ファッションは「循環」が常識に
column vol.1165
先週、ヨーロッパからファッションについての大きな転換を知らせるニュースが世界を駆け巡りました。
欧州議会とEU加盟国は、売れ残った衣料品の廃棄を禁止し、廃棄物を削減するための新たな法律を発表。
「売れ残りを処分する」常識を覆す新ルールが誕生したわけです。
〈ELEMINIST / 2023年12月7日〉
欧州では「廃棄」しないが常識に
これまでも、フランスの「衣服廃棄禁止令」を紹介してきましたが
廃棄ゼロへの波はヨーロッパ全体に広がっています。
この法案を提案した欧州議会のアレッサンドラ・モレッティ議員は
とコメント。
新しいルールは、メーカー側に「必要以上に大量につくる」ことを抑制していくでしょう。
また、不要になったり着られなくなったりした衣料品を修理・リサイクルして永く活用することを奨励することにもなるわけです。
アパレル産業といえば、これまで世界第2位の環境汚染産業と言われてきましたが、今回の決断が大きなパラダイムシフトになることが期待されています。
本法律は2年後から施行され、小規模企業には免除期間はないのですが、中規模企業には6年間の免除期間が与えられるとのこと。
そして、商品にQRコードをつけて、消費者が製造工程に関する情報を簡単に確認できるようにすることも求めています。
ちなみに、「ヨーロッパ×循環型社会」ということでいえば、もう1つ画期的な事例があります。
それが、デンマークはコペンハーゲンにあるファッションブランド「Samsøe Samsøe(サムソサムソ)」です。
リセールを奨励するアパレルブランド
こちらのブランドでは「The Resell Tag(ザリセールタグ)」という転売システムを導入。
ユーザーが手放す洋服を簡単に転売できるよう、広告を生成するという新しい試みを行っています。
〈FASHION TECH NEWS / 2023年11月9日〉
という3ステップで、自分が売りたい古着の広告がSNSで拡散されるというわけです。
「The Resell Tag」のチーフ・コマーシャル・オフィサー、シャーロット・ポサージェーさんは、「FASHION TECH NEWS」のインタビュー記事の中でこのように仰っています。
それでも消費者は購入した洋服を十分に着用しなかったり、全く着用せずに放置したりする傾向が残念ながら増えている…
だからこそ、ブランドサイドと消費者サイドが責任を共有し、循環できるシステムを可能にすることで、世界中の膨大な廃棄物や汚染から地球を救うことを目指しているのです。
「Samsøe Samsøe」は単に転売システム(The Resell Tag)を導入しただけではなく、デザインと品質面でクオリティの高いものを生産した上で、透明性と倫理性を追求。
全店舗にてテーラーによる修理サービスを提供するなど、責任感のあるサービスに積極的に取り組んでいます。
このように「廃棄をしない」ことを常識にしようとする動きは、他のアパレル企業でも見られるようになっているのです。
アパレル企業が続々と「古着」に挑戦
代表的な企業でいえばパタゴニアでしょう。
他にも、スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)や、急成長しているカナダのスポーツ用品大手ルルレモン・アスレティカなどが、続々と古着販売を開始。
そして日本では何と言ってもユニクロが古着に挑戦するようになりました。
10月11日~22日、東京・渋谷のユニクロ原宿店内に古着の期間限定ストアをオープン。
店頭で回収したユニクロの服を染め加工してリメークしたり、毛玉などを取り除き洗浄したりして販売しました。
染め加工した古着は新品と同等程度の価格で、洗浄した古着は新品の3分の1ほどの価格にて提供。
セーターやフリース、カシミヤニットなどが、売り場に400~500点並びました。
期間限定店は消費者の反応を見るための検証の手段であり、今後の展開はまだ検討中とのこと。
ただ、11月7日のサステナビリティーに関する方針説明会に登壇した親会社ファーストリテイリングの柳井康治取締役は
とコメントしつつも
と手応えを語っています。
ユニクロの古着販売がスタンダードになったら、当然、日本のアパレル業界も一気に変わっていきそうです。
もちろん、衣類を回収し再販するということには課題もあります。
ユーザーからすれば、ただ売るだけなら、メルカリでもコメ兵でも何でも良いわけです。
古着販売を行うためには、その分、顧客をファン化し、循環を共創することも必要になるでしょう。
それでも、さまざまな国、企業で見られる「捨てない」決意は新しい時代の扉を開けていくと期待しています。
10年後、きっと今とは違う景色が見られそうですね😊
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