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ターニングポイント〔本科第2回課題〕

2019もあと3ヶ月を切ってしまいましたね。
今年の抱負をやり始める、再開するなら今だな!と思いながら、私は1月に始めたシナリオチャレンジに燃えています。

通信講座の基礎科が終わった後、2ヶ月ぐらいお休みしてしまったので、その遅れを取り戻そうと、第1回課題を提出してから1週間で2回目の課題を終えました。
(構想はもちろん頭にあったけど、ちゃんと返却されてから書いてます!)

当初の予定では年末までに本科の前期を終えるはずだったので、なるべく筆のノリがいい間に取り戻したいですね。

第2回の課題は第1回に引き続き小道具のテーマ。今回は「マッチ」です。


脚本の構成手法の中にハリウッドで昔からよく使われているという3 Acts of Structure(3幕構成)というのがあります。
私が1番最初に習った構成はこれで、「この構成が使いこなせるようになりたい」と思いながら、これまで脚本を書いています。
3幕構成の要素のひとつにターニングポイントがありますが、その名の通り、分岐点となり物語を大きく動かす箇所です。
毎回この3幕構成やターニングポイントを作れるように心がけながら物語を書いてはいたのですが、今回初めて、ターニングポイントを自分の力で作れた気がしています。
まだまだコントロールできていない感は否めないですが、量をこなして慣れるのも大事だと思うので、少しずつスキルとして身につけていきたいです。



添削前のシナリオは現在全文掲載をしていますが、掲載している全ての作品において著作権は放棄していません
引用される場合は引用元を明記(こちらのページ、もしくはツイッターなど)してください。
「映像化したい」と思われた方(ありがとうございます)はご連絡ください。


Cマイナーの恋の歌

人物
多田光佑(19)大学生
高山ミズキ(18)喫茶ひまわりの孫
高山スミレ(17)(75)喫茶ひまわりの店主
多田時光(3)(53)光佑の父
多田加代(49)光佑の母


○葬儀場・ホール
祭壇の上に八十代老人の笑顔の遺影が飾ってある。
多田光佑(19)が椅子に座って遺影を眺めている。
光佑「じいちゃん、幸せそうやなあ」

○多田家・書斎
本棚に所狭しと並んだ本たち。本や雑誌が床にも積まれている。壁際には金庫や作業用デスクなど。
本棚にはたきをかけている多田加代(49)。
マスクをつけ、突っ立っている光佑。
光佑「…これ全部処分すんの?」
加代「欲しいやつあったらもらっとき」
光佑「絶対ねえや」
光佑が作業デスクの引き出しを開ける。
中から、ジップロックの袋が出てくる。袋の中には「喫茶ひまわり・坂上町1-5」と書かれた店のマッチ、丁寧に折りたたまれた古い写真が入っている。
光佑「なんだこれ」

○喫茶ひまわり前・路地
光佑がギターを背負い、マッチとスマホを交互に見ながら歩いている。
「喫茶ひまわり」と書かれた古い立て看板を見つける。店先にベンチがある。

○喫茶ひまわり・店内
誰もいない薄暗い店内。光佑、恐る恐る入ってくる。
光佑「こんにちはあ…?」
光佑、席についてギターを横に置く。マッチをテーブルの上に置き、カバンの中からジップロックを出す。中から写真を取り出し、開く。
セピア色の古い写真。写真は所々破れているが、高山スミレ(17)が写っている。
裏返すと、マジックペンで「スミレさん。1961夏」と書かれている。
店の奥から、写真のスミレにそっくりな高山ミズキ(18)が出てくる。
ミズキ「あ、いらっしゃいませ」
ミズキを見る光佑。写真と見比べる。
光佑「スミレ…?さん?」
ミズキ「あ、おばあちゃんね。(奥に)おばあちゃーん、お客さん」
スミレの声「はいはい。何でしょう」
ミズキ、写真を見つけ、手に取り
ミズキ「えっ!何これ?」
ミズキは写真を裏返す。
店の奥から高山スミレ(75)が出てくる。
スミレ「いらっしゃい」
ミズキ「これ、おばあちゃん?」
眼鏡をずらしてミズキの持つ写真をよく見るスミレ。
スミレ「あらあ、こんなの、どこで見つけてきたの?」
ミズキ「お客さんが持ってた」
ミズキとスミレが光佑を見る。
光佑、慌てて
光佑「多田時生って…知ってますか?じいちゃんなんすけど」
目を丸くするスミレ。
スミレ「時生さんとこの!あらあ、懐かしいねえ。お元気?」
光佑「あ、1週間前に亡くなりまして」
視線を落とすスミレ。
スミレ「…そう」
ミズキが慌て、ギターを指さしながら、
ミズキ「それギター?なんか弾ける?」
光佑「あ、うん。歌作ってて、途中なんだけど」
ミズキ「聴きたい」
光佑、ギターを取り出し、弾き始める。
歌い始めようとすると、スミレが声を上げてふふふ、と笑う。
驚いて演奏を止める光佑。
スミレ「時生さんが歌っとった歌にそっくり」
光佑「じいちゃんの…歌」

○路地
並んで歩いている光佑とミズキ。
ミズキ「ねえ、遺品整理しとるって言っとったよね?」
光佑「うん」
ミズキ「歌も出てこんかなあ」
光佑「え?」
ミズキ「おばあちゃん嬉しそうやったからさ。歌も、もう一回聞かしてあげたいなあって」
立ち止まるミズキ。
ミズキ「じゃ、コンビニこっちやし」
光佑「おう」
歩いていくミズキの背中を見送る光佑。

○多田家・書斎
座り込んでアルバムを見ている光佑。
楽器を持っている男女数人の集合写真を抜き出す。日付は1969年5月18日。

○喫茶ひまわり・店内
席に座っている光佑とスミレ。光佑が集合写真を見せている。
スミレ「これは時生さんと真智ちゃんが結婚した位かしら。これが孝さんで、これが…」
光佑は名前を順番にメモしていく。

○多田家・書斎
メモと古いアドレス帳を並べ、電話をしている光佑。
光佑「はい、孝さんは…そうですか」
メモのリストの名前から「孝さん」を消すように線を引く。

○多田家・リビング
テーブルの上に、メモと集合写真が置いてある。メモに羅列された名前は全て線で消されている。
テーブルに伏している光佑。
多田時光(53)が新聞を持って入ってくる。
時光「どうした」
テーブルにつく時光。
光佑「うーん…」
時光が写真を手に取る。
時光「懐かしい写真だな」
光佑「父さん、じいちゃんがバンドやってた頃知ってんの?」
時光は写真の端にいる幼児を指す。
時光「これ、父さんだよ」
光佑、写真をつかみ
光佑「えっ!じゃあさ…じいちゃんが作ってた歌、知らない?Cマイナーから始まるみたいなんだけど」
時光「うーん、Cマイナーの歌は知らないけど、じいちゃんの作った楽譜、まだあるはずだよ」
光佑「どこに?」
時光「金庫の中」

○多田家・書斎
金庫の前に座り鍵穴に鍵を差し込む光佑。時光は後ろに立ってのぞきこむ。
光佑、鍵を開ける。金庫が開く。

○喫茶ひまわり・前
店先のベンチに座っている光佑とミズキ。
光佑がミズキに所々虫の食った楽譜を渡す。題名も前半が虫に食われ、後半の「の恋の歌」しか読めない。
光佑「もう最悪だよ」
ミズキ「うわあ、派手にやられてるね」
光佑「ここまで来て、これかよ」
ミズキが楽譜を見つめ、口を開く。
ミズキ「ねえ、作っちゃうの、どう?」
光佑「え?」
ミズキ「初めてウチ来た時歌ってた歌も、似てるっておばあちゃん言ってたし、合体させて新しい曲でも良くない?」
光佑、ミズキの持つ楽譜を見る。
光佑「やってみる価値は…ありそう」
ミズキ「でしょ!」

○光佑の部屋
テーブルに虫食いの楽譜、新しい楽譜のシート、写真2枚、マッチ箱が置いてある。ギターを抱えた光佑。楽譜を見ながらギターでCマイナーの和音を弾く。
光佑「うーん…」
ペンを持ち、新しい楽譜シートに音符を書こうとした瞬間、はずみでマッチ箱がカランと音を立てて床へ落ちる。
光佑、マッチ箱を拾い、何度か振ってみる。カラカラと音がする。
マッチ箱を開ける光佑。中から青色の古いギターピックが出てくる。
ピックを取り出し、見つめる光佑。
ピックでCマイナーの和音を弾く。
満足そうにペンを手に取り、楽譜シートに音符を書いていく。

○喫茶ひまわり・店内
接客をしているミズキ。
突然入ってくる光佑。
光佑「できたよ!」
ミズキ「本当?!おばあちゃん呼んでくる!」
ミズキは店の奥へ消える。
光佑、テーブルにつき、ギターを取り出す。
店の奥からミズキとスミレが出てくる。
スミレが光佑の前に座る。緊張した面持ち。
ギターを抱え、青色の古いピックを持ち、深呼吸する光佑。
演奏を始める。
光佑の歌に、時折スミレも思い出したように口ずさむ。
演奏が終わる。
スミレ、瞳に涙を溜めながら
スミレ「暗くて変な歌だって、ずーっと思ってたけど、なかなかいい歌ねえ」
ミズキ「ねえ!曲名は?」
光佑、照れくさそうに
光佑「…Cマイナーの恋の歌」


おしまい

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