「紙一重」の向こう側を考える
column vol.617
昨日は、【「経営者」が第一に考えること】というタイトルでお話しさせていただきました。
加えて、今の副社長という立場になって今まで以上に気をつけていることがあります。
それは、「紙一重の向こう側」を意識することです。
人それぞれで価値観も違うし、考え方も違う。物事を決めれば、当然反対意見もありますし、全員が賛同する100点満点の決断はなかなか難しい…。
それでも、どこかでエイヤ!と決めなければなりません。それは結構、紙一重であることがほとんどです。
だからこそ、常に「紙一重の向こう側」を意識する。そのトレーニングもなるべくするようにしています。
「小学生柔道の全国大会廃止」の是非
良きトレーニングは、ニュースにあったりします。
ニュースを見ていても、なかなかの紙一重な記事を目にする機会があります。
例えば、「小学生柔道の全国大会廃止」についてです。
〈オトナンサー / 2022年4月3日〉
先月、全日本柔道連盟が、2004年から開催していた小学5、6年生対象の全国大会の廃止を発表。
理由は、子どもに「勝利至上主義」を植え付けないようにするためのようです。
報道によると、重量級と軽量級で争う大会で、指導者が子どもに減量を強いたり、組み手争いに終始する試合があったそうです。
一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事の江頭満正さんが、この廃止についての理由を解説しているのですが、納得と疑問、双方が頭に浮かびます。
性格が形成される年齢に関する研究はいくつかありますが、両端を見ると、3歳から10歳となります。この期間に『勝つことが一番大事だ』と、スポーツ指導者と両親、友人から繰り返し言われ続ければ、本人の価値観に影響を与える可能性は高く、仕事でも、進路でも、友人関係でも、さまざまな意思決定の際に、『勝つことが一番大事だ』という基準で判断することが多くなると考えられます。
なるほど、確かに社会に出ると世の中勝ち負けだけではない部分も多いので、よく分かります。
一方、
そうなれば、自己中心的で、他人の心を理解せず、悪賢い手段を多用する人間になるでしょう。スポーツを小さい頃から必死にやってきた結果、どんな場面でも勝利至上主義という人格になることは、スポーツマンシップとは正反対で、非スポーツマンシップ的な判断をする人を生む結果になります。
例えば将来、会社の人事部が『10歳以前からスポーツを真剣にやってきた人に、いい人はいない』と敬遠する時代が来ても、おかしくありません」
となってくると、どうでしょう…?
勝負ごとは「受験勉強」もそうだと思いますが、10歳以前から良い学校に入るために頑張った生徒も同じなのでしょうか…?
そもそも、勝つことを強いられた人は皆、自己中心になっているのかどうか…。そこは判断できません…。
ちなみに、廃止への反対意見もあり
「全国大会を目指してきた子どもの夢を奪っていいのか?」
という意見が多いそうです。
それに対しては、江頭さんは「大会で『勝負する』ことだけが夢を叶えることではない」と仰っているのですが、その言葉には共感します。
とはいえ、「勝利至上主義」は「全国大会廃止」しただけで撲滅できるものなのか?もう少し考えたいところです。
「気が利く」と「余計なお世話」の違いは?
続いては、日経クロストレンドの【「気が利く」と「余計なお世話」 紙一重の差はどこから生まれる】の事例を例にしたいと思います。
〈日経XTREND / 2022年4月1日〉
伊藤理佐先生の名作マンガ「おいピータン!!」にこんな事例がありました。
主人公は、生活がうまくいかずイライラするとケーキを作りたくなる。肝は卵白の泡立てだ。手作業での泡立ては大変だけれど、大変なことをこなすと、自分がきちんとした人間であるように感じることができるからだ。そんな中、イライラの原因だったパートナーが電動泡立て器を買ってきてしまい、ガックリと肩を落とし心の中でつぶやく。「この人はやさしいけれど、やさしくない……」
なるほど…、確かに「気が利く」と「余計なお世話」は紙一重です。
主人公は「効率」ではなく「達成感」を求めていたわけで、パートナーが電動泡立て器を買ったことは「余計なお世話」だったかもしれません。
ただ、なぜいつも側にいるはずのパートナーに「達成感を求めている」主人公の気持ちが伝わっていないのでしょうか…?
パートナーが「きっと、動泡立て器を買ったら喜ぶだろう」と思った理由は一度聞いてみたい…(汗)
私自身は家族であっても、そこまで的確に相手のことが分かることはできないと考えています。
むしろ、「分からない」と思っていた方が上手くいく。
もう一度、自分が書いた「タモリ学2」を読み直してみる。
タモリさんが主人公なら、「ちゃんと伝えられなかったんだから」と笑いながら言いそうな気がするのは、私だけでしょうか?(笑)
「紙一重」の向こう側に思いを馳せる
ということで、「紙一重」なことは多く、世の中、100%正しい正解はなかなか無いと感じています。
それでも、「この意見は絶対的に正しい」と聞くと、それこそ「この人、勝利至上主義の人だなぁ…」と残念に思ってしまいます…(汗)
実は、この記事を書きたくなった一番の理由は、妻の知人のこんなエピソードにあります。
知人の娘さん(小学校4年生)が「思考力テスト」を受けたらしいのですが、その答えに若干の疑問を感じたのです。
主人公の小学生が、文房具を買うために道を歩いていると、次々と困っている人が現れます。
小学生は、その都度、人を助けることを優先して行動する。
そして、店に着いたのが閉店間際で、急いで文房具を買おうと思って店に入ろうとすると、迷子の小さな子が泣いている。
あなたが、主人公ならどうしますか?
だいたい、そんな内容の問題です。
そして、知人の子が出した答えが
「すぐに戻ってくるから、泣かないでここにいて」と言って、文房具を買う
だったそうです。
この回答には「×」がつけられていて、正解は「文房具を買わずに迷子の子を助ける」だったとのこと。
私個人としては本当に「×」なのかなぁと思ってしまいました。
もしかしたら、主人公は本当に大好きだった子が明日転校してしまうので、大好きだった文具を買ったのかもしれない。
これがリアルなシチュエーションなら、文具を買う理由はいくらでもあるような気がします。
もちろん、思考テストなので、そういった趣旨とは違うことは理解していますが…。
でも、もしも自分がその子に正解を伝えとしたら、彼女がそう答えた真意を丁寧に掘り下げたいなと思いました。
紙一重の向こう側に思いを馳せる。
そんなことを考える今日この頃です。
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