見出し画像

【め #2】昔は道路の白線は見えていたが、今は…

吉泉 豊晴さん(後編)


前編から続く)

 「昔は道路の白線は見えていたが、今は光もまったくわからない」。そんな環境での課題をお聞きすると、「移動と読み書き」と明確に返ってきた。

 現在、歩行を案内してくれるアプリは色々とあるが、GPSはどうしても誤差があるため「建物の入口まで正確に案内してくれるわけではない」。そのため、スマホのビデオ通話の向こう側で別の人が自分の目の代わりになってくれる『Be My Eyes』というアプリも利用されている。

 移動を解除してくれるガイドヘルパーの派遣もあるが、「東京のような大都会であればヘルパー自体が多いが、地方では数自体が少ない故に頼んでも対応してもらえない話も聞く」。また、長時間ずっとではなく隙間時間で助けてほしいケースも多いそうで、前述のアプリのような「リモート支援には大きな可能性を感じている」と教えてくれた。


 リモート支援の可能性は、読み書きの面で一層高まる。普段大量に届く郵便物の開封の要否や中身の確認はもちろん、特に役所からの書類や間違えてはいけない数字など「(OCRの精度も高まっているが)肉眼でサポートしてくれた方が安心」。

 吉泉さんから、障害や病気、介護など距離や身体的問題によって行きたいところに行けない人のための分身ロボット「Orihime」を家庭のみならず職場でも使えないかという提案が出た。「他の困難のある方に成り代わるロボットに、視覚障害者をサポートしてもらいたい」。スマホで完結しないロボットの存在感が重要だそうで、興味深かった。


 インターネットが普及してデジタル化が進んで紙は消えるなんて言うと、取り残される人の話を想像しがちだが、視覚障害者にとっては「本当にありがたいこと」だそう。「晴眼者(注:視覚に障害のない人のこと)と電子データのやり取りが増えるほど(音声読み上げ機能を使った)読み書きがスムーズになる」。

 デジタル化自体はありがたい一方で、その方法には「視覚障害者にとって使いづらいものもある」。例えば、セキュリティのパズル認証。「昔はIDとパスワードがあればできたものが、画像認識が入ってしまって、昔より不便になった」と周囲は口をそろえるそう。手間をかければできないことはないが、対応時間も限られて「本当に困っている」。

 また、急速に街に広がる店舗のセルフレジや、ATMや券売機やロッカーのタッチパネル。仮に代わりに操作してくれる人がいても問題は終わらない。例えば、銀行でお金の振込や引き出しをしようとすると、銀行員の方が途中まで代わりに入力してくれるが、最後に「暗証番号だけはできません。誰か信頼できる方と来られてください。」となる。「一人暮らしの障害者には特に大変」と苦笑いされた。

 同じタッチパネルでも、画面を読み上げてくれる『Voice Over』を実装するiPhoneや、タッチパネル以外にテンキーボードや受話器での音声案内も備えてくれる郵便局などのケースは「まだ例外的」なのが現状だ。


 吉泉さんのお話をお聞きすると、障害者を取り巻く環境側からできることこそ、まだまだありそうだ。


▷ 日本視覚障害者団体連合


▷ Be My Eyes


▷ OriHime


▷ VoiceOver(iPhone)



⭐ コミュニティメンバー大募集

 Inclusive Hubでは高齢・障害分野の課題を正しく捉え、その課題解決に取り組むための当事者及び研究者や開発者などの支援者、取り組みにご共感いただいた応援者からなるコミュニティを運営しており、ご参加いただける方を募集しています。


Inclusive Hub とは

▷  公式ライン
▷  X (Twitter)
▷  Inclusive Hub


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?