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「人間観察」こそビジネスの源泉

column vol.1149

「ユーザーを『人』ではなく、『ターゲット』として見ていないか?」

DIGIDAYのインタビュー記事で語られた講談社長崎亘宏さんのお言葉に、マーケターとして背筋がピンと伸びる気分です。

〈DIGIDAY / 2024年2月29日〉

このメッセージは、マーケターだけではなく、全てのビジネスパーソンに当てはまるのかもしれません。


“成果” が時に人を盲目にさせる

例えば、広告におけるターゲットとは、どんな人でしょう?

そうですね、「見てもらいたい人」ですよね。

もっと言えば、実際に商品を「買ってもらいたい人」とも言えます。

ウェブ広告SNS広告の場合、前者の成果については「リーチ数(何人見たか)」や「インプレッション数(述べ何回見られているか)」が重要視されますし

後者でいえば、特に遷移先がECの場合は「クリック数」が評価されます。

ですから、マーケター・クリエイターは、一人でも多くの方に見てもらい、クリックしていただくコンテンツを制作し、適切な配信を心がけるわけです。

…一方…、長崎さんはこのように警鐘を鳴らします。

「リーチで良いのか?クリックだけ取れれば良いのか?」

広告主の宣伝責任者や我々マーケターは、厳しく数値(成果)を求められるので…、リーチやクリックを意識するわけですが…、それでも

広告がどうユーザーに受け入れられているかという観点が抜けているのではないだろうか?」

と、長崎さんは懸念を示されています。

単に「見ていただいた」「クリックしていただいた」だけではなく、その広告をちゃんとポジティブに評価していただくためのコンテンツと運用だった のか否か?

確かに毎回省みなければなりません…

例えば、SNS広告でいえば、良い発信ができると、インセンティブを用意していなくても、広告を打ったことで確実にフォロワーの増加につながっていく。

当然、広告に使った画像や動画を公式アカウントにアップしておけば、いいね保存で、その反応は推し測れるわけです。

単に提供側の企業が求めているユーザー(ターゲット)のアクション(成果)ではなく、ちゃんとユーザー(人)のエンゲージメント(喜びや信頼づくり)につながっているかという視点で見る。

その視点がないと、短期的な成果を求めた結果、長期的にはユーザー離れを起こしてしまうというわけです。

「ペルソナ」に縛られないことが肝要

これは「ペルソナ」という言葉にも当てはまると思います。

ペルソナとは、商品やサービスを使う架空の顧客の詳細なプロファイルのことです。

年齢、性別、職業、趣味、購買行動など、具体的な特徴を持つ仮想の人物をつくり出し、その人物がどのようなニーズや問題を持っているかを想定します。

つまり、代表的な一人の顧客像を設定するというわけです。

ペルソナがあることで、お客さんのイメージが掴みやすくなり、組織内でもイメージの共有が図れるので、戦略が立てやすくなる

とても有益なことですし、必要なことなのですが、やはりここにも落とし穴があります。

当たり前ですが、ペルソナはあくまでも不特定多数の顧客を最大公約数化した “一例” に過ぎず、同じ顧客は一人としていないわけです。

ですから、私は企画を考える時は、ペルソナを想定して立案し、現場(売り場)で様々なお客さんを眺めながら、検証するようにしています。

「この方でも乗ってくれるかな?」とか、ペルソナ顧客が見込み客になりそうな友達に勧める時に「どんな言葉で口コミするだろうか?」などと想像する。

そうしてペルソナという机上の空論を現場で研磨して、クライアントに提出するようにしているのです。

20年以上マーケティングに携わっていますが、日々、戦略や戦術の前に、どれだけ「人(顧客)を観察できるか」が重要であると痛感しています…

ここを怠ると結構外れてしまう……

徹底的に現場でユーザーを観察し、その現実の世界をいつでも頭に浮かべられる状態にしておく。

今はネットやSNSで口コミを拾うこともできますが、やはり現場に勝るものはないと思うです。

「人間観察力」こそビジネスの源泉

最近、面白いと思った本があります。

それが、『いい人すぎるよ図鑑』です。

PHP / いい人すぎるよ図鑑

「仕事・学校のいい人」「趣味・遊びのいい人」「食事のいい人」「生活のいい人」と日常のシーンごとにパートが分かれており、それぞれの場面で見られる「いい人」がイラスト付きで紹介・解説されている一冊。

〈ダ・ヴィンチ Web / 2024年2月29日〉

例えば、人がやりたがらないことを率先して行動に移してくれる人として

いい人No.5「質問タイムで誰も手を挙げなかった時に発言する人」

自分がされたら少し悲しいことや、嫌だなと思うことはしない人として

いい人No.18「カラオケで人が歌っている時、スマホを見ない人」

不安があることに対して、応援や後押しをしてくれる人として

いい人No.62「居酒屋で頼んだ時「い~ね~」と言ってくれる人」

などといった「いい人」が図鑑の中で紹介されています。

この本があることで、いつも「当たり前」だと思っていた友達の行為や、そんなに自分では意識していなかった「やさしい気遣い」見える化でき、より周りに感謝し、自分に誇りを持てるようになるというわけです😊

これも、作者の「人間観察力」が生み出した秀逸な一冊。

作者のお名前を拝見すると…

明円卓、佐々木日菜、真子千絵美

と、3名の方のお名前が記されております。

どうでしょう?

明円卓さん、というお名前を聞いてピンと来た方も多いのではないでしょうか?

そうです、明円さんは昨年大きな話題をつくった、店員が友達のようにタメ口で接客してくれる「友達がやってるカフェ/バー」のプロデューサーです。

以前、原宿・表参道にある「ミルギャラリー神宮前」で開催された「いい人すぎるよ展」についてご紹介しましたが

その作品をギュギュっと一冊に凝縮したのが『いい人すぎるよ図鑑』なのです。

明円さんといえば、CMプランニングコピーライティングを軸に統合コミュニケーションプランナーとして活躍している方。

まさに、今回の「マーケティングの源泉は人間観察にあり」という話に通ずるところがありますね。

もちろん、冒頭でもお話しした通り、これはビジネス全般に言えることだとも思います。

ビジネスの本質は「目の前の相手を喜ばせること」にあり。

相手のプレゼントを選ぶ時のように、目の前のお客さんをよく観察し、よく想像することが大切だということでしょう。

ターゲッティングの落とし穴にハマらないよう、私も気をつけたいと思います…😅


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