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本当に快適な住まいを知る方法

一級建築士で、築48年の中古住宅をリノベーションして住んでいる鶴見哲也です。
今まで設計士として、また居住者としてリノベーションの体験談を綴ってきました。

私が実家でも親戚の家でもない中古住宅を購入し、リノベーションという選択ができたのには理由があります。
それは自分にとって本当に快適な住まいがどんなものか考える力があったからです。
今回は、その秘訣をお伝えします。

1.全ては選択肢であるということ

ローコスト住宅、建売、高性能な住宅、マンション、賃貸と家と呼ばれるものは沢山あります。
そこに新築、中古という選択肢もあります。
これら全ては、住まいというただの選択肢です。
高性能こそ最良で、ローコストで性能の低い住まいは悪みたいな声を聞くことがあります。
それは間違った指摘、または判断するには早いことだと思います。
住まいの良し悪しは、その家族の価値観という物差しで計らないとわかりません。
物差しになるのは理想の暮らし方であり、理想の生き方とも言えます。

2.理想の暮らし方はコストと時間の掛け方

数多ある住まい中から、自分たちの最善の選択をするために、まず理想の暮らし方を知らなければなりません。
理想の暮らし方と聞いてもイメージしにくいかもしれません。
家づくりを考えているのだから、デザインや性能の話とイメージされるかもしれませんが、それもまた選択肢です。
理想の暮らし方とは、何にコストや時間を掛けるのかということです。
こだわりの高性能で高級な住まいになってしまい、住宅ローンに生活が圧迫されて、日々我慢し続ける暮らしが幸せですか?
行きたい旅行、欲しいもの、子供の希望の習い事、これら全て我慢する暮らしが幸せですか?
夢の一戸建てを建てたけど、毎日の通勤片道1時間半の暮らしが幸せですか?
これら全ては、有限なお金と時間を何に掛けるかのバランスによって決まります。
どのバランスが自分たちに最適か知ることが、住まいを選ぶ物差しになります。

<例1>
年に1回は必ず家族で海外旅行に行きたいから、住まいのコストは徹底的に抑える。
<例2>
住まいは狭くても良いから都心部に住むために、土地にコストを掛けて、通勤や通学の時間を短くして、時間を有効活用する。
<例3>
職場からは遠いけど、高性能な暮らしができるぐらい安い土地でゆったり暮らせる。
<例4>
どうしても住みたい地域があるが更地はないので、中古住宅を買ってリノベーション して住む。
<例5>
親の関係で一緒に暮らす家族構成がまだ定まらないから、賃貸で様子をみる。

これらどれもその家族の価値観に合致するのであれば、最良の住まいのです。
これらの価値について整理するにあたって、家づくりにおいて何がお金で買えて、何がお金で買えないのか知っていることがヒントになります。

3.家づくりでお金で買えるもの、買えないもの

家づくりにおいて、お金で買えるものと買えないものがあります。

<お金で買えるもの>
・希望の土地
・耐震性能(構造)
・断熱性能
・機能性
・見た目(仕上げ)

<お金で買えないもの>
・人間関係(実家等との関係性)
・デザイン

そしてこれらによって実現できることが異なります。
特に注目すべきは、耐震、断熱、機能、デザインの4点で、これらが住宅会社を選ぶ基準になります。

<耐震性能>
自身に対して命を守ること

(耐震性能が高く倒壊は防げても、部屋の家具等が散らかって暮らし続けられない可能性はあります)

<断熱性能>
健康を守り、快適に暮らすこと

(風邪を引きにくい、ヒートショックが起きない)

<機能性>
家事の時短や使いやすさによるストレス軽減

<デザイン>
数字や言葉では表しにくい体感的、空間的な体験
意味がある、機能がある特別なこと

性能で表せられることは、お金を掛ければ手に入れられます。
ここで注目したいのは、明確にお金で買えないデザインです。
デザインとは、テレビの裏にタイルが貼ってあったり、吹き抜けがあったり、アンティークの家具が置いてあることではありません。
そこに意味や機能があり、数字では表しにくい体感的な魅力があることです。
デザインはそこにあるべき本質を考え、在るべきして在る状態をつくることだと思います。
そういう意味で住宅会社に比べて設計事務所はデザインにこだわっていると言われるのは、本質を考える力があることを表していることになります。
好きな仕上げ材料を使うだけならお金で買えますが、そこにある意味のような本質を捉えた行為はお金で買えません。
また性能は投資で、初期費用が高くてもランニングコストでお得になり、住宅ローンを借りる期間で考えるとお得な場合があります。
耐震性能を上げれば、保険料が安くなります。
耐震等級2を取れば30%、3を取れば50%オフになります。
等級を高くすればする程工事費は高くなりますが、保険料を考えると住宅ローンを返済する期間で考えると一部返ってくると考えられます。
断熱性能は光熱費に直結するので、よりお得感がわかりやすいかもしれません。
これらお金で買えるもの、買えないもの、それらが実現できることを知ることで、理想の暮らしを実現できるポイントになります。

4.まとめ

本当に快適な住まいを手に入れるためには、全ては単なる選択肢であると理解します。
その選択肢の中から最適な選択をするために、何にコストや時間をかけるか考え、それを物差しにして考えます。
その際、家づくりでよく出る要望の中で何がお金で買えて、何が買えないか知ることがポイントになります。
その中でデザインはそこにあるべき意味、本質を捉えた行為であり、見た目の好みやオシャレかどうかという視点ではないことに注意していただきたいです。
また性能においては初期費用が高くても、ランニングコストで回収可能な場合があり、住宅ローン完済までの長期的な視点で考えることも必要です。
以上のことから、これから家づくりを始める人は、価値観を築くことからはじめてみて下さい。
友人が家を建てたからとか、結婚し子供も産まれてライフイベントの順番がきたから等、主体性の無い理由で勢いに任せて家づくりに取り組むことはプロとしてオススメできません。

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