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早期退職を防ぐ 新入社員の五月病・六月病対応

 ゴールデンウィーク明けた頃から口にされる五月病。新人社員の生産性・モチベーションの低下が垣間見られ、気を揉んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか?しかし、リスクヘッジをしたくても、正体を知らなければ対応のしようがありません。五月病、そして近年目にするようになった六月病について、そのメカニズムと対応策についてご説明します。

五月病・六月病の正体 ━精神医学的・心理学的説明━


 五月病・六月病はメディアが生んだ言葉で、病名にはありません。一般的には、就職、転職、異動などの環境変化への適応が困難でストレスを受けている状態を指します。診断名がつくとしたら「適応障害」に相当するかと思われます。
 また、五月病・六月病は日本独自のものであり、日本の暦や文化と密接な関係があります。4月に年度が始まり、一斉に新入社員への教育が行われることに由来します。アメリカには五月病や六月病はなく、一月病(January blues)や九月病(September blues)があります。一月病はクリスマスに友人や家族と過ごしたひとときが過ぎた後の落ち込みを指し、九月病は7〜8月にとるバカンスを終えた後の落ち込みを指します。五月病・六月病は、一斉に集中して新人教育に励む真面目さが生んだ文化的な症状とも捉えられるでしょう。

 五月病のメカニズム

 四季があることも影響していると思われます。気温や気圧の変化、衣替えなどもストレス要因になります。仕事上の問題だけでなく目に見えないストレスが背景にあると思われます。そのなかで、新しい人間関係、新しい環境のなか新社会人として洗礼を受けます。順風満帆とはいかないなか、失敗体験が積み重なったままゴールデンウイークを迎えると、職場・仕事へのネガティブなイメージは濃くなり、休暇とのギャップも相まって、悲観的・否定的に捉えやすくなることで生じていると考えられます。

 六月病のメカニズム

 六月病のメカニズムとしては二つの仮説が挙げられます。ひとつは、五月病がずれ込んだという見方です。新人研修の長期化に伴って単に症状の発現時期が六月になったという考えです。もう一つは、五月病が慢性化・悪化したという見方です。環境変化への適応困難な状態が慢性化しストレス症状が悪化して鬱病に近い状態へと変化したという考えです。六月病と呼ばれるような状態である場合、後者の可能性も考えて、早期の対応が必要と言えます。

数値で見る五月病・六月病のリスク

 実際に新卒の新入社員の精神状態が最も不安になる時期は、5月(42.8%)と6月(38.8%)と高く、半数以上の企業で入社後3ヶ月以内に離職した新卒新入社員がいるとのことでした。精神状態が不安定に見える新入社員の様子としては、「周囲とコミュニケーションをとらなくなる」「会社に来なくなる」「物事に集中できなくなる」の順で多くなっています。

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コロナ禍×オンラインで気を付けたいポイント

 コロナ禍でリモートワークが増えた昨今、先述した様子が見え辛くなっています。新入社員としても、入社初日からリモートワークという会社もあり、コミュニケーションがとりづらく馴染みにくく感じさせやすいことも五月病・六月病を助長する可能性もあります。
 また、自宅で稼働する場合、生活リズムが乱れやすくなります。運動不足や睡眠リズムの乱れによる睡眠の質の低下、オンとオフの不明瞭さが自律神経のバランスの乱れに影響し、集中力の低下や気分のムラを生むと考えられます。
 緊急事態宣言の延長も関係しえます。外食や人との交流がストレス発散方法である場合、ストレスをケアする手札が少なくなるからです。手札の幅を広げて柔軟に用いることが鍵となりますが、飲酒や喫煙をストレス発散方法にしてしまう人もいます。飲酒や喫煙は瞬発的に安心感・高揚感を得やすい一方、常態化すると摂取できないこと自体がストレスになり、悪循環に陥ります。就寝前の飲酒による睡眠の質の低下、喫煙による体調不良や欠乏時の苛立ちが、かえって集中の持続を妨げる事態となりますが、これもオンライン越しに見え辛いところです。

五月病・六月病新入社員社員のマネジメント

 五月病・六月病と漠然と言われるもののなかには、一過性の軽いものではなく深刻なものやそのままにしておくと深刻な状態になりうるものも含まれています。相談窓口の用意や横との繋がり等のリソースの認識自体がストレスを緩和させると言われています。属人的でない精神的なサポート体制を整える必要がありそうです。
 また、背景にはもともとの素因もあると思われますが、五月病・六月病と呼ばれるものは、実は社風や、同僚・上司との対人関係の問題であることもあります。目に見え辛い問題を利害関係のない専門家に対応を依頼することが好ましいと言えます。社内保険スタッフとの面談、EAPの活用などを検討されるとよいでしょう。
 リスクマネジメントのためにも、6月までに対策を打つことをお勧めします。


【出典】

曽和利光 「「それ、五月病じゃない?」と軽口たたく上司は20代から嫌われる 」OCEANS.2021年5月11日更新
https://news.yahoo.co.jp/articles/fc5304fe93acfd39bf90f30b5556ce1aa97680bb?page=2
株式会社インターメスティック「5月病に変化あり。増える「6月病」に要注意!入社後3ヶ月以内の離職者がいた企業が半数以上、精神状態が不安定になる時期は「6月」が約40%」PRTIMES.2019年5月9日更新
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000241.000002864.html
小神野真弘 「五月病は日本だけ アメリカ、ドイツ、ブラジルは1月、韓国は3月に似た症状」AERA.dot.2017年5月15日 更新
https://dot.asahi.com/dot/2017051200074.html?page=1
「適応障害」 人形町メンタルクリニック
http://www.cocoro-support.com/Adjustment_Disorder.html#faq31


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