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『キツネのようにズル賢い』

crazy as a fox
Charles Bukowski

クリスマスシーズン
オレはまだ少年で
母親と2人でデパートにいた
母親はガラスケースの前で立ち止まり
オレもその前で立ち止まった
ガラスケースの中はおもちゃの兵士たちで溢れていて、
ライフルや銃剣を持った兵士たちもいて、
たくましい馬に乗った兵士たちもいる、
おもちゃの大砲やマジンガンをぶら下げた兵士たちもいた
有刺鉄線を張り巡らせた本物のような塹壕や飛行機や戦車さえあった
母親が聞いた「欲しいかい、ヘンリー?」
「いらない」オレは言った
オレは家が貧乏なのは知っていたしそれに母親にカネを使わせたくはなかった
だがオレはどうしようもなく兵士のおもちゃが欲しかった
色とりどりの軍服、様々なヘルメット、あらゆる姿勢で戦う兵士たち:行進、突撃、跪き、銃撃
将校がいて下士官がいて旗があり突き上げられた剣があった、、、

「本当に欲しくないのかい、ヘンリー?」
「いらない」オレは言った

オレたちは外に出て別のデパートに行った
母親はオレに靴下と下着を買った
それらは鮮やかな包装紙に包まれクリスマスツリーの下に置かれた

その後オレは自分を責めた
その年のクリスマスは悲惨なものだった
だが戦争がついにやってきた、
戦争がもたらすものとして,
オレは徴収され軍の精神科医に診断され
軍人としては不適切だと告げられる
その時オレは自分の奇妙な狂気性を認識し受け入れとても喜ばしかった

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