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80歳。いよいよこれから私の人生 多良久美子著

この本は、著者の多良さんと同じ境涯にある重度の知的障がいの息子さんを持つ方から勧められた。

70代を超え、息子さん一筋で生きてきた人生に区切りをつけるために、自分が亡くなったあとも息子さんを応援してくれる人のネットワークをつくろうと奔走している。常にエネルギーに溢れていて楽しい人。人生に悔いを残したくない人でもある。

多良さんを歳のとり方の一つのモデルにしてるらしい。

早速、読んだ。

多良さんは、様々な人生の困難を乗り超え、悔いなき人生を生きてる。その感慨が次の言葉に表れてた。

今、人生の満足度は100%に近いです。「こんな幸せなときが、私にも来るんだ」という気持ちです。

80代、90代の方の聞き書きを何人かにした時のこと、タイトルを決めようと相談したり、あとがきを頼んだりすると結構頻発するワードが「今がいちばん幸せ」だった。多良さんと一緒だ。その皆さんも、戦争や戦後の困窮した時代、自分や周りの人の病気や死などさまざまな困難をくぐり抜けている。

他人の人生をジャッジすることは、誰にもできない。様々な困難を乗り越えてきたからこそ、自分自身に向けて誇りを持ってこの言葉を贈れる。「今がいちばん幸せ」

ある程度の年齢を過ぎ、この言葉を自分に聞かせてあげられる人生はほんとに素敵だと思う。


本書には、多良さんが来し方を振り返って出した答えも綴られている。

ひとつのヒントは、「いまを生ききる」。

どうなるかわからない先々のことを考えても答えは出ません。不安が大きくなるばかり。それよりも今日・明日にできること。近い将来のことだけ考える。それが前向きに生きるコツかなと思います。

彼女の日常は、普段の暮らしを味わい、楽しむこと。そして、人には決して深入りせず程々の関係を持ち、自分の好きなこと、好きな時間を大切にして過ごす。

先達の言葉に大きく頷いてしまう。PERFECT DAYSの平山さんの世界とも通じている。

『新・幸福論』で前野隆司氏も述べていた。

小さな地球に同じようにして生きている、凄まじく幸運なわたしたちは、みんなでもっと手を取り合って、この稀有な生を満喫するべきではないだろうか。不安や死の恐怖に怯えるよりも、生の一瞬をともに喜び合い助け合うべきではないだろうか。たとえそれが幻想だとしても。

この言葉も呼応してる。

「いまを生ききること」を考えると、さまざまなヒントを得られそう。

・人と自分を比べない
・自己決定する
・自主的で主体的に生きる
・自分軸を持つ
・常に感謝する気持ちを持つ
・いつも目的を明確にしている

すべて、主観的幸福感の高い人の持っているもの。

そして、そのモデルが多良さんだった。

すべて、平易な言葉で語られてるのが良い。誰にでもわかるシンプルさがある。けれど、誰にでもできるものではない。

考えるだけではなく、実践すること。そう「いまを生ききる」ことを実践すること。これは、我が林住期に良いテーマだと思う。



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