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トランプ大統領そっくり芸人が見たアメリカの今

TBSテレビ「ニュース23」セカイは今 2018年1月11日放送より 

トランプ大統領は、来週17日に、最も不誠実で腐敗したメディアに、「フェイクニュース賞」を送るとツイッターで発表しました。CNNやニューヨークタイムズなどが受賞の有力候補ともいわれる中、CBSテレビの有名な深夜番組「ザ・レイト・ショー」の名前もあがっています。

コメディアンの司会者による痛烈なトランプ氏批判が売りの一つで、全米の視聴者数はトップとなっています。実はトランプ氏の登場以降、エンターテインメント界にも、ある変化が訪れていました。

(VTR)

トランプ大統領のものまね芸人、ジョン・ディ・ドメニコさん。そっくりさんコンテストで、世界一になったこともある実力者です。特注のカツラは、なんとおよそ45万円。しっかり頭にのりづけして、固定します。

「彼の髪は薄くなってるから、それを隠すために、こうやって、前や後ろからかき集めている。日本人でこんな髪形の人いる?くしで、こんなふうに、かき集めている人いる?」(ディ・ドメニコさん)

小さな皺からアクセサリーまで、徹底的にこだわります。メイクを始めて1時間、完成したようです。

「歴史上、最も偉大な大統領だ。リンカーンを除いてね」(ディ・ドメニコさん)

ニューヨークの街中を歩くと、すぐに声をかけられます。

「偉大なアメリカを取り戻す!」(ディ・ドメニコさん)

「もう一度ね」(男性)

「彼はいいやつだ」(ディ・ドメニコさん)

トランプ氏のものまねを始めて13年。大統領選挙に出てからは、生活が激変し、仕事は一時、4倍に増えたといいます。道行く人々はおおむね好意的ですが、中にはこんな人も・・・

「私、きょう結婚したんだから出て行って!この街から出て行って!」(女性)

「ここは私の街だ」(ディ・ドメニコさん)

ちょうどその場に居合わせた新郎新婦。トランプ氏のことがあまり好きではないようで、記念撮影にもこの表情。

「本物じゃなくても、私はみんなにトランプ氏に対する感情を表すきっかけを与えている。好き嫌い関係なく」(ディ・ドメニコさん)

かつてなく大統領が皮肉や批判の題材となっているエンターテインメントの世界。これまでと異なるのは、トランプ氏自身が気に入らない演劇やコメディーについて容赦なく批判することです。今月17日に発表するとしているフェイクニュース賞。コメディアンにとっては、これも格好のネタに。

「大統領が私と番組のことを批判してきた」(CBSテレビ 「ザ・レイト・ショー」)

「ザ・レイト・ショー」のスティーブン・コルベア氏は、“我こそが賞にふさわしい”と、フェイクニュース賞に立候補を表明しました。街中に宣伝まで出しました。

「無視すれば、そこまで注目されないのに、大統領自身が批判することで、かえって私たちの存在が目立っている。勲章みたいなもの」(ディ・ドメニコさん)

そうした動きの中で、観客側にも変化が見られると、ディ・ドメニコさんは指摘します。トランプ氏を支持する人とそうでない人との間で、ネタへの反応の差がどんどん大きくなっているというのです。トランプ氏を批判的に扱うと、激しく反発する人も少なくないといいます。

「観客は、よりトランプ氏に対して敏感になった。トランプ氏を好きだろうが嫌いだろうが、怒らせずに楽しんでもらえる台本を書かざるを得なくなった」(ディ・ドメニコさん)


取材した 外信部 川西全(JNNニューヨーク支局)

ディ・ドメニコさん自身、興奮した通行人に首を絞められたことがあると話していました。ものまね芸人だと分かっているにもかかわらずです。
ディ・ドメニコさんは「好きであれ嫌いであれトランプ氏に対してみんなぶつけたい強い思いがあるという表れだ」と分析。
それはつまり、トランプ氏がもたらしたとされる社会の分断がエンターテインメントの世界にも広がっているといえるのかもしれません。

こうした現状に危機感を持つ人は多くて、トランプ氏に批判的なあるアーティストは「現実の方がパロディになってしまっていてジョークを語るのが難しくなってしまっている」と嘆いていました。