となりのひとりごと

ふつうの大学生です。 ちょっとした気づきで、頭を柔らかくするたのしさを 好きなものでつ…

となりのひとりごと

ふつうの大学生です。 ちょっとした気づきで、頭を柔らかくするたのしさを 好きなものでつながる嬉しさを おすそ分け、しあいましょ

最近の記事

「おいしい生活」を皮切りに、付加価値が売れる時代になった。 SNSが普及し、文字数の中でキャッチーなフレーズをうまく作る人が増えて、ブランドのロゴが「見えやすい見栄」として通用する社会。 だからここが、「本質主義」への転換点なんじゃないかなあ。

    • 被爆国として致し方ない、複雑な心境

      最近、日本や世界で話題性の高い作品といえば『オッペンハイマー』、ではないだろうか。 SNSやネット上でも「日本人なら観に行くべき」等の謳い文句を、よく目にしたせいか、うっすらと義務性を感じつつ、私もみに行った。 まずは、ごく個人的な感想を垂れる。 映画が終わって、自分の体に湧き上がった最大の感情は「怒り」であった。 しかし、それは映画の監督に対してではなく、じわじわと胃を蝕むように私の中に拡がる、この作品が及ぼしかねない「潜在的な危機」に対してである。 まず、自分と同世代

      • 「とわの庭」

        小川糸 著 「とわの庭」 とわは、うつくしい母親「あい」のもとに生まれた。 彼女たちは、「とわの庭」とよぶ豊かな庭のある一軒家に二人の世界を育んでいた。 ふたりは「とわのあい」で結ばれた、透明で黄金色の、生糸のように儚い光で結ばれていた。 とわは、目が見えない でも、目が見えないのが悲しいこと、とは思っていない 見えるからいいこともあれば、逆に見えるからこわいことだって、いっぱいあるに違いないから。 彼女は、母と暮らすちいさな世界を、「みる」以外の全ての感覚を使って感じて

        • まだ明るい、夕方5時

          チャイムがなって、5時になったことに気が付く 子供の頃、この時間にはちょうど遊びが佳境を迎える頃だった 1時間ぐらい前に食べたおやつがエネルギーになって テレビの画面で競り合う自分のキャラクターの接戦に、私たちは跳ねたり、きゃーと叫んだり、おお盛り上がり 決まって毎回そんな時に、試合終了を知らせるゴングのように、というより、「そろそろかえりなさ〜い」という聖母の囁きのように、チャイムはなってしまう。 チャイムがなれば、夫の愚痴にきゃっきゃとたのしそうなお母さんたちだって

        「おいしい生活」を皮切りに、付加価値が売れる時代になった。 SNSが普及し、文字数の中でキャッチーなフレーズをうまく作る人が増えて、ブランドのロゴが「見えやすい見栄」として通用する社会。 だからここが、「本質主義」への転換点なんじゃないかなあ。

          PERFECT DAYS

          彼は、「TOKYO TOILET」の青いツナギを着て、毎日都内の公衆トイレを掃除する仕事をしている。 よく居合わせる若年の生意気な同僚からすると、「仕事はめっちゃできるけど無口すぎて何考えてるかさっぱり」な老人。 掃除中にすれ違う人々は、彼を「掃除ロボット」か何かのように見て見ぬ振りをするか、卑しむ視線を送ってきさえする。 ただ彼はといえば、この世界と繋がっているようで、全く別の場所で生きている。 普通の世界の人たちと、あらゆる意味で交わることはない。 自前のトラックに

          さあ、「人生」について。

          生きることとは、生・老・病・死の苦行である。 でも、なんでこんなに険しい道をみな進んでいくのだろう? 「私は幸せになるんだ!」 「一生、幸せにします!」 「ムスメには、幸せになって欲しいんだ。。」 じゃあ、聞きます。「しあわせを、絵にかけますか?」 「仕事」が、絵に描けない、動きの総称であるように 多くの日本人が抱く「しあわせ」の幻想は、ほんとうに、実態がない迷信である。 ただ、こうは言える。 「しあわせを見つける悦びに、騙されながら、またそのうれしさを知らずに求めて歩き

          さあ、「人生」について。

          「夜明けのすべて」

          「いったい、私は周りからどう思われたいのだろうか。 明朗快活というのも違う、優しくて気がきくのはいいけどそれだけだと思われたもんなら堪らない。」 美沙。巷にいう大企業から従業員6名の粟田金属で働くようになって三年が経つ。 冒頭から怒涛のような「気遣い」を脳内で繰り広げる彼女は、重度のPMS(生理前症候群)で前の職場に戻れなくなったきっかけも、まさにこのことが理由だ。 爆発するまで収まりきらない、突発的で攻撃的な『怒り』の感情が、生理前の彼女を襲う。苛立ちの芽がぽっと顔を出す

          「夜明けのすべて」

          考えるのをやめたから

          私は、約5年前から気分変調症と生きてきた 1日の終わりに、ひとり反省会 「あの子に嫌われたかも、みんなに白い目で見られているんだろうな」他人の頭の中なんてわかるはずもないのに、被害妄想を事実だと信じて疑わなかった でもそんな5年を経てわかってきたことがある 私たちが「考えていること」は全て、幻想であるということ。 全ては不確実で、刻々と形を変える 「1秒前は死んだ」のだ ただ一つ決まっているのは、いつか必ず終わること それ以外は、私が自由に決めていいのだ 結局終わる時、

          考えるのをやめたから

          「湯を沸かすほどの熱い愛」

          みなさま、明けましておめでとうございます。 年明けにも関わらず、寒く、苦しい思いをされている皆様に1日も早い温もりと笑顔が戻ることを、心からお祈りしております。 今日は「湯を沸かすほどの熱い愛」という作品をご紹介します。 バツイチの銭湯屋の倅に嫁いだ美しい女性、双葉。 一人娘の安澄は大人になりかけの少女な季節。あどけなさがまだしっかりと残った、あの年代ならではの澄んだ美しさを放つ内気な女の子だ。 生活はというと、「湯気の如く蒸発した」店主のせいで、家業である銭湯は長らく

          「湯を沸かすほどの熱い愛」

          Love Rosie

          今日は、映画「Love Rosie」(あと1センチの恋)をご紹介します。 ロージーとグレッグは、生まれた時からずっと一緒な幼馴染。互いの家に入り浸っては、一つのイヤホンで好きな音楽を聴き合い、些細なことで殴り合いの喧嘩だってする。親よりも、自分よりもお互いを知っていると、胸を張って言えるほどには近しい存在だった。 そんな彼らの関係が崩れだすのは、そう、「プロムに誰を誘うか」という時期だった。ロージーは女の子、グレッグは男の子。でも子供だった彼らにとって、「男女」であること

          『おいしいごはんが食べられますように』

          高瀬隼子によるこの小説は、芥川賞を受賞した著名な作品である。 私も、祈るような題名と白と黄色で描かれたよくわからない表紙に惹かれ、手に取った。 『おいしいごはんが食べられますように』というのだから、もちろん色がテーマ心温まる物語なのだろうと、油断でだらりと弛んだ心持ちのまま読み始めてしまった。 そう、一見やさしそうな外装の悪魔に、まんまと騙されたのだ。 二谷は普通のサラリーマン、ごく”普通”の職場で働いている。 職場には昭和的なリーダーシップを悪気なく振りかざし、少なくとも

          『おいしいごはんが食べられますように』

          いっそ、遺伝子レベルかもしれない

          ここ数日、やっと、やっと今回の鬱期を抜け始めた感覚がある。 今回は長く、鈍く、苦しい2週間だった。 私には1ヶ月に少なくとも一度、鬱の底まで気持ちが落ちる時がある。 今年の夏頃、自分の中ではどうにもならなくなり受診した精神科医によると、私の”心情”は「気分失調症」と呼ばれているらしい。 症状は本当に人それぞれだが、私の場合は、常に「2メートルほど離れたところからちょうどダーツを投げるように放られた出刃包丁が、ざっくりと左胸に刺さっている感覚」にある。私が今日まで出会った人々

          いっそ、遺伝子レベルかもしれない

          「52ヘルツのクジラたち」

          52ヘルツのクジラたち それは、誰にも聞き取ることのできない「52ヘルツ」の声で鳴く鯨たちのこと。 貴湖は恋人の前で刃を翳した。その刃は、自らの腹に鎮まり消えない傷となって今も残っている。 傷が疼くとき、気づけばいつも呼んでいる「アンさん」の名。彼は貴湖に「魂の番」という言葉を教えてくれた人だ。彼は、1人で暮らす家の浴槽で、手首から血を流し1人で死んだ。 2人の愛する人を傷つけてしまった自らへの悪寒に耐えられず、誰も自分を知る人のいない、かつて祖母が住んだ辺鄙な港町へ貴湖はや

          「52ヘルツのクジラたち」

          「僕らのごはんは明日で待ってる」

          こんばんは、皆様今日も1日お疲れ様でした。 気がつけば終わってしまったのかと、秋のあまりにさっぱりとした去り方に恨めしささえ感じていた11月半ば、かと思えば最後に秋の鮮やかさを存分に楽しめるような気候と共に、少し帰ってきてくれたようなここ数日間ですね。 今日は「僕らのごはんは明日で待ってる」という作品をご紹介します。 主人公は18歳の男子高校生「イエス」もとい「葉山くん」とクラスメイト「上村」 葉山は、中学3年生の頃、兄を病気で突然亡くしている。 高校三年生になり、彼にと

          「僕らのごはんは明日で待ってる」

          「メタモルフォーゼの縁側」

          皆さんこんばんは、今日も1日お疲れ様でした。 もうそこまで来ている冬に、つまり秋があっさり終わってしまうということに寂しさと愛おしさを感じている日々ですが、今日22日は最後の秋を満喫できる素晴らしい天気でしたね。 名残惜しくもありますが、私はみかんを食べて気を紛らわせています。 今日は「メタモルフォーゼの縁側」という作品を紹介しようと思います。  夫を亡くした75歳の老婦人が、猛暑の中葬式から帰る風景から物語は始まる。 老体には耐え難い暑さに茹だり、逃げ込むように入った本

          「メタモルフォーゼの縁側」

          「女のいない男たち」

          「感情を抑え込むことができるようになっては駄目よ。  そうやって人間は、30までにくたびれてしまう。  辛い気持ちも、感じられる時に感じなさい。」 この言葉は、映画「Call me by your name」で授かった教えである。 そして今回の作品でも、同様の作者の含みを感じる部分があった、いや、作品に佇む男たちがそっと囁いている。 「木野の内奥にある暗い小さな一室で、誰かの温かい手が彼に向かって伸ばされ、重ねられようとしていた。 ずいぶん長いあいだ彼から隔てられていたも

          「女のいない男たち」