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「青春は密そのもの」

油断しているときに心にグッとくるCM。
考えさせられるCMがあります。


その一つが,NTTDocomoのCM「卒業生100万人の答辞」です。


Youtubeの動画の合間に流れてくる鬱陶しいCM。

…のはずが,5分弱もの長尺CMにも関わらず,気付けばスキップせずに最後まで見ていました。

このCMは高校の卒業式の答辞を最初から最後までを,写真や動画を切り貼りしてつなげた,ただそれだけのCMです。

でも,一つ一つの言葉,映像に力があるCMでした。

以下は答辞の全文です。

―――

答辞

いつもの道を,いつも通りに登校する。
そのありがたみを,私たちは苦しいほど,よく知っています。

花の香りに,鳥の声に,春を感じるようになりました。
令和4年の桜もいよいよ咲こうとしています。


3年前,私はずっと憧れだった制服に身を包み,不安とともに正門をくぐりました。

初めて見た知らない名前たち。教室で,放課後で,部活で,何度も呼んだ今,一生忘れられない名前になりました。


そんな順調だった学校生活は,プツンといきなり中断しました。
先の見えない,仲間とも会えない,恐怖と戦う日々が始まったのです。

アルバムはマスク顔の写真ばかり。
消えた試合。
消えた文化祭。
消えた修学旅行。
青春とは密そのものだったのです。


かつての日常がどれだけ幸せで貴重なことだったのか,私たちは知ることができました。何度怒りを,涙を,堪えたことでしょう。


でも,いつだって私たちを救ってくれるのは,マスクで遮られても消えることのなかった,最高の仲間たちのその笑顔でした。


大人の皆さんが思うような青春じゃなかった。

でも,私たちは失ってばかりじゃありません。代わりに得た大切なものだってたくさんありました。

私たちは,誓います。
この時代をたくましく乗り越え,遠く,はるか遠く羽ばたいていくことを。

NTTDocomo「卒業生100万人の答辞」

―――

私は昨年の甲子園の決勝戦の日に,このCMのことを思い出しました。

仙台育英高校の野球部監督の須江航さんが,甲子園の優勝インタビューで昨年度すてきな話をしてくださったときです。


…入学どころか、たぶんおそらく中学校の卒業式もちゃんとできなくて。

高校生活っていうのは、僕たち大人が過ごしてきた高校生活とは全く違うんです。

青春って、すごく密なので。
でもそういうことは全部ダメだ、ダメだと言われて。

活動してても、どこかでストップがかかって、どこかでいつも止まってしまうような苦しい中で。

でも本当にあきらめないでやってくれたこと、でもそれをさせてくれたのは僕たちだけじゃなくて、全国の高校生のみんなが本当にやってくれて。…

令和4年度夏の甲子園優勝インタビュー 須江航監督


「青春って,すごく密」

この言葉が昨年度の流行語選考委員特別賞に選ばれました。

中高生の学校生活とコロナウイルス禍の状況,悔しさ,やるせなさ,エネルギーのようなものを表した力のある言葉です。


「青春は密そのもの」

それならば,私としては,「卒業生100万人の答辞」のCM制作スタッフにも流行語選考委員特別賞を受け取ってほしい。

このCMに出演されている高校生の方々はきっとエキストラさんなのだと思います。

でも,答辞を受けてうつむく姿。涙を流す姿。

それらは,私にはどうしても演技には見えませんでした。


自分から何度も検索し,視聴し,答辞の全文を書き起こしました。
CM。本当に侮れない。


今年度も仙台育英高校野球部が甲子園の決勝に進みました。
須江監督のニュースも数多く放送されています。

ふと,思い出した,心に残るCMの話でした。


今はYoutubeで検索しても,視聴できないようです。

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