高まる「GX」の波
column vol.1137
2030年にIT人財が最大79万不足する。
DXが進む中、日本では大きな課題を抱えていますが、実は2030年にちなんでもう1つ頭を悩ましている人財不足問題があります。
それが「GX」です。
GXとは「グリーン・トランスフォーメーション」。
温室効果ガスを発生させる化石燃料から太陽光発電などのクリーンエネルギー中心へと転換し、経済社会システム全体を変革しようとする取り組みを指します。
2030年のSDGsに関連しているというわけです。
実は、このGX分野で人財の求人が急増している。
今日はそんな話をしたいと思います。
6年で「5.87倍」増のGX求人
「リクルートエージェント」によると、求人はこの6年で5.87倍に増えているそうです。
〈ビジネス+IT / 2023年10月10日〉
例えば、このようなキーワードがその対象になります。
特に2020年度からの伸びが顕著であり、今後も増加すると見込まれます。
…しかし一方、GX求人への転職者は「3.09倍」に留まっており…、需要に対して人財の供給が追い付いていないのです…
成長分野ですから、ビジネスパーソンとしてはチャンスではある。
ではでは、どんな職種が求められているのでしょうか?
特に拡大した2020年前後から需要が高まったのが、「重工業・電機・コンサル」系です。
ESG経営の中でも特に「環境戦略」を立てる企業が増加したことが背景にあります。
エネルギー業界を筆頭に、CO2排出量の多い電力、石油・ガス、鉄鋼、化学やグローバル展開をしている電機メーカーなど、リーディングカンパニーの求人が増えました。
また、その流れに寄り添うように、上記企業にアドバイスをするコンサルティングファームや監査法人からの求人も増加。
そして、金融系にも派生していきました。
ここ最近で言えば、「サーキュラーエコノミー」関連の求人も見逃せません。
特にケミカルリサイクル関連の企画系・技術系求人が顕在化し始めており、この動きはまだ継続すると予想されています。
「未経験」という課題
〜とまぁ、挙げればキリがないのですが、新しいチャンスとはいえ課題もあります。
それは「未経験」であることが多いこと。
それは人財も企業も、ということです。
企業としてはこれまでにない取り組みであるため、異分野から人財を迎えることが多い。
また、転職市場に「経験者」がほとんど存在しないポジションでは、「興味関心の強さ」+「何らかの専門性やスキル」があれば採用に至るケースも多々あるそうです。
求職者にとっては思いがけない業界や企業に活躍のチャンスが広がっている一方、企業にとっては「活躍可能性がある人材」「素養がある人材」を見極めていくことが重要となる。
GXはヨーロッパを中心に世界中で加速していますので、日本も人採用に苦戦するわけにはいきません。
いかにGXに関わる人財を増やしていけるかが喫緊の課題となっているのです。
そして、晴れてGX人財になった後は企業の垣根を超えてリテラシーを上げていく必要があるでしょう。
その中で1つご紹介したい事例が「サスコミュ」です。
〈alterna / 2023年9月24日〉
こちらは「サステナブル・コミュニティ」のこと。
つまり、企業の垣根を超えて集まっているサステナ業界の人的ネットワークになります。
現在500人に迫る勢いで急拡大しているのです。
孤軍奮闘しがちのGX人財の救いの場
発起人は、支援会社や事業会社のサステナ担当としてサステナビリティ業界の経験が長い山路祐一さん。
サステナ関係者のコミュニティをネットで探したもののこれというものが見つからず、「それなら自分で立ち上げてみよう」とローンチしたそうです。
コミュニティの活動は、Slackでの情報交換をベースに、オンライン上での勉強会やリアルでの交流会など。
各企業・団体のサステナ担当だけでなく、支援会社、投資家等金融機関、弁護士、コンサルタント、スタートアップ経営者、研究者や学生まで多彩なメンバーで構成されています。
基本ルールとしてコミュニティ内の営業活動はNGとし、所属組織ではなくいち個人として参加することで、多角的な視点での本音の議論、様々な属性が結びつくネットワーキングがしやすい環境が構築されているとのこと。
そして今年5月に一般社団法人化し、「何か始めるなら、まずサスコミュに相談する」と思ってもらえるプラットフォームの実現を目指しているのです。
こうしたコミュニティがあることで、リテラシーを高めることだけではなく、新しい挑戦への不安も和らいでいく。
サスコミュに輪が広がっていくことを期待したいですね。
そしてGXといえば、9月に経済産業省が主催した「東京GXウィーク」が開催されました。
〈NHK NEWS WEB / 2023年9月25日〉
こちらは、脱炭素社会の実現やエネルギーの安定調達に向けて、アジアや中東などの各国が協力の在り方を話し合う国際会議。
各国の事情で直ちに脱炭素を進められない場合に脱炭素に移行するための技術に金融支援をしていくことの重要性や、脱炭素への道筋で異なる立場の関係者同士の対話の重要性を確認する議長声明が採択されました。
日本としては、今年11月から始まる国連の気候変動対策の会議「COP28」などの議論にも成果を反映させたいとしています。
このようにGXへの取り組みは官民ともに加熱していくでしょう。
ますます目が離せなくなる分野になりそうですね😊
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