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“やさしさ” 生まれのビジネス発想

column vol.1164

新しいビジネスの種は、社会にある様々な課題の中に眠っていますが、そんなに大仰に考えなくても、個人の胸のうちにある “やさしさ” から見つけることができるでしょう。

そこで今日は、そんな思いやりの心から生まれた秀逸なアイデアをご紹介させていただきます。

本日も最後まで、ぜひお付き合いくださいませ。


「思いやり」が多層に重なるパン屋

まずは、お客さんにも、働き手にも、そして地球にもやさしいパン屋についてお話ししたいと思います。

町のパン屋で閉店までに売れなかった商品を引き取り、消費期限の中で販売する「夜のパン屋さん」に注目が集まっているからです。

〈産経新聞 / 2024年3月6日〉

様々なお店の商品が日替わりで集まるため、品揃えを楽しみに訪れるリピーターも多いとのこと。

売り切れになる日もあるなど人気を博しています。

販売場所は、東京メトロ神楽坂駅(東京都新宿区)からすぐの本屋の前

平日の夜に2〜3時間ほど営業しています。

いわゆるフードロスを削減しようというわけですが、こちらのお店では安売りせず「(提供元のお店の)定価」で売ることが特徴。

それは、ちゃんと利益を確保することで「多くの雇用を生み出したい」という想いがあるからです。

それに、提供元のお店にとっても、正規の値段で売ってくれることで、そのお店の商品価値が下がらないので嬉しいことでしょう。

そして、雇用についてです。

現在17人のスタッフがパン屋からの仕入れから販売までを行っているのですが、勤務時間はバラバラ

仕入れから閉店までの5時間ほどを働くスタッフもいれば、仕入れのみの1時間だけ勤務するスタッフもいるとのこと。

そして、さらに素晴らしい話があります。

スタッフの中には路上生活をしていた方々もいたのですが、収入が安定し、2年ほどで全員が家に住めるようになったそうです。

これも安売りせずに、利益を確保したからこそですね😊

ちなみに、この夜のパン屋さんは、テレビでも活躍する料理家、枝元なほみさんの考案で2020年10月16日の世界食糧デーに販売を開始

枝元さんは売り上げの約半分が販売する路上生活者に還元される雑誌「ビッグイシュー」役員も務めていて、働き口の多様化が必要と考えていたそうです。

「思いやり」が多層に重なる好事例で、非常に勉強になります。

「自分の悩み」で人の悩みを解決

続いては、自分に向けた思いやりの心が、いつしか社会への思いやりへとつながったという事例をご紹介したいと思います。

N高校3年の津波夢乃さん「きもちのナビ帳」に今、多方から熱い視線が注がれています。

〈高校生新聞オンライン / 2024年2月20日〉

こちらは、発達障害のある方に多い「自分の気持ちをうまく説明できない」という悩みの解決を手助けしてくれるノート。

実は夢乃さんご自身も中学時代、学校に行けず苦悩した経験を持っていらっしゃいます。

「母から学校に行かない理由を聞かれても答えられなかった。自分でもなぜなのか、理由が分からなかったんです」

そうした状況の中、頭の中で起きていることを紙に書き、分解しながら自分と向き合い続ける中で、ようやく自分が「人が怖い」と感じていることに気づけたとのこと。

その時の体験をもとに、他にも同じことで悩んでいる人の解決の糸口にと、「きもちのナビ帳」を開発したのです。

こちらのノートは、以下のステップで進んでいきます。

(1)まず「学校に行きたくない」など、自分の中にある「一番大きい気持ち」を書き込む
(2)そう思った理由、誰にどうして欲しいかなど、9つの質問に答え、言語化

「怒り」「悲しい」など気持ちの大きさ0~10の数字で表すページもあり、自身の気持ちを整理できる構成なのです。

昨年5月に商品化に向けてクラウドファンディングに挑戦したところ、目標金額30万円に対し80万円以上の支援が集まったとのこと。

そして、返礼品として400冊を送り、その後ネットショップで販売し、100冊を売り切っています。

次の目標としては、より多くの人に利用してもらうためにナビ帳をアプリ化すること。

夢乃さんが思い描くステップアップに今後も期待していきたいと思います😊

「生まれ変わり」体験で肯定感を上げる

自分の想いを明確化するという意味では、もう1つご紹介したい事例があります。

今、“映える” デコ棺桶の入館体験が話題になっているのです。

〈リクナビNEXTジャーナル / 2024年2月27日〉

リクナビNEXTジャーナル

このユニークな体験を手がけているのが、棺桶の中に入っていらっしゃる棺桶デザイナー布施美佳子さん

「映えるデコ棺桶」「入館体験」という2つのインパクトがあるので、それぞれ始めた理由をお話しさせていただきますね。

まずデコ棺桶を始めたきっかけです。

こちらは、布施さんが20代の頃、学生時代の同級生や仲の良いご友人が、相次いで病気や事故で若くして亡くなったことがきっかけとなりました。

葬儀に足を運ぶと…

「友人たちは皆おしゃれで個性的だったのに、昔ながらの画一的な葬儀で“故人らしさ”が全く感じられませんでした。私が死ぬときには、自分が着たいと思える死装束、入りたいと思える骨壺を選び、自分らしい葬儀を行いたいと、ずっと思っていたんです」

そんな体験があったそうです。

その後、たまたま勤めていた玩具メーカーの関連会社に出向になった際、新規事業立案を任されたのを機に、デコ棺桶への道に進んでいきます。

そして、入館体験についてです。

きっかけは、クリエイターやファッション関係者が集まる展示会「ニューエナジー展」に出展したこと。

10代の若い女の子たちが棺桶を見て、「キャーかわいい!」「入りたーい!」と集まってきたそうです。

えっ、入りたいなら…入る…?

と、そこから始まった入棺体験。

これまでに450人以上が行ったそうですが、皆さん、一度人生のフィナーレを疑似体験したことで、「やりたかったけれど忘れていたこと」「生きる意味」などが頭の中で整理されるとのこと。

つまり、究極の瞑想状態を味わえるわけです。

そこで、単に棺桶の中に入るだけではなく、事前にワークシートに向かって

自分の最期はどんな最期か
●あなたの葬儀に来てほしい人は誰か
読んで欲しい弔辞はどんな内容か
●亡くなった後、周りの人から「どんな人だった」と言われたいか

を記入。

そして布施さんがご本人の書いた弔辞を読み、ふたを閉める。

その後3分間棺の中で自分自身と向き合う時間を過ごすという一連のプログラムになったのです。

企業での研修にも採用されているようで、他のメンバーの弔辞を聞くことでメンバー理解が深まり、チームワークが高まるという効果もあるとのこと。

確かに普通、弔辞はその人が「いかに素晴らしいか」を思い浮かべて言葉にまとめます。

普段、ついつい蔑ろにしていた、その人への想いを再確認するきっかけとしてのグループ入棺体験というのは良案ですね。

〜というわけで、本日は【 “やさしさ” 生まれのビジネス発想」と題して3つの事例をお届けいたしました。

思いやりがアイデア&共感の源泉になるならば、やはり、人間力のある人ほど無双状態になれるかもしれない。

そんな仮説が頭に浮かぶ今日この頃です☺️

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