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「団欒」を意図する

column vol.862

本日は京都・宇治を訪れました。

現在、京都にまつわるプロジェクトに参加しているため、「お茶」の勉強も兼ねて視察しに行きました。

先日、とある宇治茶製造を営む企業の社長さんに、「茶礼(されい)」文化を復元して世に広めたいという熱き想いをお聞きしました。

「茶礼」とは、茶の湯の原型と言われている禅宗における飲茶の礼法のこと。

ここに家族団欒の源泉が見えてきます。

「お茶」は団欒を生むツール

禅寺では1日に数回茶礼が行われており、朝の座禅の後食事の後作務の休憩時就寝の前などに皆で湯や茶を飲みます

一つのやかんの茶を皆で分け合って飲むので、心を一つにするという和合の意味合いを持っているのです。

京都・建仁寺の開祖である栄西さんが1191年に禅とともに茶の実を持ち帰り、この茶の礼法を日本に伝えていると言われいるのですが、現代も日本人の文化・慣習として残っています。

それが「三時のおやつ」です。

お茶を分け合い、皆で団欒を楽しみ、心身を休ませる。

私は茶礼を知るまで、単におやつを食べる時間だと思っていました…

社長さんは、三食の食事も含めてお茶を媒介に家族や仲間と豊かな時間を過ごして欲しいと願っておりました。

美味しいお茶をつくり続けるモチベーションは、その団欒を文化をこれからの世に残していきたいという想いがあるからとのこと。

ペットボトルのお茶は体を潤してくれますが、やかんから紡ぎ出される団欒のお茶は心を潤します

そのため、急須で淹れるお茶にこだわっていらっしゃるそうです。

フランス人が「アペロ」を大切にするワケ

社長さんの熱き想いをお聞きした時、フランスのアペロを思い出しました。

フランス人シェフがフランスの生活美学を定義する上で、「convivialité(コンヴィヴィアリティ)」という言葉があるそうです。

〈東洋経済オンライン / 2022年11月20日〉

これは「いい仲間との楽しい時間を過ごす美学」という意味。

実際、フランス人はディナー前のちょっとした飲み時間、「アペリティフ」の時間を大切にします。

「アペロ」とも呼ばれており、私はアペロで記憶していたので、こちらを使わせていただきます。

これはまさに仕事とプライベートの切り替えの時間。

カフェで飲むこともあれば、自宅で友人と飲むこともあります。

食事も兼ねることもありますが、基本的には切り替えのための時間で、その後食事をする。

かつてはランチでも切り替えのためにお酒を飲んでいたそうですよ。

同時に団欒を楽しむものでもありますので、日本の茶礼に通ずるところがありますね。

パリ・サンラザール駅の壁に長年、ルイ・パスツールさんの言葉「Le vin est la plus saine et la plus hygiénique des boissons(ワインは最も健康的で、最も衛生的な飲み物である)」が掲げられていましたが、ワインが媒介となり輪をつくり、心を豊かにすると捉えると確かに真理に思えます。

今年の忘年会は「少人数で深く」

今年は過去2年に対して忘年会ニーズは増加傾向にあります。

先日、実は若い人ほど忘年会を望んでいるらしい〜という話をさせていただきました。

しかも、理由の2位「上司との関係を構築するため」という結果にニンマリするのは私だけではないはずです…(笑)

一方、世代を選ばず、今年の特徴になっているのは「少人数」ニーズです。

カクヤスが実施した調査によると愛飲家の7割「気心の知れた仲間内なら(忘年会に)参加したい」と回答。

〈OVO / 2022年12月9日〉

もちろん、コロナ禍ということもあるとは思いますが、これまでの自粛期間で人が集まるということに対して、表層的ではなく、より深く繋がり合うことに意味があると感じる人が増えているように思うのです。

先程の京都の社長さんは、茶礼の話をされている時、テレビやスマホと離れて家族や仲間と触れ合う時間が必要であるという言葉も添えていらっしゃいました。

たまたまこの前、青学駅伝部原晋監督のセミナーに参加する機会があったのですが、成功の秘訣「奥さんとの晩酌の時間」とお話しされていました。

時には2〜3時間に渡って、会話を通して心を通わせるそうです。

それが、心豊かに仕事に向かえる原動力になる

子どもの頃、親に食事中はテレビを消さないとよく怒られていましたが、最近、その教えがようやく理解できるようになりました。

きっと仕事も人生も、前を向いて歩いていくには家族や仲間との団欒がとても大切なのでしょうね。

ビジネスは「団欒をデザイン」することがカギ

ということで、団欒を意図してデザインすることが大事であると分かってきたのですが、その一つの媒介になりそうなのが「写真」です。

写真プリントアプリ「ALBUS」の特集記事を読んで、なるほどと思うことがあったので共有させていただきます。

〈XD / Webサイト〉

「ALBUS」とは、毎月8枚好きな写真を選ぶと、マンスリーカードとともに届けてくれるサービスです。

送料(税込242円)のみでプリント代は無料。

といっても、「先月分の写真を今月末までに注文する」という期間限定付き  なのですが。

デジタル時代になぜアナログのアルバム?という質問もあるかもしれませんが、意外とスマホで撮った写真がそのままということも多いのではないでしょうか?

アルバムにするために、写真を家族や仲間と一緒に選んだり、完成したアルバムを通して会話が生まれたり

写真を撮るだけだと一瞬だったり、振り返るのも一人だったりしますが、アルバムにすることでよりコミュニケーションを活性化する。

デジタル(オンライン)の発達で、人は物理的に繋がることは容易くなりましたが、実は心理的に繋がることが少し忘れがちになっているような気がします。

推し活がキーワードになるのも、そういった心理的な繋がりへの飢えなのかもしれませんね。

心の繋がりを媒介する商品やサービスを提供するというのは、ビジネスの観点でも、社会的な意義という観点でも、一つの着眼点になりそうです。

私も誰かと共にする食事一つ一つに、より団欒を意識したいと思います。

本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

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