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「継承していくということ 理念と未来へ」                               小磯光德さん

こんにちは!
天通合氣道二代目の小磯光德さんにお話を伺ってみました。「継承していくということ」への想いと、合氣道の魅力をお伝えします。

1988年生まれ、栃木県出身。天通合氣道師範。天通合氣道六段。
大学卒業後、神職として奉務。2014年より二代目としての修行に入る。
2015年天通合氣道準師範拝命。2018年天通合氣道師範拝命。
現在、本部道場・赤坂教室を中心に、子供クラス・一般クラス・大学生の稽古を受け持つ。
趣味はドライブ。


道場に生まれて

ー 生まれた時から合氣道

天通合氣道が創立したのは1988年4月ですが、私が生まれたのはその年の9月でした。なので道場の方がちょっと先輩になりますね。
生まれた時から合氣道をやっていたようなものでしたが、はっきりとした記憶があるのは黄色帯の頃だと思います。
稽古日の参加は当たり前。しかし、強制というより稽古はやるものだという感じでした。昭和の名残があり、当時はとても厳しかったですね。
でも、稽古は厳しい反面、稽古以外は自由で楽しくて、年上の人たちに遊んでもらった記憶も残っています。
技を教えてくれたり、遊んでくれたり、稽古中も稽古以外でも先輩方がいろいろ面倒見てくれて、先輩がしっかりと後輩の面倒をみるという環境は昔から続いてきたものであると思います。

ー 学生生活から神職へ

中学校・高校時代は、本部道場で稽古を続けていました。
学生時代は、都内の一般クラスと東京大学合氣道会や慶應義塾合氣道会(サークル)にお邪魔させていただきながら稽古を続けていました。
入学した大学では、日本はどういう国なのだろうというのを知りたかったこともあり、日本の歴史や文化、特に精神文化を学べる学科に入り、神職課程というものを履修していました。学内では実家の後継ぎになることが決まっている同期が周囲にいたので、自分と同じ境遇を感じられたのは心強かったですね。
神前で奉仕するために作法というものがあります。
歩き方、立ち座り、姿勢、礼の伏し方、など恭しく行うことが求められますが、私の中では稽古や日常的な動きの中にも、作法の精神や身体動作、その空間のあり方が活かされています。
卒業後は資格を取得し、神職として務めておりました。

後継者としての意識

― 後を継ぐという想い

2014年に道場へ戻り、道長師範のもとで修行に入りました。
今振り返ると、二代目として継ぎたいという意志が強くなったのは高校生のころからかなと思います。
それまでは林業に興味があったり、学校の先生もいいかなと思ったりはしていましたが、いずれにしても実家に帰ること、二代目になることへは意識がありました。
後を継ぐことについては、自然と受け入れているような部分があって強制的な感覚はなかったですね。
なにより好きだから、楽しいからというのが一番でした。
合氣道という武道自体もそうだし、稽古しているときもそうだし、また道場生の人との繋がりも。そういう環境を守りたい、継承したい、古い歴史はないけれども、それを継いでみたいという想いがありました。

― 二代目として

二代目に限らず、三代目、四代目とそれぞれの大変さはあると思います。
初代が大きな決意をして立ち上げたものを継ぐという立場になると、初代の想いはもちろん、関わるかたがたの状況や環境などを、全体的に捉えて、時代の流れを読み取りながら、残すもの・変化させるものを見極めて継承していく必要があると思っています。
継承していく・されていく関係性をどう作っていくか、さらにそれらが安定的に行われていく環境をどう作っていくか、ということは常に意識して考えています。
また、天通合氣道の自分を生かし周囲をも活かす理念を自らが率先して実現していくこと。やってみせ、背中を見せて、いくことを目指しています。
そして、「イマ」周囲にいるかたがたがどのように支えてくださっているか、自分の今いる環境に感謝の気持ちを持ちながら、そういった立場のかたがたの思いを捉え、感じて、考えて、関係性を築きながら組織全体を動かしていけたらと思っています。

天通合氣道の魅力

― 指導者であり学ぶ側でもある自身の喜び

稽古では実感を大切にしていますが、指導者として嬉しいと思う瞬間は、稽古に来ているかたがたが、ある一言やちょっとした感覚をとらえられたことで一皮むけたような理解と実感がともなったときですね。
急に技ができるようになったときとか、素振りが上達したときとか、あるいは精神的に克服できたとか、そういう実感の一瞬が見られたときが嬉しいですね!
それと、指導者の立場ではありますが、まだまだ学ばなければならないことはあるので、自分の合氣道、技や素振りでも自ら鍛錬して研究できることは純粋に楽しいと思います。
稽古生との稽古でも、間合いを上手く捉えられたときや、合氣道では相手とぶつからない動き、調和した動きを目指していくので、相手と一緒に「コレ!」みたいな感覚になる気づきの瞬間が楽しいというか、面白味がありますね。
一緒に稽古して気づきあえることは本当に楽しいと思います。そういう楽しさを持ちながら、今後も稽古を重ねていきたいです。

― 日常生活に活かす道として

天通合氣道には日常生活に活かすという理念があります。
実際の生活では人間も集団の中で生活をしているので、よりよく生きていくために自己の確立をしつつも、周囲との関係性を上手く築いていくことが大切になってきます。
稽古では、姿勢、視野の広さ、察知、調和、導き、礼、柔らかい動き、間合い、意識を止めないこと、など日常生活に活かせる要素の学びがあります。
稽古生の職業や生活は様々で、何に軸を置いて稽古をしているかによりますが、生きている環境の中で、自分の道を極めるために合氣道の学びを活かしていただけたらと思います。

― 時代と共に

合氣道は、武としての強さを学び鍛錬することができる一方、自分を素直に見直し向き合うということ、そして相手と接しながら、精神的なコリやハリを見つめなおすことができる、身体的・精神的にバランスのとれた武道であると思います。
道場では老若男女、上も下も幅広い年齢層で立場や級位段位もバラバラの稽古生が、同じ畳の上で稽古をしています。
自分が生きる中で何かを求めている人たちが稽古に来て、お互いの人格や生き方を認め合っていい距離を持って付き合えている。そんな調和のある中で行う稽古は、本質的な生きる楽しさを生み出せるものであると思います。

世の中の移り変わりが早くなっていますが、より良く生きていくための道を学び、時代の流れを捉えつつも流されずに、稽古生一人一人が自己を確立できるための道場として、今後もあり続けていきたいと思います。



取材日:令和5年6月24日
記事:創立35周年プロジェクト班

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