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『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(アニメ映画)

視聴環境:Amazon prime video

※ネタバレします。

【内容】
『ゲゲゲの鬼太郎』の鬼太郎誕生の前日譚。
喜太郎の父親が、目玉の親父なる寸前までの物語。

【感想】
完全オリジナル作品として、『犬神家の一族』をアニメでやってやるというテイストで、なかなかよく出来ていて面白いと感じました。
水木しげるの戦記物や、妖怪ものの短編をベースにしたアニメ作品は結構あったと思うのですが、横溝正史的な世界観をゲゲゲの鬼太郎の世界観に融合させることで、一種の魔改造が実現している…なるほど、その手があったかと…
随所に市川崑の『犬神家の家』のような映画的な手法が、散りばめられていました。

また、今風の緻密な線の多いキャラクターではなく、80年代のアニメと思えるようなかなり簡略化したキャラデザインも、今時のアニメにしては珍しいなあと思いました。
そのおかげもあって、遺産の行方が決まる一族の会議で、多人数が入り乱れての乱闘劇など、作画カロリーの高いものも積極的にやっていたり…
ゲゲロウと仮面を被った多人数の者たちとの殺陣のシーンとか…
背景はしっかりと描き込み、画面自体は古い映画ぽい感じに調整していたりして、映像全体の見え方はそれなりのクオリティに仕上げていました。

第二次世界大戦で軍人として戦った人物が、トラウトを抱えながら、抗えない社会や時代に翻弄されて行く…
日本の戦中派の映画監督の作品のような物語の作り方をしているなあと思いました。
こうした古典的ともいえる物語が、若い世代にも受けているというのが興味深いなあと…

あの水木しげるの『墓場の鬼太郎』のおどろおどろしくグロテスクな鬼太郎の両親を、こんなにも生き生きと魅力的なキャラクターとして描き、物語世界の翼を広げる…
赤塚不二夫の『おそ松くん』を『おそ松さん』として、現代のコンテンツとして甦らせたように、この作品も今までの映画やアニメの文脈を再構成させることにかなり成功していると感じました。

この作品はヒットしたので、鬼太郎の両親の更に前日譚とか作られるでしょうね。
今回くらいのレベルで、作品を積み上げていって欲しいなあと思いました。


80年代に『鬼太郎』がアニメ化された時の夢子ちゃん的なキャラクターが、実は一番因果な存在であるというのも、今までの作品世界を飛び込み乗り越えていってるのだと感じました。
つくづくキャラクター設定や配置、シナリオが、凄くよく出来ているなあと…
まあ、クライマックスへの展開は色々と思うところもありましたが…

https://www.kitaro-tanjo.com

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