「消費者」に対する大切な着眼点
column vol.577
モノではなくコト、「体験」が重要な時代と言われて久しいですが、これは小売業のみならず、全ての企業に当てはまると思います。
例えば、「よなよなエール」で有名な酒造メーカー「ヤッホーブルーイング」がコミュニティマーケティングを実践して、コトを通じて、商品価値の体験を提供しますね。
そんな中、体験時代における重要な着眼点として、『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』の著者、ダグ・スティーブンスさんが
生き残る企業の条件は「S・U・P・E・R」な体験
と指摘しています。
確かにスーパーな体験は必要ですが…、それは一体どんな体験なのか…?
どうやら5つの言葉に、その答えがあるようです。
「S・U・P・E・R」な体験とは?
5つの言葉とは
①Surprising…驚き
②Unique…独自性
③Personalized…個別対応
④Engaging…親密度
⑤Repeatable…再現性
〈幻冬舎ゴールドオンライン / 2022年2月23日〉
詳しい説明と事例は、幻冬舎の記事にお任せするとして、例えば②の「独自性」は、それが大事だということは誰もが知ることですが、ついつい「前例」や「他社での成功事例」を求めてしまってはないでしょうか…?
私もマーケティングコンサルをするにあたって、「他社で上手く行った事例を教えてください」「その企画は、前例がないのでできない」と言われることは多々あります…。
……チャレンジがないと、どこでもやっているものになってしまいますし…、これだけ移り変わりの早い時代において、真似する頃には古くなっている場合も少なくはありません…(汗)
失敗を恐れず、新しい挑戦ができているかということは、独自性を保っているかということへの一つの確認点と言えますね。
また、③の「個別対応」は、ショッピングの体験中に「自分のためだけに用意されている」という個別対応(パーソナライゼーション)を強く実感すると、予定外の商品をついつい買ってしまうお客さまは2.1 倍に増加するそうです。
しかも、買い物の支払額が予定よりも多くなるお客さまは1.4培になり、顧客の継続利用意向を測るネットプロモータースコア(NPS)という指標も1.2倍になるとのこと。
今まで以上に消費者にウケる「体験企業」になるためには、5つの項目を丁寧に掘り下げていくことが重要ですね。
「S・U・P・E・R」の一歩手前に
ただ、こういった着眼点はともすれば、施策といった戦術的な話になりやすいのも正直なところです。
「S・U・P・E・R」な顧客体験を施策として点で考えるのではなく、串刺しで一貫性のあるものにしていくためにも、自社や商品の本質を改めて見つめ直す必要があるかと思います。
自社が、その商品がなぜ存在しているのか?その価値は何なのか?ということの見える化し、社内で共有することです。
その良い事例だと感じたのが「サッポロ生ビール黒ラベル」の事例です。
〈食品新聞 / 2022年2月23日〉
「若者のビール離れ」が叫ばれる中、販売額は2010年比でみれば昨年11月までの累計で86%。
家庭用ビール市場の退潮が鮮明となっていますが、当ブランドは123%と躍進。
もともとは瓶容器の「サッポロ びん生」として登場した商品で、すでに今年45年のロングセラー。
何度か、低迷、混迷してきたサッポロ生ですが、この10年支持を集め、若者の心を掴んでいるのは、「生のおいしさ」という原点に立ち返ったことでした。
「家庭で生の味わいを楽しんで欲しい」という開発当初の思いを見つめ直したことが成功に導いたのです。
最近では、ミッションやパーパスという言葉に代表されるように、存在意義を明確にするから、「S・U・P・E・R」な顧客体験も、施策的な点の話にはならず、自社の価値や個性と紐づいたものとして、消費者の琴線に触れていくのだと思います。
やはり、本質に立ち返ることが大事ですね。
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
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