と思いながら
久しぶりの熱風を吸い込んだ。

普通に咳き込む。

何も出てこなかったが、今はそれで良いや。

昔、本でこんな風なことを言っていた。
 
会社の外に居場所を作ろう。

少しだけ意味が分かった。
 
完璧な合いの手を繰り返すことも美しい。
 
ただ、合わない場合は、外に出てみる。
 
ライブハウスへの印象が変調するかも知れない。

ライブハウスに通う理由が変調するかも知れない。

変調補償は御座いません。

最終的なご判断はお客様にてお願い致します。

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