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外コン出身者が教える「SWOT分析」の本当の使い方

SWOT分析とは、自社の内部環境と外部環境をそれぞれ正負の観点から分析するフレームワークです。

■内部環境×正:「S」すなわち、Strength(強み)
■内部環境×負:「W」すなわち、Weakness(弱み)
■外部環境×正:「O」すなわち、Opportunity(機会)
■外部環境×負:「T」すなわち、Threat(脅威)

本フレームワークは、誤った方法で活用されがちです。

それは、自社を取り巻く内部/外部環境を「S」「W」「O」「T」の4つの象限に分けて整理する方法です。

誤ったSWOT分析の方法

ありがちなこの「足し算」的な活用方法では、自社の内部/外部環境が単純に可視化されるだけ。これでは、対応策などの示唆・インサイトは一切生まれません。新卒研修中のコンサルタントもこのような誤用をするケースが多いですが、残念ながら、コンサルティングの現場では全く利用価値のない整理方法です。

一方で、あまり知られていないSWOT分析の正しい活用方法は、「S」「W」「O」「T」を、同じ4つの象限でも、マトリックスによる「掛け算」で整理する方法です。

正しいSWOT分析の方法

このような掛け算のマトリックスによって整理することで初めて、それぞれの象限が示すシナリオごとに具体的な打ち手がイメージできるようになり、示唆・インサイトに富んだ分析が達成されるのです。

S×O(強み×機会)

本象限は、自社の強みと外部環境の風向きがマッチしている領域。自社にとってはCash Cow(金のなる木)であるため、当然、投資・注力すべき事業領域です。ただし、市場が成熟し、多くの競合が参入することにより、いつかは成長機会に天井が見えてきます。そのような際には、他象限にも目を向ける、といった判断が必要になるでしょう。

S×T(強み×脅威)

本象限は、自社の強みが脅威に晒されている/晒され得る領域。他業種からの参入やベンチャー企業の頭角など、いわゆる「ディスラプター」の参入が予想される領域です。自社の強みに拘泥していては、いずれディスラプターに侵食されてしまいます。クリステンセン教授が「イノベーションのジレンマ」と主張するように、自社の強み領域とカニバライゼーションを起こすリスクを孕んでいたとしても、セルフ・ディスラプションによる事業転換の検討が必要となるでしょう。

W×O(弱み×機会)

本象限は、市場として機会がありながらも自社が弱みとしている領域。多くの企業は、本領域への進出を断念するでしょう。しかし、市場として成長が見込まれるようであれば、M&Aを始めとする非連続的な対応策を実行してでも参入すべきと判断されるケースもあります。参入障壁は高いですが、一考する価値がある領域です。

W×T(弱み×脅威)

本象限は、自社が弱みとする領域に様々な外部要因を起因とする脅威が襲ってくる領域です。当然、どの企業も競合分析やPEST分析などを通じて、外部環境の変化を常にウォッチしており、その対策を念頭に置きながら事業活動を続けていることかと思います。

いずれの企業も、S×O(強み×機会)領域とW×T(弱み×脅威)領域における打ち手については、投資・注力しているはずですが、実は見落としがちなS×T(強み×脅威)領域とW×O(弱み×機会)にこそ、自社の連続的/非連続的な成長のチャンスがあるのです。

誤った「足し算」的なSWOT分析では決して見えてこない示唆・インサイトが、正しい「掛け算」的なSWOT分析であれば獲得できることが分かっていただけたなら幸いです。

なお、本分析方法は、下記の書籍でも紹介されています。本事例のように、フレームワークの誤った常識を180°覆す、目から鱗な情報が満載です。ぜひ手に取って読んでみてください。


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