「ひとり派」の時代
column vol.1194
博報堂生活総合研究所の調査により、「ひとり」を志向する生活者が大幅に増加し、その意識と行動に大きな変化が起きていることが発見されたそうです。
〈HUFFPOST / 2023年12月25日〉
一体、どうしてなのでしょう?
今日は、その原因について探ってみたいと思います。
「ひとり」派が過半数の56.3%に
まずは同研究所の詳しい結果について共有させていただきます。
首都圏の25〜39歳を対象に「ひとり意識・行動調査」を実施。
1993年に行った同様の調査との結果を比較すると、このように変化しています。
確かに、「ひとり」派が逆転していますね。
そして、「ひとり」に対する意識も、このように変化しています。
ひとりの時間をつくる人が増え、ひとりで食事をすることも「さびしい」とは思わない人が大きく増えているのです。
ちなみに、「ひとりでしたい行動」の中に
とあるのですが、当社の若手やインターンシップ生を見ても、ランチは「ひとりでも良いし、みんなでも良い」という意識が高まっていると感じます。
それに趣味でも「ソロキャンプ」が流行ったりと、ひとり時間を大切にする人は増えているというのは、ここからも分かりますね。
「ずっと友達だよ」が続かないワケ
そんな中、ある高校生が書いた記事に注目しました。
高校生新聞の記者、高校1年生の立原渚さんの【卒業式で「ずっと友達だよ」→すぐ音信不通 「一人は嫌」だけが目的の関係だった】という記事です。
〈高校生新聞オンライン / 2023年12月14日〉
卒業式で「私たちずっと友達だよ」と熱い約束を交わしたのにもかかわらず、その後全く連絡を取らなくなる。
そんな誰しも経験していそうな話について、立原さんはこのように鋭く分析しています。
学生生活は、給食・弁当を一緒に食べたり、一緒にトイレに行ったり、何かと「一緒に何かをする」人が必要になります。
だから、よく一緒にいるから本当の意味で距離が近いかどうかは分からない。
…確かに、その必要がなくなれば、会う必要もなくなるわけです。
一方、卒業後に会う人もいる。
それを立原さんはこのように言及しております。
「適切な距離感」。
この言葉に非常にピンとくるものがあります。
「心を探り合わない」距離感
「友達」関係は素晴らしいとは思うのですが、一方で時に窮屈さを覚えることもあります。
例えば、友達は「分かり合わないといけない」空気感です。
学生の頃から、その時「親友」だと言い合っていた相手に対しても、正直「本当の気持ちは分からない…」と思っていました…(汗)
家族より、友達より一緒にいることが多い同僚ですら、10〜20年付き合って初めて気づく「心」も未だにあるわけです。
もちろん、分かろうとはしますが、「分かっていない」と謙虚に思っていた方が、相手との関係が上手くいくような気もします。
ちなみに、文春オンラインに掲載されていた養老孟司さんと精神科医の東畑開人さんの対談記事でのやり取りが面白かったので共有させていただきます。
〈文春オンライン / 2024年1月17日〉
…まぁまぁ…、極端な話なのかもしれませんが…、心を探り、定義することで「見えなくなる心」もあるとは思います。
そんなに人の心は単純ではない。
探るのは良いとして、決めつけることはしない、そんな距離感が私は気持ち良いのかもしれません。
以前、【「友達の自由化」を望む】という記事の中で、「特定の趣味や目的に限ってつながる手軽な仲間」である「搭子」をご紹介しましたが
SNSによってさまざまな人とつながれる時代になったことで、より自由な人間関係を築けるようになったことも、「ひとり派」が増えている要因なのでしょう。
なぜ「ショーへイ」が群れないのか?
最後に「ひとり」派の著名人をご紹介して締め括りたいと思います。
その人とは大谷翔平選手です。
大谷選手はチームメイトから食事に誘われてもほとんど応じないことで知られているのをご存知でしょうか?
〈現代ビジネス / 2023年12月21日〉
数多くのアスリートのメンタルカウンセラーを務めてきた児玉光雄先生は、その理由について、このように分析しております。
ちなみに、大谷選手は同じくメジャーリーグで活躍したイチローさんからこんなことを学んだそうです。
革新的な方は、その革新性を維持するために「ひとりの時間」を大切にする。
そんな哲学が見えますね。
もちろん、今日は分かりやすく「ひとり派」ということで話を進めてきましたが
人間ですから「ひとりでいたい時」も「みんなでいたい時」もあるはずです。
昔、尊敬するコピーライターの秋山晶さんが、「キユーピーハーフ」の広告で
という名コピーを生み出しましたが、まさにそんな気分です。
いずせよ「ひとり」について考えさせられた本日の事例記事でした😊
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