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『奇妙な男』

funny man Charles Bukowski

ミスター・ジェムザールは土曜日の午後に自宅でパーティーを開くのが好きだった
オレたちはいつも招待された
オレの3番目か4番目の妻だったと思うが、彼女はいつもパーティーに行きたがり、家に居続けるのが惨めになるまで彼女はオレにしつこくせがんだ
その日は彼女が勝った、オレたちはエコー・パークまで車を走らせ、丘の上に車を駐め、小さな灰色の家を見下ろした、先週の競馬の結果のように退屈そうな招待客たちが中庭に立っている、それでも彼女は彼らに会えるのを楽しみにしている
どうやらオレは彼女をパーティーから遠ざけ過ぎていた、彼女は田舎の娘で、正直で健やかで人々への愛情と楽しみで満ちていた(オレは印象的なダークブラウンの瞳の彼女とベッドの上でキャンディーバーを食べるのが好きだった)
オレたちはミスター・ジェムザールと招待客たちが陽光を浴びているところまで小道を下って行った
小さな灰色の家のそばには大きな窪みと放置された芝があった
誰もが何か奇妙な衝動やそこにいる何か神秘的な理由を抱きしめている(だが彼らの目を見つめていると彼らの頭の奥には疑いの影が見えてくる)
オレの田舎娘はみんなのことが気に入っていた、ジェムザールだけでなくチャック、ランディー、リラ、クリースフット(こいつは犬だ)
彼女は、たしか3番目か4番目の妻、はあっちに行ったりこっちに来たり、あのグループに入ったり、向こうのグループに入ったり、ワクワクするほど興味深い話しに熱中していた
オレは最低の味がするワインを飲んでいた
彼女が姿を消しているあいだオレはこっそり茂みの裏で吐いた
オレに探して欲しがっているのはわかっている
また吐いた、もう少し飲んだ、時間が過ぎるのを待ち、空中を通り過ぎるいくつかの質問に”そうだ”、”いや違うな”で答えた
それから彼女は姿を見せミスター・ジェムザールが彼女をベッドルームに連れていき彼の描いた絵を見せてくれたと言った
彼女は驚嘆していた、彼女は言った、だってすっごく上手なんだもん

すべての男には、オレは彼女に答えた、たぶん何かしらの才能がある、もしそいつを長く観察していればわかる
ミスター・ジーの才能は、オレは続けた、たぶん”すっごく上手な”絵なんだろう
彼女はそれに対して機嫌を悪くし、背中を向け、今にも倒壊しそうな木のフェンスに寄りかかっている2人組の男たちの方へ向かって行った
彼らは彼女に会えて嬉しそうだった

オレはキッチンに入っていき、戸棚を開け、栓を開けたばかりのウォッカを見つけた
グラスに3/4のウォッカを注ぎ、1/4の水を注ぐ
キッチンの流しにポールモールがあるのを見つけ1本抜き出し火を点ける
3番目か4番目の妻との結婚生活がもう終わっているのはオレにもわかっている
オレの嫉妬やねたみ他の多くのロクデモナイことが原因だった
「アンタに欠けてるのは自信よ」彼女は事あるごとにそう言った
オレにもそれはわかっているし、彼女がそれを知っていてオレは嬉しかった
グラスにもう1杯注ぎ中庭に出た
彼女はこっそりオレのことを見ていてオレがもう別のところへ行っていて、これまでのロクデモナイことが原因でもう彼女の元へは戻らないことを彼女もわかっていた
湿地から飛び立つマガモをボートの中で酔っ払ったハンターたちが撃ち落としやつらの犬が泳いてマガモを引っ張ってくる光景が頭の中をめぐりオレは心地良い気分だった
それでもまだ彼女はこっちに向かって来てオレを試す:

「もう帰りたいんでしょ?、やっと面白くなってきたところなのよ」
「ああそうだな」オレは言った、「でもここのパーティーはもっと長居してもいいくらいだ」
「私にとってでしょ?」彼女は聞いた
「オレたちにとってだ」オレは言った、やっとパーティーが退屈なものじゃなくなってきた
ミスター・ジェムザールがやって来てパーティーはどうだ?とオレに聞いた
ここのパーティーが気に入っているとオレはヤツに言った
「君は隠遁してると思っていたがね?」ヤツは言った
「ああそうだ」オレは言った

今オレは4番目か5番目の妻といる、彼女はパーティーが嫌いだ、それでも数多くの問題がオレたちにはある
ミスター・ジェムザールからパーティーの招待状はいまだに送られてくる
オレは憎悪も喜びもなくその招待状をゴミ箱に捨てる
時々3番目か4番目の妻が電話をかけてくる
泣きながら言う、俺のユーモアが恋しいと、珍しいことだった
あまりにも珍しいことだったからしばらく考え込んだ
オレと一緒にいるときに彼女が笑っている姿を思い出せなかった
他のやつらと一緒にいるときや
ミスター・ジェムザールのパーティーではよく笑っていたが





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