振り返る(少年期、似顔絵)|HSS型HSPから見える世界 #9

小学校の図画工作の時間。
今日の課題は似顔絵だ。

二人一組になって向き合い、お互いの似顔絵を描く。
与えられた用具は、2Bの鉛筆と画用紙、消しゴムだけ。
1時間に収める課題としては丁度良いだろう。

僕の相手は、隣の席の上田君。
「じゃあ、描くか」
「うん」

鉛筆を持って上田君の顔を眺める。
前から思っていたけど、恐らく異国の、
北アジアのDNAを何パーセントか受け継いでいるであろう その顔は実に端整である。
ちょっと真剣に描いてみようか。

そのとき、最近見たニュースが脳裏を過ぎる。
最新のロボットが匠の職人技を、そっくりトレースするというものだ。
(ロボットにできるなら、自分にもできないかな?)

僕の目が上田君の輪郭線を正確に把握する。
把握した輪郭線をそのまま、鉛筆を持つ手を動かして再現していく。
目線は前方の上田君に送られ、手元はほぼ見ていない。

何かのゾーンに入り込んだかのように、集中しているのを感じる。
目も鼻も、全ての造形が手に取るように脳に入り込んでくる。

7割ほど描き終えた頃、上田君の緊張感が伝わってくる。
(何で今頃になって?  もうすぐ書き終わるよ。)

図画の先生の見廻りが、僕達の机の横でピタリと止まる。
(あれ? ロボ成りきりトレース画法、やっぱり変?)


《5分後》
「はい、終了!  皆んな描けたかなぁ?」

先生が!スッと僕の似顔絵を持ち上げる。

「よーく観察するんだ、そうすると相手の顔の形、凹凸、柔らかさまで見える筈だぞぉ」

先生がクラスに僕が描いた似顔絵を見せる。

「おお〜!」

手本にしたのだろうか。
クラスメイトから どよめきが起こっている。
上田君も途中から異様な空気に呑み込まれていたようだ。

僕の似顔絵は、他の生徒の物と比べると明らかに大人っぽく、例えるなら、美術部の高校生が描いたような、ひと目見てこれは上田君だと分かるものだった。

(なんだか恥ずかしい・・・)
明らかに一人だけ浮いていた。
僕にはこれが、あまり喜ばしいことに思えなかった。

ーーーーー

新しいアイデアが浮かぶと実際に試したくなる。
それが自身の能力を活かす方向に働くと、秀でた成果に繋がることがある。

この特性が、環境に囚われない自己成長の源泉となっていたようだ。
興味を持ったことであれば、教科に関しても解き進んでいける。

時々、学校の授業がつまらなくなって先生を困らせたこともあった。
決してふざけていた訳でもなく、悪気があった訳でもない。
ただ、退屈になってしまったのだ。
ごめんなさい、先生。


この頃から、奇異の目で見られることに抵抗を感じ始める。
どうすれば良いかは、もう分かっていた。




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