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いけばな歳時記

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いけばなに使われる花材は、四季の移ろいを映す「季語」のような、連綿とつながる文化の結び目であり、いけばな作例を使った「歳時記」としてまとめることができます。
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いけばな歳時記 シラン

いけばな歳時記 シラン

 シランは、日本列島・台湾・中国などに分布し、春、赤紫・紅・白・ピンクなどの花をつけランの仲間。葉は薄く幅広長楕円状で縦すじがあります。
 上作は、主材の方向性(遠心)・一種いけ→広瀬テキスト48・75p。

 上左 葉を巻いた横長・巻く・一種いけ→広瀬テキスト53・71・75p。
 上右 チガヤ・ボクによる自然調 主材の方向性(遠心)→広瀬テキスト48p

 上左 葉を巻いた・一種いけ→広瀬テキ

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いけばな歳時記 アマリリス

いけばな歳時記 アマリリス

 アマリリスは中南米・西インド諸島に分布するヒガンバナ科の多年草。白・赤・ピンク・淡黄などの花色で六弁の大きな花を咲かせます。秋咲きのホンアマリリス=ベラドンナリリーは別物です。
 アマリリスは茎が柔らかく中空で傷みやすく藁などの詰め込み保護で出荷されます。詰め込みは取り除き、剣山にそのままでは留めにくい場合、先に枝をいけたい方向に刺して、そこにアマリリスを差し込みます。
 上 ハウチワカエデ

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いけばな歳時記 シャクナゲ

いけばな歳時記 シャクナゲ

 シャクナゲは、北半球中心の寒帯~熱帯まで、広範に分布するツツジ属の常緑花樹。春~初夏、枝先に赤・ピンク・白・黄の大きな五~七裂の合弁花を総状に咲かせます。
 ツツジ同様ねばりは無く、水揚げは水切り・枝に割りを入れる・表皮をむく・叩き潰すなど。
 作例は、主材を向き合わせにして客材を包み込むようにいける「主材の方向性(向心)」の見本花です。 →広瀬テキスト48p

 上左 ウンリュウヤナギを上下に

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いけばな歳時記 ダッチアイリス

いけばな歳時記 ダッチアイリス

 ダッチアイリスは、19世紀末、地中海沿岸に分布するスパニッシュアイリスにさまざまな種を掛け合わせてオランダで作られた園芸品種。花色は青・紫・暗赤・黄・白など豊富。剣先状の葉の中折れした内側が白っぽく絹光沢するのも特徴的です。
 バクテリアによって、葉や花の黄変・花先の巻き込みが起きるので、水切り・水換えは必須です。
 上作は ダッチアイリスを上に花、中間に葉、下にスイトピーを置く上下対比→広瀬テ

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いけばな歳時記 エニシダ

いけばな歳時記 エニシダ

 エニシダは西アジア~ヨーロッパ・アフリカに分布するマメ科の一属。常緑・落葉低木。春~初夏多数の小花が並び咲き、花色は黄・白(赤・ピンク・オレンジが一部に差す園芸種もあり)。日本には17世紀末中国経由で伝来。
 濃緑の細枝が八方に伸びる姿は独特。曲げも利き、成形に適しています。
 作例は、エニシダを丸めた一種いけ→広瀬テキスト71・45p

 上左 モンステラの葉を半面切ったスペースにエニシダ・カ

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いけばな歳時記 ツツジ

いけばな歳時記 ツツジ

 ツツジはアジア中心に分布する常緑・落葉花樹。春~初夏、枝先に赤・白・ピンクで先が五裂する合弁花を数個つけます。同族でもシャクナゲ・サツキは別扱い、別属のキリシマツツジは仲間扱いがふつうです。
 ツツジの枝はねばり無く折れやすく、バネやワイヤで曲げます。
 水揚げは水切り・枝に割りを入れる・表皮をむく・叩き潰すなど。
 作例は、ハナミズキと合わせた自然調→広瀬テキスト45・46p

 上左 フジと

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いけばな歳時記 ハナミズキ

いけばな歳時記 ハナミズキ

 ハナミズキは、北アメリカ原産のミズキ属の落葉樹で、1912年ワシントンD.C.に贈ったサクラの返礼木として有名。春、サクラの咲いた後、近縁の白いヤマボウシより早く、白・ピンクの苞葉(花を囲む葉)をつけます。秋には赤い実がつき、寒暖差があれば緑の葉が濃赤に変わる紅葉も見事です。
 水揚げは水切り・枝に割りを入れる・表皮をむくなど。
 上作 ハナミズキ・ツバキで「基本花型立真型)」→広瀬テキスト25

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いけばな歳時記 ライラック

いけばな歳時記 ライラック

 ライラックは、東南欧に分布するモクセイ科の落葉低木。春、芳香のある青~赤紫・ピンク~白の小花を穂状につけます。
 水揚げには葉を減らす・枝に割りを入れる・叩き潰すなど。バクテリアに弱いので切り戻し・水換えも大事で、新鮮な水をたっぷり吸わせるには給水スポンジは不向きです。
 上作は、 ハランで「主材の方向性(遠心)」→広瀬テキスト48p

 上左 ライラックの枝に晒しホウキグサを斜め下に差し込んで

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いけばな歳時記 キブシ

いけばな歳時記 キブシ

 キブシは、東南アジアに分布する落葉低木。早春淡黄緑の小花を房状につけます。ヌルデのフシの代わりにお歯黒に使われたのが名の由来。小花が付け根から長く並び咲くところがフジと似ているとして、キフジとも呼ばれますが、フジとは違い、枝はツル状でなく、矯めも利きません。
 上作は、 ラナンキュラスと合わせ、花材のバネ(ワイヤ留め)で曲げています。→広瀬テキスト66p。

 上左 キブシ・スカシユリの自然調・

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いけばな歳時記 ヤマブキ

いけばな歳時記 ヤマブキ

 ヤマブキは、太田道灌の逸話でも知られる、東アジアに分布するバラ科の落葉広葉樹。春少し暖かくなる頃山吹色の花が咲きます。花色が白いヤマブキもありますが、よく似た白花ヤマブキは花弁4弁・葉が対生で別属。どちらも細く柔らかな枝は矯めが利き、水揚げ・花持ちも良く、水切り・水換えでじゅうぶん保持出来ます。
 上作は、 ヤマブキの一種いけ→広瀬テキスト75p。

 上左 シロバナヤマブキの一種いけ→広瀬テキ

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いけばな歳時記 バイモ

いけばな歳時記 バイモ

 バイモは、ユーラシアに分布するユリ科の草花。春少し暖かくなる短期間、淡緑色で釣鐘状の花が下向きに咲き、花弁の内側には暗褐色の網目模様があります。水揚げ・花持ち良く、水切り・水換えでじゅうぶんです。
 上作は、 キャベツの葉との組み合わせ。

 上左 キウイツル・カスミソウと組んだ作。
 上右 バイモにツバキを加えた自然調→広瀬テキスト45~50p。

 上左 コルク・ツバキと組んだ構成→広瀬テキ

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いけばな歳時記 クリスマスローズ

いけばな歳時記 クリスマスローズ

 クリスマスローズ(ヘレボルス)は、西欧原産、春咲きキンポウゲ科クリスマスローズ属の草花。花に見えるガク色は、白〜黄~黄緑・赤~紫と多彩です。花持ちは良く、しべが落ちてガク片がしっかりした花はさらに良好です。水揚げには40℃程での湯あげと切り戻し・水換えを行います。
 上作は、 編んだハランとの組み合わせ→広瀬テキスト73p

 上左 シモクレン・枯れチースを加えた構成→広瀬テキスト79p。
 上

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いけばな歳時記 アオモジ

いけばな歳時記 アオモジ

 アオモジは、クロモジ同様クスノキ科の樹木。緑の枝色からアオモジと呼ばれます。葉に先立って淡黄色の房状の花が咲く早春の花木の一つ。
 クスノキ系は矯めが利かず折れやすい枝の代表で、枝振りやバネを利用した曲げと、工夫が必要です。水揚げは割りを入れる、外皮を削るなど。
 上作 中日新聞いけばなコラム掲載作。複合的構成→広瀬テキスト50p

 上左 複数花器による花型の分立→広瀬テキスト33p。
 上右

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いけばな歳時記 ネコヤナギ

いけばな歳時記 ネコヤナギ

 ネコヤナギは東アジアの川辺に自生し早春に開花するヤナギの仲間。葉が出る前に銀白の綿毛を持つ雌雄の花穂を咲かせます。開花が遅く大きめのアカメヤナギ系との交配もあり、この仲間もネコヤナギと呼ばれます。
 ネコヤナギはいけばなでは春の花木として扱われ、ウメ・モモなどミシミシと矯める花材に対して、中の繊維を揉みほぐすサンゴミズキと共通する矯めの代表。花が穂のような外見のせいで、水から離すことも普通です。

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