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日本橋に謎のビルを持つ男。(実は借りてる)-④ロマンの癖がすごい編-

日本橋に謎のビルを持つ男。(実は借りてる)
a.k.a

TRAVELING ELEPHANT株式会社代表
梁 剛三 (りょう こうぞう) でございます。

四回に渡って「THE A.I.R BUILDINGの始まり」の話をさせていただきましたが、これで最後。最初から読んでくださった方、本当にありがとうございます。皆さんの人生の少しの時間を頂いた事を忘れずに精一杯エアビルを盛り立てて行きたいと思います!

それじゃ早速いってみよう!

アーティストのアパートで遊ぶ

当初日本橋にあるビンテービルを音楽ホステルにする構想が、旅館業法的に難しいと判断し、じゃあ何をやりたいかと悩んだ末に辿り着いた答えが、

ARTIST IN RESIDENCE (アーティストインレジデンス、以下AIR)

という大それたアイデアでした。

何が大それているかと申しますと、普通AIRっていうのはナントカ財団とか、美術協会的なところ、あとはNPOや成功したアーティストが運営するものでして、アート界で何の影響力もない30代BMI27の関西人のオッさんがやるものではないんですよね。(今年こそはBMI20になるで!)

だってどう考えても儲からないし、面倒くさい。こんな事思いついても普通絶対手を出しちゃいけないコンセプトなんです。良いですか、皆さん。大切な事なんでもう一度言います。手を出しちゃいけないんですよー。出すなよ、出すなよ、絶対手を出すなよ〜。(チラッ)……オイ出せよ!(引用:上島竜兵先生)
言うてやらしてもらってますけども。

まぁとにかくやってみようと決めてビルを借りて設計に入り、二階部分にアーティストレジデンスというあまり収益性の良くない機能をぶち込んだのでありました。

そんな無謀な事をやろうと思ったのにはいくつか理由はありますが、一番大きな動機は、僕自身が出来上がったアート作品よりも、「アーティスト」自身と、彼らの作品の制作過程にとても興味があったからです。

ニューヨークに住んでいた時、たまにペインターやジャズミージシャンの友人のアパートに遊びに行くときのちょっとドキドキする感じがとても好きだったのを覚えています。書きかけの絵画が乱暴に置かれていたり、まだ未完成の曲のテーマが書かれた譜面があったり。僕たちとお酒飲んでる時は勿論オフなんですが、確かにここで作品が生まれているという匂いみたいなものが、ただのハイネケンで乾杯してるだけのリビングルームを、特別な世界に迷い込んだような気にさせてくれていたのをホント昨日のように覚えています。あ、一つだけ嘘つきました。僕はずっとジンジャエール飲んでました。お酒あんまり飲めないっす。カッコつけてしまいました。

こんなエピソード紹介するとエアビルを所謂芸術家の溜まり場にしたいんだと誤解されがちですが、そんな排他的な雰囲気は一切ありません。(神戸のおっちゃんがやってる店やで。誰でも上流華夢やで!)

そもそも僕たちにとってアーティストの定義はもう少し広くて、

「世の中に新しい価値を提供する人」

です。

そんなん何でもありやん!と思われる方もいらっしゃると思いますが、
はい、仰る通りなんでもありです。

ミュージシャン、陶芸家、シェフ、デザイナー、ブロガー、プログラマー、アパレルブランド、セックストイブランド...。(え!)

だって芸術家だけが新しいことやってるわけじゃないでしょ?ビジネスや食、コミュニケーション(やセックス! )の世界に新たな風を吹き込んでくれるような人の存在も、現代を生きる僕たちにはバンクシーと同じくらいのワクワクさせてくれる存在だと思うのでジャンルの壁はありません。

もちろん実際には場所を使ってもらう代わりに共同でイベントを開催したり、作品を販売したりするので、エアビルに共感して一緒に何かやろうと積極的にレジデントアーティストになりたいとオファーしてくれる時点で、かなり適正なフィルターがかかっています。今のところは僕のテイストもあって宿泊するのはミュージシャンが多いですが、展示会利用ではシューズデザイナーやフォトグラファー、Iot系の会社など色んなジャンルの方に使ってもらっています。

とにかく何かが生まれるワクワク感をみんなで共有して、その誕生を祝福したい。ビジネスとして続けていく上でいろんなことをケアしないといけないんだけど、根底にはそんな中学2年生的発想が横たわっているのです。

はいそうです。青いです。 

ちなみにこちらは創業前に思い描いていたイメージのメモ。

毎月最終週、2F LOFTにアーティストが滞在する。今回はバルセロナからきたフォトグラファー。1Fのカフェには彼の作品が数点展示されていて、カフェを利用しにきただけの人も興味を持って、スタッフからレセプションのインビテーションカードを受け取る。レセプションパーティではB1 BASEMENTも使って、友人アーティストのライブもあり、屋上では隣のビルの壁にプロジェクションマッピングで作品を投影し、それを見ながらお酒片手に談笑している。そんな風にビル一棟でレジデントアーティストを表現したい。滞在中にエアビルの空気を吸い込んだ作品が産まれたりしたら最高。そんな生のクリエイティビティが渦巻いていて、コアファンもよく分からないけど面白そうだから集まってくれる人も、アーティストの家に遊びに来るようにお店に来てくれて、そこに交流がうまれ、やがてコミュニティーになっていく。

はいそうです。限りなく透明に近いブルーです。

こんな変な場を東京のビジネス街のど真ん中で実現しようとしてるんだから、かなりの確率で僕は大馬鹿ブルーだと思います。それは認めます。頭脳偏差値も経営偏差値も38くらいだと本当に思います。

でもね、ちょっとだけ思い出してみて欲しいんです。

会社に入る前、結婚する前、家の仕事を継ぐ前、みなさんも昔は音楽でも文学でも料理でも、本気で夢中になったことある人多いと思うんですよね。

「スーツのジャケットを脱いだら、自分もアーティスト」みたいな。

少しでもその感覚を刺激出来るような場所であればだんだんと共感してくれる人が増えていくるはずだと考えてやってきたし、実際に2年たった今では素敵な仲間がふえました。

皆さんの青さを感じたい。今年はこうやって文章でも発信していくので、もっといろんな人の文化的ジャケット脱がせたい文化的痴漢になりたいんや!(OMG!Chikan-Akan!)

なんの因果かこれを読んでくれているあなたも是非面白い事一緒にやりましょう!ここまで読んでくれている時点であなたは僕の家族か、隠れアーティスト(無自覚型)かのどちらかなはずなので!

**The Story of Gilles **

さてそんな風にAIRというコンセプトが固まったら、またここで物語の出番です。はい皆さん、復習ですよ。ストーリーファーストの空間作りってやつですね。第2回参照してください。テストにでますよ。

エアビルを設計してくれたのは一人ではありません。関わってくれた皆さん本当に素敵な感性を持っている人達で、当時でも築60年のヴィンテージビルの潜在的な美しさを引き出してくれました。

1F CAFEは某有名建築事務所の偉い人らしいスペイン出身のハビエルとパートナーでメンターとして、ふわふわしていた僕の構想を形にしてくれた山崎さん。2F LOFTは武蔵美出身の几帳面で丁寧な仕事をする若い大工のさん。3F BOX OFFICEは素晴らしい鞄ブランドを代表的に取り締まる沼田さん。そして自身もB1 MUSIC LAB部分。他にもたくさんの人に備品や設備の選定なんかに関わっていただき、自分の感性だけでは成し得なかった素晴らしい空間が出来たと思っています。

たくさんのプロフェッショナルに関わっていただきながらも目指していたのは各フロアに異なる機能とデザインがありながらも、違和感を感じない空間づくり。そのために必要だったのが、このビルから想起されたストーリーを文章にして、関わってくれる皆さんと共有することでした。

ここで僕は今までairbnbの時に使ってたやり方、ペルソナ設定して特徴を箇条書きするという方法を一歩超えて、ショートショートくらいの小説にしてみました!

文章なんてFacebookでしか書いたことないのに。なんの作法も知らないのに。ああ、無謀。

それを…ここに…載せておきます…。

めちゃくちゃ恥ずかしいですが、今年は恥という感情を捨てて発信すると決心したので。皆さんお願いだからプリントアウトして朝学校の黒板に貼ったりしないでね。

それではリョウ@エアビルさんで、The Story of Gilles Part.1です。
張り切ってどうぞ!

『もしかすると彼女はロバートジョンソンが魂を差し出した悪魔なのかもしれない。』そんな荒唐無稽なジョークを口にするほど彼は深く恋に落ちていた。『まるで巨大な竜巻に飲まれた象でも見ているような気分だよ』と生まれて初めて経験する感情をなんとか言語にしてみようとするのたが、ステージ上での流麗かつウィットに富んだ演奏とは違い、そこに感心するような表現は何1つなかった。そもそも言葉にすることになんの意味もない。人が人を愛した、というだけのことだ。しかし考えてみれば、その単純な現象をぼくたちは幾千の言葉にしたり、音色に変えて伝達したり、そこに経済までもが生まれているのだからおかしなものだ。 彼にとってアジア系の女は初めてというわけではなかった。彼の奏でるトランペットが生み出す独特のスリリングな音色は、人種を問わず女性をうっとりさせる。JAZZ仲間たちから”哀しみの恋人たち”と揶揄された取り巻きたちがいつも彼の楽屋にいたほどだった。しかしレイコに出会って以来、彼はすっかりそんな情事には興味を失ってしまった。 ただ1人の女性を愛するという”至上の愛”が、すっかり彼の生きる目的になり、それは音楽家としての在り方をも変えてしまった。正確無比は音色を複雑なドラムパターンの隙間に落とし込んでいくことに全神経を注いでいた自身の演奏スタイルも、もう以前のように興味を持てなくなってしまった。今はただ自分の奥深くから目を覚ました得体の知れない感情を空気の振動に変えて世界へ伝達し、それを自分自身も追体験的に理解しようとすることにしか興味を持てなくなったしまったのだった。 レイコがニューヨークに滞在していた期間は半年ほどで、彼がSOHOのアパートで彼女と暮らしたのは最後の2ヶ月程度でしかなかったが、彼女がニューヨークを去った後、彼女のことを想わない日は1日としてなかった。しかしちょうどその前の年あたりから数々の有名バンドからも声がかかり始め、ニューヨークでジャズマンとしての成功を掴もうとしていた彼にとって、日々のショウに集中することこそが何より大切なことだった。僕も時折彼の演奏を見るためにSmokesに足を運んでいたので、彼の人気が日に日に大きくなっているのを感じていた。しかし一方で、レイコにとっては異国の地で一人彼の帰りを待つのがルーティンになってしまい、日本での華やかな生活が恋しくなるのに長くはかからなかった。ジャイルスが独立記念日を祝う盛大なパーティーでの演奏を終えてアパートに帰った時には、もう彼女のいた痕跡は何もかもなくなっていた。しばらくの間は何もなかったかのように、彼はタバコに火をつけ、いつものようにレコードをかけようとしたが、今の状況に適切なナンバーは何一つ思いつかなかった。 彼が唯一の日本人の友達である僕に、東京行きの決意を告白してきたのはクリスマスムードが街を覆っていたとても寒い日だった。 空港へ向かう朝、ジャイルズは僕のアパートにしばしの別れを言うため立ち寄った。思い出話のほとんどはジャズのレコードの話か、お気に入りのバーの話だったが、空港へ向かう時間が近くなるにつれて、彼はレイコについて話し始めた。東京にいる彼女と連絡を取り合っていること、レイコの父親が所有する元々製薬会社だった空きビルに2人で住む予定でいること。彼が何か核心的な事を避けて話しているであろう事はすぐに感じ取れたが、僕はそれについて何も聞かなかった。僕が何を言ったところで彼の決意は変わらなかっただろうし、彼の新しい旅立ちを手垢のついた”常識的な意見”で汚したりはしたくなかった。 ぼくは「最後に少しだけ君の演奏が聴きたいんだが、お願い出来るかな」と伝えると、彼は少し黙ったあと、何も言わずにケースから愛用しているトランペットを取り出した。 その時の音色を僕は未だに忘れる事が出来ない。それはまるでレイコへの賛美と、彼自身の中の混沌とした感情が記憶となって僕の身体の中に直接書き込まれるような不思議な感覚だった。後にも先にも僕はあの時のような経験をしたことはない。 演奏が終わると彼は、簡単な別れの言葉だけを告げて、タクシーに乗り込んでいった。しかし部屋にはまだ誰かが居るような気配が残っていた。僕は「神のご加護を」と呟いたあと、何をしていいのか分からずラジオをつけた。ディスクジョッキーはマイルスデイビスの出たばかりのアルバム、Bitches Brewをわけもわからず大絶賛していた。

すみません、はい、死にます。明日死にますのでそんな目で見ないでください。あぁ、神様、仏様、村上春樹さま、助けて。

ゴホンッ。ンン。まあとにかくこんな風にストーリーがすると、自分じゃなくてこのジャイルスなる人物がオーナーだと思えてくるわけです。このストーリーには続きがあってまだ出てきてないんですが、東京に来たジャイルスとレイコの愛の巣が今のエアビルになる訳です。まぁ2人はずっと一緒にはいられないのでちょっと悲しいラブストーリーなんですが。

恥ずかしいの向こう側

でも音楽ラブストーリがバックグラウンドにある店なんてどうですか?
NOWくない。うん、全然NOWくないよ。でもロマンあるやんか!
ロマンでビジネス(お店)やってるクレイジーがいてもいいじゃない!

ハッ!俺は誰に言い訳してるんや。すみませんまたもや取り乱しました。

ほんと恥の多い生涯を送ってきました。

そしてこれからも恥の多い生涯を送ります!

すべてはロマンのためですよ。

平日の夜はバーに立っていることが多いので、ジャケットを脱いだみなさんの青いストーリーを聞かせてもらえる日を楽しみにしております。

B.BLUE。(この瞬間また恥が一つ増えました。)

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。これからもエアビルのこと、音楽のこと、場所作りのことなど沢山発信していきたいと思っているので、どうぞ末永くお付き合い頂ければ幸いです。

ほなまた!


THE A.I.R BUILDING
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【場所】東京都中央区日本橋本町3-2-8 THE A.I.R BUILDING
【アクセス】銀座線「三越前駅」A9,A10出口から徒歩3分 / 総武線「新日本橋駅」6番出口から徒歩1分山手線「神田駅」東口から徒歩7分/日比谷線「小伝馬町駅」から徒歩7分 【営業時間】月ー金 11:00-23:00  土日祝 11:00-18:00

日本橋にある築60年のオフィスビルを、「Gilles(ジャイルス)というNY出身の架空のジャズミュージシャンが1970年代に住んでいた。」というストーリーを元にリノベーション。各フロアは特定の機能を持ちつつ、シーンに応じて様々な用途に変化する流動性を持つ。                B1 Music lab 1F Cafe/Bar 2F Artist Residence 3F Share Office 4F REAL ESTATE 5F Rooftop








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