「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー(Rebel in the Rye)」(実写映画)の感想

視聴環境:ネット配信

〜ネタバレします〜

【内容】
カルト的に人気を誇る小説「ライ麦畑でつかまえて」の作家サリンジャーの伝記映画。

何をやっても長続きしないモラトリアム的な生き方をしていたサリンジャー。
しけし、大学の文学科に入り、小説を書き始りその才能を開花始める。
その最中、徴兵された先の戦場で心の傷を負ってしまう。
帰ってきたは良いが、小説が書けなくなってしまった彼は、たまたま出会ったインドの導師によって再び小説を書き始め…
「ライ麦畑でつかまえて」を完成させ…

【感想】
シナリオのプロットとしては、酷く地味な企画ながら、面白く観れました。
脚本がよく出来ていることと…
もう一つの大きな要因として、大学で小説のライティングを教える教授役のケビン・スペイシーの演技の良さが際立ちました。
その圧倒的な説得力と実在感…

主演のニコラス・ホルトも良い演技をしていましたが、要所要所で出てくるケビン・スペイシーの受けの演技や佇まいがこの映画のリアリティーを際立たせていると感じました。

個人的にサリンジャーの作品は学生時代に、「ライ麦畑でつかまえて」と短編集をちょっと読んだくらいしかないのですが…
「ライ麦畑でつかまえて」読んだ時の開放感みたいなものだけは、鮮明に記憶に残っています。
当時も今もそれを上手く言葉することは出来ないのですが…
なんとなくそれを言葉にしてみると、近代的な自我みたいなものの含む重っ苦しさみたいなものからの開放みたいな感覚でしょうか…
はたして自分の感じた感覚がどこまで、文学史に則ったものなのかとかはよくわかりませんが…

印象に残ったシーンとしては…
ケビン・スペイシー演じる教授が、大学に入ったばかりのサリンジャーに言った、
「作品を書くということは、雑誌社からの小説の不採用通知を受け取ることに慣れること」
「君は見返りがないと書かないのか?書く言葉は、君の虚栄心満たすためのものなのか?」
というセリフ。

そして、戦争によるPTSDによって、小説。書けなくなったサリンジャーが、インドの導師に教えを乞うた時に、
「君はダメな原稿を破り捨てる時、それを楽しんでいるかい?」
という導師の言葉をきっかけに、サリンジャーは原稿を破ることを楽しみ始める。
そして、いつしか破り捨てるなくてもよい原稿を書けるようになっていく。

どちらも何か感動的であり、示唆的なエピソードに痺れました。
言葉を紡ぐことを生業とした人の書く言葉の強さをまじまじと感じられた作品でした。

https://www.google.co.jp/amp/s/eiga.com/amp/movie/87898/

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