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シティズンシップって何?

 「シティズンシップ」聞いたことあるけど、どういうもの?

シティズン(citizen)というぐらいだから、市民に関係してそうですよね。

日常的によく聞く言葉ではないですが、私はとても重要な概念だと認識しています。特に今日、グローバル化が進む世界で、鍵となる概念だと思います。これは、自身の研究テーマでもあり、私は、日本で「シティズンシップ教育」なるものを実現することを目指しています。

今回はシティズンシップの概念について軽く紹介したいと思います。

1. シティズンシップとは

"Citizenship" は日本語では、「シティズンシップ」や「市民権」「市民性」などと訳されることが多いです。しかし、その概念は曖昧で、定義もたくさんあり、文脈や著者によっても様々です。

一言で、私が定義するなら、

あるコミュニティに属する人々に与えられる権利、特性、意識、アイデンティティ、そして、それらに伴う行動

ですかね。

すごく簡略的に書いたので、これが正しいというわけではありません。シティズンシップには様々な定義があり、学問に限らず、政治的、社会的文脈によってもそれぞれの異なった角度から定義されます。

例えば、政治的文脈におけるシティズンシップは「市民権」「参政権」などの権利の側面に注目して定義されたりします。

そこで、もう少し詳しく「シティズンシップ」概念について見ていきましょう。

2. シティズンシップの起源

シティズンシップの起源は古代ギリシアやアテネの時代だと考えられています。そこでは(ポリス)、人々は「市民」と「非市民」に分けられており、シティズンシップは市民にあたる人々に特権的に与えられていました。その特権とは、例えば、市民として政治に参加したり、意見したりできる代わりに、納税の義務を負うことなどです。

つまり、なにかしらの権利を獲得できる代わりに義務を負い、それが市民という地位として確立している状態であったと言えます。

3. シティズンシップの定義

「シティズンシップ」に関する議論は、政治哲学に限らず、社会科学などの幅広い分野で行われています。だからこそ、ただでさえ曖昧な概念を持つ「シティズンシップ」はそれぞれの文脈や著者によって定義が様々あります。

例えば、「参政権」「デモに参加する」などの、ミクロなシティズンシップの視点から、「人権」や「民主主義」の価値感につながるマクロなシティズンシップの観点などと色々あります。

今回は、その中でもわかりやすい(私のイメージするシティズンシップに近い)定義を紹介したいと思います。

・ Gerard Delanty (2000)

デランティさんはイギリスの社会学者でサセックス大学で教授をしています。以下にプロフィールリンクを貼っておきます。

彼は、シティズンシップを4つの要素に分類しました。
・権利(right)
・義務(duty)
・参加(participation)
・アイデンティティ(identity)

そして、最初の二つ(権利・義務)を形式的な側面、後者二つ(参加・アイデンティティ)を実質的な側面としました。

権利としてのシティズンシップ」は、市民としてそのコミュニティで生活する権利、参政権などです。

義務としてのシティズンシップ」は、税金を納めたり、市民として責任のある行動とる義務などです。

参加はとしてのシティズンシップ」は、政治に参加したり、デモに参加するなど、具体的な行動を伴うようなものです。

アイデンティティとしてのシティズンシップ」は、そのコミュニティに属しているという帰属感や意識などです。具体的には、日本人である、大阪府民だ、とかです。

このように、彼は、シティズンシップという概念を四つの要素に分類しました。

・ Osler & Starkey (2009)

オードリー・オスラーさんは人権教育やシティズンシップ教育に関わる様々な活動を行なっています。

ヒュー・スターキーさんはUCLで教育学の教授をされてます。

二人は、より実質的な側面のシティズンシップに注目し、シティズンシップを三つの要素に分類しました。
・地位(status)
・感覚(feeling)
・実践(practice)

地位としてのシティズンシップ」
これは、デランティのいう「権利」と「義務」に近いような概念ですね。例えば、国家から権利が与えられる代わりに義務を負う。それと同時に、市民(日本であれば日本国民)としての地位が与えられる。というような感覚です。

感覚としてのシティズンシップ」
これは、デランティのいう「アイデンティティ」とも重なる部分も多いですが、あるコミュニティへ帰属しているという感覚などです。オスラー・スターキーは、

帰属の感覚は参加的シティズンシップの前提条件である。

オスラー、スターキー(2009)『シティズンシップと教育』勁草書房

と記述しています。

この帰属感とコミュニティへの肯定感があると、何かしらの活動に「参加」するという側面がでてきそうですね。

実践としてのシティズンシップ」
これは、上記の「参加」などもここに含まれると思います。実際に権利を活用したり、積極的にコミュニティに関わっていくなどの実際の行動に繋がってくるようなものですね。

以上のようにオスラとスターキーはシティズンシップを三つの構成要素に分類しました。


4. 結論

まとめると

  1. シティズンシップの定義は曖昧多様

  2. デランティは「権利」「義務」「参加」「アイデンティティ」の四つに

  3. オスラー・スターキーは「地位」「感覚」「実践」の三つに分類

となります。

「シティズンシップ」には様々構成要素があり、それらが複雑に絡みあって成り立っています。ある文脈ではある側面が表出し、違う文脈ではまた違った要素が強調されるなど、非常に捉えにくく、一言で表すことは難しいです。

また、シティズンシップは「人権」や「民主主義」の概念とも深く関わりがあり、また別の記事で紹介できたらと思います。

今回は「シティズンシップ」の概念だけでも、少し長くなってしまったので、その他の重要な概念である「コスモポリタン・シティズンシップ
シティズンシップ教育」については追々紹介していけたらと思います。

参考文献

・Delanty, G. (2000). Citizenship in a Global Age: Society, Culture, Politics. Open University Press.
・Osler, A & Starkey, H. (2005). EBOOK: Changing Citizenship. McGraw-Hill
Education.
・オスラー・スターキー(2009)清田夏代・関芽訳『シティズンシップと教育ー変容する世界と市民性』勁草書房.

以下にAmazonのリンクを貼っておきます。


最後に、ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。
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