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『シャーリー・ホームズ 緋色の憂鬱』(高殿円 著)

※ネタバレします。

【内容】
2012年、オリンピック開催に沸くロンドンを舞台に、アフガン帰りの軍医ジョー・ワトソンは、名探偵シャーリー・ホームズと出会い、不可解な連続殺人の謎を解明するために奔走する。


【感想】
使い倒され、超絶レッドオーシャン化しているホームズということで、触手が伸びなかったのですが、この作者の本で読んだ何冊かの本が面白かったので、読んでみることにしました。
この本読んでいて感じたのは、作者の望む望まないに関わらず、設定やキャラクター解釈などの大喜利になることはなるってことです。

そんでもって、この作者が大喜利をどんな感じで打ち返したかというと…
ホームズは、『僕に心(ハート、心臓)はない』という人造の心臓の天才美女。
ワトソンは、アフガニスタンから戻って来たばかりの従軍医師で、心と身体に傷をおった20代後半の独身女性。
ハドソン夫人が、死者の人格をAI化した存在だったり…
モリアーティ教授が、品のいい物腰の裏に残忍な性格の天才科学者の60代女性。(彼女は、人工心臓を作りホームズの命を長らえ続けさせている存在でもある。)


自分だったら、ホームズものという超ハードルの高い中で、どんな設定にしたら新しい切り口で、読者を物語に引き込めるのかなあと思ったりしました。
この作品でもやっているように、男女の性別の入れ替えや、ハドソン夫人とかでやっていたようにSF設定に振るというのも、わりとやられているような気がしますし…
同性愛的なキャラ設定も行われていたり…
ざっと思いつくまま書いてみると、時代劇もの、異星人もの、別次元人もの、転生やループものとか…
なんか色々やられているよう気もします。
とはいえ、またまだここら辺は、可能性(金脈?)が眠っているような気がします。


映像映えしつつ、シリアスめの世界観や物語展開に持っていきたくて、書いた作品なのだろうなあと思いました。
設定自体はアニメ化とか、配信用のドラマとかには向いている気もしますが、殺人に使われた凶器が女性もののタンポンだったりして、アニメやドラマにしにくいかもとも感じましたが…
あえて、そこを狙ってる感もあり、完全に配信ドラマを目指した小説なのではとも思いました。
前に読んだ『トッカン』シリーズや『上流階級』シリーズは、完全にドラマを狙って書いてる感が凄くあり、現実にキー局でドラマ化もされていましたし…
今回の小説はそことは違って、舞台はイギリス、出てくるのも欧米系、かなりお金のかかりそうなシーンや設定も含み、尚且つスターバックスなどの大手の企業の実名入りのタックスヘイブン問題なども取り扱っている…

その他、いくつか印象的なシーンがあり…
特に、ホームズとワトソンの初めての出会いが、モルガの死体置き場で寝ているところだったりとか、面白いこと考えたなあと…

この作品が配信ドラマになるかどうかは別として、作者の幅の広さとか、筆力を感じることが出来ました。

https://www.hayakawa-online.co.jp/smartphone/detail.html?id=000000007934

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