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参加の間口をひろげる、シンポジウムの裏側をふり返る

こんにちは。株式会社たがやすの反中(たんなか)です。

7月に「流域ってなんだ?わたしたちのくらしといのちをつなぐシンポジウム」を富山で開催しました。

参加いただいた方は総勢約130名。中学生以下のお子さんは約30名来てくださいました。そんな参加者の間には、関わりしろがあり、安心感が広がり、交流が生まれていました。

軸にしていたことは、『こんなシンポジウムみたことない!?』

大学の先生による講演、最新の科学的知見の共有がなされるシンポジウム。そこに含まれる情報は、川のこと、雨のこと、流域のこと、一人ひとりのくらしといのちに密接に関わっているものです。

どうしたら情報が欲しいひとに届きやすくなるだろう、一緒に考える場に入りやすくなるだろう。

わたしたちにとって、シンポジウムを開催することは初めてでした。場づくりをしているわたしたちが、事務局として大切にしていたこと、盛り込んだ要素、そこからうまれた場をふり返ってみます。

つくったことのない場をつくるため、入口を広げる場をつくるためのヒントになったら幸いです。


『こんなシンポジウムみたことない!?』で描いていたもの


このシンポジウムの目的は、流域治水に関わる科学的な知見を一般の方にも届けること、立場・役割に関わらず一緒に考えられる場をつくること。

これまでもわたしたちは、流域治水に関わるワークショップを重ねてきましたが、そこに参加してくださる方は、もともと川や防災に関わりのある方や関心のある方でした。

今回は、シンポジウムという形にすることで参加の関わりしろをさらに広げて、参加したことがない一般の方も参加できる形にしたい!という思いがありました。

そこで描いたのは、子供が走り回りながらでも実現するシンポジウム。

情報が欲しい方が気軽に参加しやすいように。親子連れも参加しやすいように。大学の先生方にとっても一般的ではない形に賛同いただいて、「こんなシンポジウムみたことない!?」だけど「行ってみたらとても有意義だった」「流域のことが行く前よりも知れた」「防災意識を持った」と感じてもらえるように、この軸で進めてきました。

実現するために大切にしたこと、行ったこと


<大切にしていたこと>

● 参加の仕方へのグラデーション・幅をつくること
● それぞれが心地よい過ごし方ができる場所をつくること
● 交流が生まれやすい空間をつくること
● わかりやすさと科学的に必要な情報を両立すること
● 目的のために、挑戦的なコンテンツも勇気をもっていれること
● 目的のために、この時間に必要だと思う要素/情報を柔軟に判断すること

具体的な実行面を挙げてみます。はじめてのシンポジウムで、人もお金も時間もリソースに限りがある中で、選択的に行っています。そのため、手放した部分も気づけなかった部分もあります。

【会場の設定とコンテンツ】
会場は、ひとつのひらけたスペースのなかで、前方に講演会場を設け、中央部にポスター展示、後方に体験/展示ブースを設けました。

会場全体像
中央~後方の様子


講演を聞きたい方は落ち着いて聞けることと子連れの方は子供が過ごしやすい場所でも耳を傾けられることをねらいとしました。後方には、椅子をところどころにおいて、必要な情報に触れられることそれぞれが心地よい過ごし方ができることの両立を目指しました。

実際に講演中には、後方でお子さんは走ったり楽しまれていましたが、講演の音声に支障はないように聞こえました。中央部にポスター展示を設けたことも、功を奏していたかもしれません。こちらは、すき間をあけてパネルを並べること(設営を行った学生スタッフの現地判断!)によって、隔たり感を抑制し、動線も確保しました。見聞きしたい場所の選択肢も増えていたように思います。

今回使用させていただいた富山市民プラザ2Fのアトリウム会場も、壁や天井に抜けがあり、開けていたこともとても良かったように思います。(ありがとうございました!)

【プログラム】
今回は土曜日の午後13時~16時の3時間で開催し、時間によってコンテンツを変えました。それによって、参加したいタイミングで参加しやすいオープンさを設けました。

また、講演、ポスター、避難グッズ、防災グッズの展示、流域クイズ、ジオラマの展示、グラフィックレコーディング、福祉マップ、交流会などコンテンツを多く用意したことによって、関心の幅を持たせられたように思います。



【チラシ】
今回は告知用にチラシを作成しました。デザインを(株)ワールドリー・デザインさんにお願いしました(素敵なチラシをありがとうございます!)

大切にしたことは、「流域」という要素は大切にしつつも、親しみやすさをもたせること。コンテンツに写真や画像をいれてわかりやすくする、文言の表現を一般の方にも伝わりやすくする、親子も含めた多世代の柔らかいイラストを散りばめる、具体的な会場のMAPやプログラムを入れて参加イメージを想像しやすくする。

チラシは富山市の美術館や博物館、県庁や市役所などに設置いただいたり、神通川流域付近の小学校周辺約3000戸に投函しました。実際にチラシを見て参加いただいた方は当日参加の内3割ほどいらっしゃいました。

【講演】
講演のみ現地とオンラインのハイブリットで行いました。現地参加は難しいかたにも、知りたい情報に触れられる機会を設けました。

内容は、講演者の配慮のもと、わかりやすさと科学的に必要な情報を両立することを念頭に作成されました。さらに、今回開催した10日ほど前に、富山県内では線状降水帯が発生し、ダムの緊急放流の措置や大雨被害が生じたことから、ニュース映像など実際の状況を盛り込み、より身近で、今このタイミングだからこそ大切で必要な内容に変更されていました。

講演は一般的に一方向であることが多いですが、講演前後に双方向の交流の機会を設けました。開始前には、2色の色紙を使用してどんなひとが同じ場所にいるかを交流しました。

講演後には、講演中に実施されたグラフィックレコーディングに感想シールを貼って、印象に残った内容のふり返りができるようにしました。


【展示ブース】

展示は流域周辺で活動されている方々に募集をかけ、有志でご参加いただきました。また、大学のブースも設け、学生がスタッフとして参加しました。みなさんが日頃から熱量を注がれている多様な活動や内容に触れられる機会が生まれていました。

今回は、設置可能な広さと備品のみ事務局で用意しました。展示内容は、写真や活動パンフレットの配置、VRシュミレーション、計算趣味レーションなどそれぞれでしたが、体験できるところに人が集まりやすい傾向にありました。

展示においても、直近の大雨のときの振り返り、知るべき情報を追加で用意してもらい、貼りだしました。


【親子向け】
今回は小学校低学年以下のお子さん連れを想定して用意を進めました。親も子も過ごしやすく、関心のある情報を受け取りやすいように以下の8つを用意をしました。

・キッズスペース(マット、落書きスペース)
・川に関わる絵本
・会場BINGOの配布
・スーパーボールすくい(BINGOを集めて挑戦可能)
・子供向け流域クイズ
・来場記念品、スーパーボールすくいの景品
・自宅での備蓄グッズの展示
・用水路に関わる情報展示

BINGOをもとに会場を回ることでコンテンツや情報に触れやすくなり、スーパーボールすくいがあることで小学生未満のお子さんも一緒に楽しめる様子がみられました。

【交流会】
ゆるやか交流会として、プログラムの後半に今日参加してみての気づきや流域や防災についてアイデアを交流する時間を設けました。

参加者数が読めないなかで、ひらけた場で交流会をすることには企画側も勇気がいりましたが、流域治水に大切な要素として共に考えること・つながることに結びつく内容として挑戦しました。

これまでのワークショップ以上に立場を越えた交流が生まれていたように思います。

生まれたこと

参加いただいた方は総勢約130名。中学生以下のお子さんは約30名来てくださいました。実際に思い描いていたような場を開催することができました。

そして今回のシンポジウムでは、関わりしろがあり、安心感が広がり、交流が生まれていました。それは結果的にできたことも意図してできたことも含まれます。

全てのロジスティクスが完璧ではないけれど、代わりに一人ひとりがその場にとって必要なことを主体的に判断して関わることで、場をみるひとの視点が増える。それぞれが気づきやすいことや得意なことで、心地よい過ごし方で関わる。

それらが場の安心感につながって、興味を持ってくださる方や困っている方への声かけから交流が生まれていたように思います。

やってみたからこそ気づくこと

特に気づきとなったことは、ここまでの活動の継続の上でできたのだということ。

今回は特に各大学から参加した学生スタッフの主体的な関りが、全体への活気とサポートの安心感、立場の多様性を生んでいるように見えました。また、有志の展示ブースのみなさんも初めての試みの中で参加することは簡単ではないように思います。

また、事務局や大学の運営側も一緒に場をつくることを重ねてきたからこそ、やってみよう!と挑戦できました。

これらは、ここまでのワークショップで顔を合わせ、ひざを突き合わせてともに考えること、そしてそれぞれが継続して活動を続けてきたことで生まれた「こんなシンポジウムみたことない!?」であり、「入口を広げて必要な情報に触れ、ともに考えられる場」だったのだと思います。


学生スタッフのみなさんと準備の様子


そしてもう1つ、やってみたからこそ気づいたこと。それは、わたしたちのくらしといのちを考えるとき、あらゆる方が参加しやすく情報を得るためには、同じコンテンツでも工夫の余地がたくさんあるということです。講演に字幕を付ける、日英対応をする、インクルーシブ防災や手話、点字…

科学的知見がくらしのなかで活かされるために、必要としている方へ届きやすくできるように、自分たちだけでできることには限りがあるかもしれないけれど、大切にしたい観点です。

今後のとりくみでも、ご一緒しましょう

今回は、はじめて流域治水の活動の間口を広げるためにシンポジウムというかたちに挑戦しました。今後も深める活動・広める活動ができたらと思います。こちらで情報を発信していきますので、ぜひ気軽に参加してください。


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