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「メタモルフォーゼの縁側」

皆さんこんばんは、今日も1日お疲れ様でした。
もうそこまで来ている冬に、つまり秋があっさり終わってしまうということに寂しさと愛おしさを感じている日々ですが、今日22日は最後の秋を満喫できる素晴らしい天気でしたね。
名残惜しくもありますが、私はみかんを食べて気を紛らわせています。

今日は「メタモルフォーゼの縁側」という作品を紹介しようと思います。


 夫を亡くした75歳の老婦人が、猛暑の中葬式から帰る風景から物語は始まる。
老体には耐え難い暑さに茹だり、逃げ込むように入った本屋で偶然手にした美しい表紙の本
そこで微笑む2人の美男子に導かれるように、彼女はその本を買ってかえるや否や、久々に満ち足りた気持ちでページをめくってゆくと
まさか、2人が恋人のようだと気づく。
「あら、まあ、」
しかし慣れない描写に驚いたのは最初の一瞬だけで、恋に素直に慣れずにもがく2人にだんだん心を奪われてゆく。
彼女は彼らに出会った”神聖な場”となったあの書店に通い詰め、初めての「推し活」を通じて58歳年下の少女と”仲良し”になっていく。

一方、老婦人がBL漫画を買う姿に驚きを隠せずも、できるだけ平然を装って会計を進めるアルバイトの少女は、17歳の高校3年生。
自らも大のBL好きだが周囲には隠しており、友人は近所に住む幼馴染だけ。
作品への溢れんばかりの愛情を心の底に隠しているが、
本当は気持ちを共有できる友人が欲しい、BLを恥じる風潮に靡く自分が情けない、という思いを抱えながら、毎日学校から全速力で逃げ帰ってくるような内気な少女だ。

一つの作品を手にすると、老婦人は彼女を模る75年の歳月と全ての肩書を脱ぎ捨て、恋にキラキラと輝くひとりの乙女へと生まれ変わる。
そんな彼女の姿を見て、少しずつ「逃げること」から抜け出していく少女。

BLがあれば、2人は手を取って前に進んでいける。
そこにあるのは「好きなものでつながる力」で、ときめきは人を、心を動かすのだ。
現実に直面しながら、2人はオアシスで心を通わせながら、毎日を懸命に生きてゆく。

2人の一見「でこぼこフレンズ」は、17歳の、そして75歳の他の誰よりも深く繋がりあう友達になってゆきます。
彼女たちを見ていると、「好きな作品」を通じて誰かと繋がった時にあがる、熱く柔らかく芳ばしい湯気が、目の間に懐かしく立ち上るような気がします。
心に溢れんばかりの愛を秘めているあなたに、是非見ていただきたい作品です。



「好き」は隠していていいのです、大切に、自分の両手で温めてあげましょう。


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