Z世代の「失敗したくない消費」に寄り添う
column vol.830
これからの消費を担うZ世代については、マーケティング業界も研究が進んでおり、私もこれまでに多くのZ世代記事を投稿して参りました。
そんな中、Z世代マーケティングの決定版と言っても過言ではない記事に出会ったので、共有させていただきます。
【消費行動から読み解く、Z世代に刺さるコンテンツの作り方】
〈Web担当者Forum / 2022年11月2日〉
まさにZ世代消費者の心を掴むAtoZが書かれているので、ぜひぜひ読んでいただきたいのですが、私はこの中で指摘されている「リスクはなるべく回避する」という心理について掘り下げたいと思います。
Z世代が望むのは「ゼロリスク」
17年間で2万人を超える消費者にインタビューを実施してきたマーケティングリサーチ会社「イー・クオーレ」によると、Y世代と比較して「失敗したくないという気持ちが強い」「ランキング1位など、皆が良かれと言っているサービスに惹かれる」「決断する時は他人のアドバイスが欲しい」などの傾向が強いと指摘されています。
また、「一人で買い物をするのは好きではない」という人の割合もY世代より多いのです。
私たちの会社ではこれを「失敗したくない消費」と呼んでいるのですが、「リスクを回避したい」という若者のインサイトを的確に分析している記事がありますので、こちらも共有させていただきます。
【今の若者たちはなぜ「絶対に失敗したくない」のか】
〈東洋経済オンライン / 2022年10月28日〉
この記事の中で、金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授の金間大介さんから、興味深い意識調査の結果が紹介されています。
125ヵ国の若者に「見知らぬ人を助けたことがあるか」という質問を行ったのですが、「YES」と答えた日本人はどれほどいたか分かりますでしょうか?
答えは…何と125ヵ国中、125位…(汗)
にわかに信じられませんが…、真偽は置いておいて、金間さんは「失敗したのは本人のせいだから助けることはない」という考え方が、この結果に含まれていると分析しています。
つまり、「自己責任」という意識が強いというわけですね…
自己責任意識が高く、今やネットやSNSでさまざまな情報を自ら獲得することができます。
「失敗」を避けられる術があるというわけです。
Z世代の購入のカギを握る「不安解消」
こういった話を聞くと、昭和おじさん世代は「いや、失敗の中にも大切な経験があってね…」と語り出してしまいそうですが、今日はマーケティングの話なので、一旦そういった話は無しにさせていただきます。
また、若い方の中にも「自分たちは失敗なんて恐れていない!」と思う方もいらっしゃるでしょう…
これはあくまでも調査の結果、前の世代に比べると多い傾向にあると捉えていただけると幸いです。
では、リスク回避の強いZ世代に対して、どのようなマーケティング視点が必要なのでしょうか?
それは、ズバリ「不安解消」です。
イー・クオーレの犬飼江梨子さんは
ネットに多くの情報があり、いわば“正解”もあると知っている。そのため、積極的に正解を探しに行く、他者のアドバイスを聞く、人と一緒に買い物をするという“失敗をしないための行動”が目立つのではないか。
と分析。
例えば、広告で気になる商品を発見しても、即購入という直接的な消費行動を引き起こしにくく、その間にチェックする工程が入るのがZ世代の特徴。
そういう意味では、「映画はこの10本を観ておけば大丈夫」「アメリカ文学を語るなら、この3冊だけ読めばいい」といったような「間違いない!」というアプローチが必要ですし、そのための裏付けも大切になってきます。
また、Instagramの広告はフォロワー数を見たり、知っているアカウントがフォローしているかなど、フォロー状況を確認したり、その商品を誰が応援しているかが安心感の醸成に重要になります。
総じて、犬飼さんは「広告の信頼性の醸成は意識すべきポイント」と強調しています。
購入を「後押し」する「推し」の活用ポイント
ここでキーワードとなるのが「推し」の存在です。
イー・クオーレの調査でもZ世代の7割に「推し」がいたそうです。
まさに「推し活」時代。
分かりやすい「推し」の例として、インフルエンサーを起用したマーケティングがありますが、このテーマで非常に参考になるのが、こちらの記事です。
【「ハンバーガーといえばマック」に学ぶ最強の戦略】
〈東洋経済オンライン / 2022年11月2日〉
SNSで大きな影響力をもつ人物に、自社の商品やサービスを紹介してもらうことにより購入の「後押し」をしてもらう。
とあるアパレルECブランドでは販売管理費の95%をインフルエンサーによるPR投稿の予算にあてているぐらい高い効果が期待されています。
一方、その投稿内容と自社のブランド・アイデンティティとの一貫性を保つことの難しさがあります。
インフルエンサーもそれぞれセルフブランディングをしており、ファッション、話し方、投稿の文体には自身のスタイルがあるからです。
インフルエンサーのスタイルを優先することでブランド・アイデンティティが崩れてしまう可能性もあり、だからと言ってインフルエンサー自身の魅力を封印して情報発信を行ってもらっても、フォロワーからの支持を得ることができず、逆効果になってしまう可能性もある…(汗)
だからこそ、インフルエンサーの選定が重要になります。
選定基準を明確にして、ブランドイメージを低下させることなく、ブランド・アイデンティティにマッチした人選する。
そうすることで、細かな縛りを設けなくても、ブランド・アイデンティティに適した投稿になるのでしょう。
「検索」に逆に便乗する
最後に私がオススメしたいのは、Z世代ユーザーの「検索する」という傾向に上手く乗っかってしまうことです。
Z世代が注目しているのはインフルエンサーだけではなく一般ユーザーの声を参考にして買うことも当然あります。
ですから、一般ユーザーがSNSで口コミをしたくなる仕掛けづくりを行うのが得策です。
例えば、無印良品が「前カバーが外せる」サーキュレーターを開発した時、「前カバーが外せます」と謳っても、その理由である「外せるから掃除がしやすい」ということは、あえて言いませんでした。
なぜなら、無印良品は「掃除がしやすい」というベネフィットを「発見できる余白」をつくりたかったからです。
これがドンピシャで、「掃除がしやすい」ことを発見したユーザーが次々と自分の物語として勝手にその情報を「拡散」したのです。
この結果ユーザーの拡散で店頭から商品が無くなる現象も起きたのです。
これも「失敗したくない消費」を上手く捉えた好事例だと言えるでしょう。
というわけで、本日はこれからの消費を担うZ世代の心の掴み方をご紹介させていただきました。
やはり、心を掴むには「心を知る」という前段階がいかに重要かということが分かりますね。
数年後にはα世代も台頭してきます。
今後も、皆さんのビジネスのヒントになり得る世代情報をお届けしたいと思っております。
明日以降の投稿もぜひぜひご覧くださいませ。
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