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「宇宙人からのお返し」SFショートショート

2034年、地球はある星と通信していた。

その星の名前は、ポポス星。

どうやら今の地球よりも科学が進んでいるらしく、通信によると様々なものがポポス星では開発され、空中移動する自動車や、街全体に物資を供給するパイプが張り巡らされているらしい。

しかし、ポポス星の人、つまりポポス星人は、地球に現れることはなかった。

おそらく、自分たちの身の安全を確保しつつ、また地球の人々が恐怖してしまう事も恐れて、リスク管理の上での決断らしい。

そんなポポス星と通信をして約半年ほど経ったとき、ポポス星人から提案の通信が来た。

「私たちポポス星は、地球を信頼できると判断した。そのため、これからお互いの星のモノを送り合い、友好を深めたい。どんなモノでも構わない。何かもらえるのなら、それに近いモノを私たち星から地球に送りたい」

とのことだった。

それを聞いて世界は大慌てだった。
まずすぐにロケットを準備したものの、中に何を入れるべきか迷っていた。

「是非とも我が社の製品を!」と言う者をも多くいた。

同じようなモノを送ってくれるとのポポス星人の言葉もあり、みんなこれからの地球のためになるような、バイオテクノロジーに関する装置や、食料を供給するマシンをロケットに詰め込んだ。


もしポポス星に着陸失敗して、攻撃と取られては恐ろしいため、運転手も早急に選ばれた。

選ばれたのは、まるでロボットのような男だった。

上司に何か言われれば、なんでもしてしまいそうな男だった。

男には妻や子供がいたが、男は上司からの命令で、ロケットに乗る事をすぐに決めた。


ついに地球の叡智を詰め込んだロケットが発射された。

地球からどんどんと離れ、地球が青い星なんだと実感できる場所でも、男はポポス星への行き方だけを考え操縦した。

約2ヶ月の長い道のりを経て、ついにロケットはポポス星に無事着陸した。

それから3ヶ月後、地球にポポス星からロケットが飛んできた。
ロケットといっても、まるでUFOと言える形の、円盤上のものだった。

人々が期待を寄せる中、男が戻ってきた。

手には、何やら空気中に浮かぶような球体のようなモノをもっている。

男は恥ずかしそうにしていた。
なぜなら、この一個しかお返しがなかったからだろう。


男はその球体のようなモノを、その国の首相に渡した。

すぐに様々な科学者がこれについて研究するが、何も得られなかった。


どうやっても切れない、どうやっても部分的に採取できないことから、地球の人々はおてあげだった。

ある科学者は仕舞いには、素手で球体のようなモノを触ったが、何も起こらなかった。


人々は失望した後、この球体のようなモノを男に返してしまった。

男がそれを持って家に帰る。

妻と子供はそれに触れる。


その瞬間、2人は泣いた。

男の心の中の優しさが詰まっていたのだ。
どれだけ愛しているのか、どれだけ手放すのが怖いか、どれだけ一緒にいる時間が尊いのか。


妻と子供は、それが宝物になった。


ポポス星人
「あらゆる機械や製品と思われる物はガラクタでしかなかったが、あの男の愛情は、あれは傑作だ。見せるべき人にしか見せない愛情。他の人の干渉できない感情。あれは私たちの星には存在しない、とても貴重なモノだ。地球、素晴らしい星だ。これからも関わっていきたい」

地球の首脳達
「あれだけコストをかけても、あんなくだらないものをよこしやがって。ポポス星はどれだけ卑怯なのだ。あんな丸っこいモノを持たせやがって。」

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