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【こころ #23】目に見えない障害を平等に扱う会社

木内 健人さん


 東京都では、知的障害者(児)が各種のサービス(手当、制度等)を受けるために、知能測定値、社会性、日常の基本生活などを、年齢に応じて総合的に判断し、1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)に区分される。木内さんは、4度に当たる。


 『となりのトトロ』みたいと言ったら、ご本人に怒られるだろうか。木内さんは、すごく大らかで周囲を安心させる雰囲気を持ち、コミュニケーションも極めてスムーズで、何か頼りたくなる感じを与える印象だ。だが、木内さんが入居するグループホームを運営する『社会福祉法人 藍』の担当の方が「(木内さんは)大らかに見えても、実は細かいことが色々と気になり、一つひとつ不安になりやすい。」と教えてくれた。


 木内さんは現在、大手企業の特例子会社※に所属して農業に従事している。ニコニコして「大根、ちょっと失敗したけど玉ねぎ、スイスチャード、ニンニク、下仁田ネギとか、職員さんや指導員さんに相談しながら年間スケジュールを立てて作っています」と教えてくれた。

 「今の会社は平等に扱ってくれる」。入社のタイミングで、自分自身のことについて「(会社側から)どういうことに注意したらいいか?こういった状況が起きたらどう対応したらいいか?など、ちゃんと聞いてくれた」。社員も混じった社内の交流会でも「障害のことをみんなに公表してもいいか?確認してくれる」。

 「昇給したことも嬉しいし、今では落ち着いてマイペースに働けて、体調悪ければ気軽に休ませてもらえるし、以前は休みたいと言ったら悪いかと思って自分がボシャンとなったこともある」と沈む仕草を交えて教えてくれた。


 そうやって今の会社の良さを話す背景には、それまでの就労での経験が影響している。

 最初に就職した特例子会社は電力会社だった。働いている最中に3.11が起きた。その日を境に、周りが慌ただしくなり、外に出れば会社名を隠すこともあった。「このままいて大丈夫なのか、自分も不安になっちゃって、それで体調も崩した」。

 次の会社では、高架下にある窓もない地下のオフィスに無遅刻無欠勤で通い続けた。理由は「どこかに書いてあったかもしれないけれど、有給休暇の取り方がわからなかったから」。木内さんは話すコミュニケーションは問題ないが、ペーパーでポンと渡されても読むのが苦手で理解できない。「書いてあったでしょと言われても」。目に見えない障害ゆえに、“できるはず”や“理解できているはず”と誤解されやすい。


 そうした経験を経て、「(自分のような)スタッフ中心に考えてくれる」今の職場では薬のコントロールも併せて「てんかん※の発作の頻度が減った」。今の仕事を「できるだけ長く続けたい」とも考えている。

 目標は「結婚してそこそこの家に住むこと」。木内さんは料理が得意でお弁当もつくるし、掃除となれば重曹を使って汚れを落とすほどだ。それに加えて、大らかで頼りたくなる男性なのだから、目標の達成はそう遠くないことだろう。

※特例子会社
 障害者の雇用に特別な配慮を行い、所定の要件を満たすことで厚生労働大臣の認可を受けて親会社の一事業所とみなされている子会社

※てんかん
 脳が一時的に過剰に興奮することによって、意識を失ったりけいれんが生じたりする“てんかん発作”を繰り返し引き起こす病気



▷ 社会福祉法人 藍




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