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【こえ #27】「第二の声」を習得する活動の裏方として組織を運営するのが副会長の…

石橋 賢一さん


 前回”声を失って#26”でご紹介した白井久美子さんが会長を務める『京葉喉友会』。千葉県からの委託を受けて、喉頭がんや下咽頭・食道がんなどで声帯を失くされた方々が食道発声法や電気式人工喉頭(EL)発声法による「第二の声」を習得する活動を行っている。その会の裏方として組織を運営するのが副会長の石橋さんだ。


 『京葉喉友会』に入会して20年。入会時はお仕事をされていた関係で参加は断続的になったが、会の移り変わりを見てきた。

 「入会時の会員番号は200何番とかだったんだよ、多分会員は220人ぐらいいたんじゃないかな」と振り返る。そんな会員数は現在、高齢化による退出や、最近のコロナ禍の影響も経て、3分の1程度にまで減った。退会の連絡もなく、それを確認するにも皆がPCスマホを操れるわけでもないことから「手紙を郵送したり、地道に連絡を取っている」。

 「会員もさることながら、指導者が足りない」と続けておっしゃった。「以前は17~18人の指導者がいたのに、今は9人。クラスも上級と中級を一つにまとめて指導せざるを得ない」など、工夫して運営されている。


 今時っぽく「リモート指導とか難しいのですか?」とこちらから尋ねると、「(今の段階では)難しいかもしれないね」と返ってきた。特に発声訓練の初級の段階では、例え発“音”はできても発“声”にはなっていない「誤発声」という状態に陥ってしまうケースがあるのだそう。これを続けてしまうと、顔の見えない電話ではほとんど通じないなど、正しい発“声”を身につけられなくなってしまう。それを修正するには「指導員が対面で見て、自分でのどを触ってもらって振動している部分などを確認してもらいながら、教えてあげる」ことが必要になる。もしかしたら高齢の方々のITリテラシーの問題もあるかもしれないが、こうした当事者の集まりや指導の機会ができるだけ持続するよう、テクノロジーがサポートできる余地があればと感じた。


 石橋さんは長く会社勤めをされていてITリテラシーも高いせいか、副会長でありつつも「会には事務、会計、事業、発声指導、、といくつか組織があるんだけど、組織図に俺の名前ばっかりなんだよ」と苦笑いされた。『京葉喉友会』の総会も段取りから資料作成まで多くを担われた。しまいには、総会前に体調を崩された白井会長に代わり「開会宣言まで代読した」。

 なるほど。初めて『京葉喉友会』にお伺いしたこの日、会員の皆さんを代わる代わるスムーズに紹介してくれ、途中で休憩となれば「コーヒー?お茶?温かいの?冷たいの?」と4つの缶を差し出してくれ、会議室の利用時間の制限にも目配せし、しまいには「お客さんだから」とお昼までご馳走してくれたのは、すべて石橋さんだった。私こそ目配せいただき、活動を支えて頂いていた。


 群馬県で喉頭(声帯)を摘出した方が発声訓練に集う『群鈴会』にお伺いした際も会員や指導者の減少に悩んでおられた。他の地方の当事者会でも同様の悩みを抱えているだろう。こうした会の存続には石橋さんのような方がおられるかどうかが左右する。

 まずこの日の石橋さんのご配慮に深く感謝しつつ、どうしたら各地でこうした発声の訓練や指導の機会が続いていくことができるのか石橋さんを思い出しながら考えていきたい。


▷ 京葉喉友会


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