見出し画像

『パスポート』

passport
Charles Bukowski

パスポートの写真を撮りに行った
受付は30代後半の女で
その女の胸はドレスから今にも落ちてしまいそうだった
女はオレを部屋の奥に連れて行き
ライトの下に座らせた
「あなた興味深い素敵な顔をしてるのね、」女は言った
オレは女にアンタの胸こそ興味深くて素敵だと言いたかったが
それは言わなかった
「あなた作家なの?」女は書類に目を通しながら聞いた
「ああ」オレは認めた
女が先手を打ってきた
「今度はあなたの本を持ってきてくれる?」女は聞いた
「オレは商品は飾らないんだ、」オレは答える
女は次の手を打ってきた
「だいたいどういうものを書いてるの?」女は聞いた
「女についてだ」オレは認めた
「20ドルよ」女は言った
オレは女にカネを払った
「写真は3日後に出来上がるわ、」女は言った、「その時はあなたの本を持ってきてね」

俺はウェスタン大通りを歩いて下った
高速道路にかかる橋を渡る
防護フェンスは十分な高さではなかった
誰かが下の車線に落下する可能性もあった
オレはそのフェンスから距離をとって歩いた
パリには安全に着きたかった
パスポートの写真には
さんざんロクデモナイ文句を言われてきたからだ

この記事が参加している募集

海外文学のススメ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?