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ここ最近見た映画で良かったやつを語る!

年末といえば一年の振り返り、誰かが勝手に決めた暦で右往左往するのもようござんす。
ということで、今年見た映画で良かったやつ。
あ、映画館のない低文明超弩級田舎に住んでいるため、新作はほぼないです。

「別れる決心」〜純粋単細胞♂殺し

そりゃあもう一番槍はパク・チャヌクだろうて。
なんせ「オールド・ボーイ」「親切なクムジャさん」「お嬢さん」と来てこの別れる決心。
いつものエログロハイセンスを封印し、「所作」と「距離感」と「間」だけで二人の男女の奇妙で本質的な繋がりを描いてしまう・・・恐ろしい。
刑事と重要参考人の関係ながら高級寿司弁当を食べたあとの片付けの所作、これだけで世の単細胞な男は「こ、こいつ、俺に気があるぜ!」とノックアウトである。
主演の中国人女優タン・ウェイの妖艶さを最大限に粘っこく演出するパク・チャヌクの魔術により、世の単細胞な男(実はオスの98%を占める)はいとも簡単に映画に引き込まれる。絶対俺のこと好きやんけ・・・と。
「グエムル−漢江の怪物」のパッとしないお兄ちゃんが、エリートだけどエリートという記号的意味でしかない自分に反吐が出そうなのを我慢している男をこれまた見事に演じている。
エリート刑事と疑惑の異邦人の混じりそうで混じり合わないもどかしさ、その決心とは如何に。
そしてたぶんタン・ウェイは僕のことが好きに違いない。えへへ。

「君たちはどう生きるか」〜パヤオ辞めへんで

2時間かけて今年唯一映画館で鑑賞した「君たちはどう生きるか」
宮崎駿という尊敬の念しかないけど一緒に働きたくない男の紡ぎ出す「エゴだよそれは!」を待ちぼうけているのは僕です。
何やら何度目かの最後の作品ということで、甲子園常連校かなと思いつつ、恐る恐る映画館(滅多に行かないからチケット買うの緊張)に馳せ参じた次第。
そこには宮崎駿の作家性が、恥ずかしげもなく「あしたのジョー2」の光る吐瀉物のようにぶちまけられていた(※出崎統)
これこそ、大御所にしかできない特権である。
ジブリ映画のみならず、フィクサー鈴木敏夫の著作もすべて網羅しているジブリギークの僕であれば、アオサギが鈴木敏夫で大叔父がパクさんなのは初見で看破した。
しかし、そんなことは宮崎駿にはどうでも良いのである。
例のドキュメンタリーという名のNHKスタッフの「エゴだよそれは!」で平然と暴露するくらいどうでもよいことであり、御大にあるのはエゴで爆発しそうな脳漿のガス抜きでしかないのである。
「君たちはどう生きるか」は「俺はこう生きてきた」であり「君たちがどう生きるかなんて興味ない」であり「でも俺がどう生きたかは見ろ」という宮崎駿のコロニー落としでした。

「道」〜今更ながら見ざるを得ないけどザンパノしっかりしろ!

一応映画を愛する人間宣言しているのであるが、正直古典的名作を見ていない。淀川長治も世代的に被っていないのである。
今年は一念発起、やっぱり古典も見ないとマウント取れないよね祭りであった。
やっぱりフェリーニとかゴダールはイッときたい年頃。
フェリーニは「8 1/2」のような作家性が毛穴から勝手に噴出してしまい申し訳ない映画の方が面白いのだが、しかし「道」は外せない。
大道芸ザンパノは、少々頭が弱いけども純粋無垢なジェルソミーナをアシスタントにする。
二人の旅道中は、アウトローで破天荒にしては寂しがりやであるザンパノのかまってちゃん行動に終始ついていけないけど目が離せないジェルソミーナという構図が付きまとう。
経済的にジェルソミーナを支配しているザンパノであるが、そういった関係性でしか人と接することができない自分に嫌気が差している。
一見頑強な肉体で商売上手なザンパノだが、実は世間体ばかり気にしている小男であり、純粋で白痴扱いのジェルソミーナこそ本当の優しさを持っているのだった。
というありがちなストーリーではあるが、このリアリズムこそ当時では革新的であったのだろう。
しかしまあ見事に男のダメさと母性に縋る性を描いている。
ジェンダーに小うるさい時代だが、ザンパノに感情移入しちゃう男子は多いことだろう。
ザンパノは少年ジャンプにおける主人公のライバルにありがちなキャラクターであり、ベジータですわ。
そう思って男子諸君古典映画も良いぞ!

「肉体の門」〜脱ぎっぷりと爆風で五社れ!

五社英雄が通る!この令和の時代、日本映画がむかしむかしそれはぶっ飛んですごかったんだぜと老害扱いされそうな発言にエビデンスをもたらす五社英雄。
もはやギャグ漫画のような登場人物と珠玉のセリフで不運(ハードラック)と踊(ダンス)っちまうのは必然。
かたせ梨乃と名取裕子の掛け合いだけで、リゲイン三本一気飲みして働けます!
敗戦直後の東京で肉体を武器に1トン爆弾が突き刺さる事故物件に巣食う強烈な女たちを相手するのは、米兵と根津甚八と渡瀬恒彦というもう完璧な地獄絵図。
とりあえず鮭持ってくる客には気をつけないといけないというライフハックを肝に銘じつつ、めちゃくちゃなストーリーを噛み締めよ!
名取裕子がターミネーターばりの防御力で米兵をぶちのめすシーンこそ、バブル絶頂期のジャパン・アズ・ナンバーワンである。
五社英雄は吉原炎上なんかも素晴らしいが、爆風インパクトが強いこちらを推してみた。
「あたいが関東小政だよ」は死ぬまでに言ってみたいセリフ8位である。

「NOPE」〜映画愛、そしてAKIRA滑り、チンパンジーこわい

僕は何を見せられたのだろうか?
ジョーダン・ピールのブラックジョーク炸裂「ゲット・アウト」のブラック加減がたまらなかった僕(性格悪し)にしてもひっくり返った名作。
SF宇宙人モノだと思うんだけど、とりあえず映画好きなのとチンパンジーこわいのが伝わったから許してやろう。
映画に関連する何かしらの因縁を持つイカれたメンバーが宇宙人と戦うストーリーなのだが、ストーリーの核となるチンパンジー襲撃がトラウマ級に怖くて志村けんをなおさら尊敬するのであった。
映画愛を言い訳にすれば何しても良いと思ってそうなコメディアン出身監督が編集中にケラケラ笑ってそうなストーリーに、これまた黒人監督ならではの差別問題を醸し出しつつ壮大に無視し、さらにAKIRAで締める。
これはたまらん。
金をかけたブラックジョークの傑作、そしてタランティーノっぽい映画仕草、次回作も期待大。

「凱里ブルース」〜映画的体験のまどろみ

映画とは体験であると子供の頃から思っていた。
小学生低学年の時分、レンタルビデオ屋の「ゴジラ対ヘドラ」でトラウマを植え付けられてからというもの、そう思っていたのである。
しかし、3D映画が出ても、IMAXが出ても、映画的体験は刺激が強くなるばかりで体験の本質とは違う気がしていた。
そういった映画的体験を感受させてくれるのは、クリストファー・ノーランとビー・ガンくらいではなかろうか?日本代表は深作欣二かな。
ビー・ガン監督のデビュー作、とりあえず映画的体験をするものだと思って見てほしい。
昨今のわかりやすく優しい金かけた映画とはまるで違う、ストーリーもクソもなく説明も殆どないけども幻想的な時間の流れを体験させてくれる映画。
異常な長回しの先には何もなく、ただ異常さだけが平然とそこにあり、じゃあ異常じゃないって何さ?と一人禅問答、そう世界は過ぎ去った解釈に過ぎないのである。

「ミッドナイト・ラン」〜おっさんのおっさんによるおっさんのための映画

ロバート・デ・ニーロに目の前で「グッドフェローズ」のニンマリ殺意顔やってもらったら死んでも良いと思っている僕ですが(どうせならチキンウィッグにしてほしい)、ロバート・デ・ニーロらしくないミッドナイト・ランも意外に好物で今回2回目の鑑賞。
ロバート・デ・ニーロといえば何でも演じることができる役者の代名詞であるが、ミッドナイト・ランでは人間性に問題があるちょっと抜けてるバウンティハンター役。
・・・なんかダサいのである。
中年になったデ・ニーロといえば「ヒート」みたいな渋い親父を想像するが、この役、なんかとことんダサいのである。
相方のおっさん(チャールズ・グローディン)もまた名演であり、おっさんとおっさんの掛け合いとそこまでハラハラしない珍道中、そして追いかける警察もライバルもマフィアもみんなおっさんである。
おっさんがおっさんと逃げ、追いかけるおっさん、裏切るおっさん、車盗まれるおっさん、騙されるおっさん、捕まるおっさん、めでたしおっさん。
男女雇用機会均等法に引っ掛かりそうなおっさん率のため、大衆受けはしないが、おっさんに差し掛かった僕が見ると染みる映画でもある。
おっさんは走ると息があがるのだ。おっさんはクレジットカードを止められたら何もできないし、おっさんは別れた妻とは気まずいし、おっさんは金にうるさく、おっさんは去り際がかっこよい。
おっさん、そしておっさん予備軍、さらにおっさんを超えたじいさん、これはあなた達のための映画だ。

「悪い男」〜さっぱり感情移入できないがなんだかわかるキム・ギドク

毀誉褒貶の中亡くなったキム・ギドクであるが、作品もそんな感じ。
特にこの「悪い男」はエグすぎる愛情表現にてさっぱり感情移入できないが、見終わったら「純愛映画やな〜・・・いや、ちがうちがう」と関西のおっさんのノリツッコミみたいになること必定。
ストーリーはR18なので差し控えるが、愛する女が落ちていく様を眺める最低男と、なぜかそれに惹かれていく女心と秋の空。
「そこに愛はあるんか」とただうるさいだけのCMとは違い、この究極の愛は無さそうでありそうな気がして怖いのである。
ラストシーンのなんとなくハッピーエンドな感じが怖すぎて微笑ましい。
嘆きのピエタ」よりは随分マシだから良しとするか。

「獣兵衛忍風帖」〜日本アニメの絶頂

やっぱり90年前後のセル画アニメ映画・OVAこそ至高と思っているオールドタイプな僕であるが、川尻善昭の力作をやっとこさ見ることができた。
なんせあの「バンパイアハンターD」のマーカス兄妹に入りたくて枕を濡らした僕である。
とにかく現代のCG技術に引けを取らない圧倒的な描写、そしてキャラ立ちすぎるキャラクターたち、さらに時間を完璧に使ったストーリーテリング。
ああ、時間制約の多いアニメ出身監督ならではの高等技術。
「カリオストロの城」って100分なんだぜ!って言われて、「怖いから俺寝る」とふて寝するくらいの作品力が日本アニメには屹立している。
この作品も時間軸を捻じ曲げられるくらい完璧な時間配分で、そりゃあ金も溶けるわなあ〜ってなる。
るろうに剣心の十本刀の原型みたいなイカれたメンバーが次々に出ては切られていくのに、ラスボスがシンプルな格闘系ってところが逆に萌えるのである。るろうに剣心やNARUTOが好きであれば、ハマること間違いなし。
でも、マーカス兄妹が至高、それは譲らない。

デビット・リンチ作品とは要するに・・・

フェリーニのあとはこれでしょうと言わんばかりにデビット・リンチ。
正直に言おう!さっぱりわからん。
なんやこれ、デニス・ホッパーめちゃくそ怖いやんけ。
マルホランド・ドライブ」、ナオミ・ワッツきれい!
以上

「続夕陽のガンマン」〜熱にうなされているときに見る映画

つい先日であるが、謎の病により熱にうなされ喉の痛みで固形物が飲めず夜間幻覚と幻聴で布団の向きをひっきりなしに変え続けて4時間という壮絶体験をした。
体調が悪いと映画なんて見たくもない。
しかし、ただ横になっているのはどうも勿体ない気がする。
ということで、うだる熱により思考回路がショート寸前の頭で考えた。
「こういうときはマカロニ・ウェスタンやろ!」
イマジナリーフレンドであるクリント・イーストウッドがこう言った。
「俺の映画は台詞も少ないし、おすすめだZE」バキューン、あえあえお〜
そこでずっと見たかった「続夕陽のガンマン」である。
マカロニ・ウェスタンの題名は適当なので、続だけど前でもあるらしい。
まあどうでも良い。
主演であるクリント・イーストウッドのセリフは、A4一枚で収まりそうなくらい。素晴らしい。
そして卑劣漢役イーライ・ハーシェル・ウォラック、どっかで見たことあるなあと思いあぐねて熱が上がる。
ウィキペディアを見てひっくりマイケル!ゴッドファーザーⅢのクソジジイやんけ!
相変わらずリー・ヴァン・クリーフは渋いなあ〜
ちなみにみんな大好きリボルバー・オセロットのモデルだぜ!
マカロニ・ウェスタンはなぜノイズが少なくぼーっと見れるのだろう?
クリント・イーストウッドなんてタバコ咥えて何も言わないし、イーライ・ウォラックはひたすらわーぎゃー言ってるだけだし、リー・ヴァン・クリーフも何も言わないし、ひたすら荒野を移動してたまに誰か撃つだけ。
しかし、そこに映画があるのである。
フロンティアスピリットと野心と現実、人間の純度の高い欲望があのアメリカの荒野(※スペイン)に体現しているのだ。
荒れ狂う自然と人間の野望、それを銃だけで生きる男たち、様々なバックグラウンドは微かな香りとなって画面に漂う。
熱にうなされ、クリント・イーストウッドにうなされる。
これぞ熱にうなされているときに見る映画。

「北陸代理戦争」〜映画が現実になった映画

有名な話であるが、実録ヤクザ映画終焉となった北陸代理戦争。
「仁義なき戦い」が大当たりした深作欣二の実録路線、なんと終いには現在進行系で抗争中の893さんをそのまま映画にしてしまう。
もちろん、その筋の人が見れば誰がモデルかわかるわかるよ〜なストーリー。
これはカニ食ってる場合じゃないぞと言わんばかりに映画発表後に本当の抗争になってしまい、主役のモデルの組長が弾かれてしまう大惨事に。
まさに映画が現実となってしまった映画なのである。
序盤に北陸人ブチギレのナレーションと共に始まる映画は、映画の奈落へとどっぷり落ち込んでいくのである。
台本だけでなく、後日談すら飲み込んでしまった化け物映画。
でもこの松方弘樹、かっこよいのよね〜
カニ食べ行こう、北陸。

以上、「今年見た映画で良かったやつ」でした。
今年はU-NEXTとAmazonで交互に映画を見まくったのである。
なんせ地獄の酷暑や早めの寒気に相変わらずの伝染病で引きこもり生活が長かった。
来年はオッペンハイマーありそうだし、映画館に行くかな。
それにしても、一貫性のない映画をよくもまあこれだけ見れるなあと我ながら感心である。
映画って本当に暇つぶしに最適ですね!
映画バンザイ!

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