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「FAXが届いたらお電話ください」が丁寧な対応だと思ってしまうと、致命的な業務フローの誤りに気がつかない

「日本ではどうして今でもFAXが使われまくっているのか」という疑問は、このところやっと共有されるようになってきたように思えますが、実はそうでもないことが、このコロナ禍で私にも良くわかりました。ほとんどの人は、まだFAXが好きなんです。東京都がコロナ感染者をFAXで集計していることを批判している人の方が少数派なんです、多分。
SlackとかTeamsとか使っているのは世の中の2リットル中の5デシリットルくらいの人たちで、ほとんどの人はメールすら使いたくないんです。FAXと郵便が大好きなんです。
ということで、このたび「Eureka!エウレカ!」という知の興奮とはほど遠い、「わかりましたよ……」という諦めの知見を得たのですが、知見は知見として記録に留めるため、これから何回か、FAXを利用した業務のあれこれについて書こうと思います。

電話を受けてFAXを送るというタスク

会計部門で仕事をしているときに、お客様からの支払い内訳確認に対応するという業務がありました。
お客様からの電話を受けて会計システムで検索し、結果を口頭またはFAXで伝えるという業務です。配属されたばかりの私は、あまりに馬鹿馬鹿しすぎて卒倒しそうになったのですが、新参者だったので、とりあえず何回かは、おとなしく前例通りに事務処理をしました。流れを図解するとこんな感じです。

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うん。困ってしまいますね。
まず、業務フローの中に致命的なエラーがあります。
もう一つ、顧客に余計な手間をかけさせています。これもやってはいけないことです。
そして、これらは同じ一つの手順から発生しています。

お客様が目的を達成した後にそれ以上の行動を要求してはいけない

致命的なエラーは、「届いたらお電話ください」です。
「届いたらお電話ください」だと、届かなかった場合は電話は来ないんです。この業務フロー、本質的には届いたかどうかはどうでもいいんです。「届かなかった場合」のみ、知る必要があるんです。
大抵の方は、「そうか」って肯いてくれます。
お客様の目的は、支払いの明細FAXを受け取ること。
それが達成されたかどうか確認する方法は、「①届いたという連絡をもらう」ではなく、「②届かなかったら連絡をもらう」なんです。
しつこく解説しますと、①の場合は、既に「明細のFAXを受け取る」という目的を果たしたお客様に「電話をかける」という余計な手間をかけさせている上に、「届かなかった場合にそのことがわからない」という致命的な欠陥があります。
②の場合は、目的を達成したお客様はもうそれ以上何もする必要は無く、目的を達成できなかった場合だけ「届かないんだけど」という電話をかけることで目的を達成できるようになるわけです。
説明があればすぐにわかりますよね。でもこれ、説明されないとわからない人がたくさんいます。さらに、いわれてもわからない人が当時の同僚3人中2人いました。
しかも、その2人の内の1人は、FAXを送り忘れたが、お客様には「届いたら連絡ください」といっていたために連絡がなく、半日、FAXが届かなかったことがわからなかったというミスをした当人です。
そのミスのすぐ後に説明したにもかかわらず、彼は「届いた連絡はいつももらってるんですよ!」と叫びましたからね……。もう暗澹たる気持ち……しかも、直接指摘すると彼は反発するだろうから、わざわざ私がこの業務に対応する機会を待って、さらに、お客様からの「届きました」連絡があった後で「『届いた場合はご連絡不要です』っていってるのに、どうしてわざわざ電話してくるのかなあ」という呟きから始めましたから……。それでも叫ばれるこの悲しみ。伝えるって本当に難しい。
まあ、それは過去のこととして忘れて前を向くとして、より望ましいフローは下図のようになります。

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自分が丁寧な対応だと思っていることは、相手にとっては迷惑なだけかもしれない

ただ、これをやっても、長年の習慣からか「FAX届きました」と連絡してくるお客様が後を絶ちませんでした。電話いらないんですけど……と密かに思っていました。受ける方の手間も時間もかかるわけですから。内容のない電話は無意味を超えて迷惑なんです。肝に銘じなければ! 私、寂しくて無意味な連絡しがちです……ごめんなさい。
自分が丁寧な対応だと思っていることが相手の迷惑になっていることって、意外とあるものです。大体そういうことって気がつかなくて、気付いたときには穴があったら入りたい気持ちどころか思い出すたびに叫びたくなることが定番なので、これからもなるべく気をつけて生きようと思います。
中には、「今まで届いたっていう連絡していたのに、しなくていいって、そんな雑な対応されたこと今までないです!」とか怒り出した人までいましたからね……。その人には、「届いた場合は、お電話をかけていただくというお手数をおかけするのは申し訳ないので、ご連絡不要とご案内させていただきました。ただ、届かなかった場合は、お手数ですが、ご連絡をいただかないと届かなかったことがわからないので、ご連絡をいただけますか」とお話ししたところ、「ああ」とか「うう」とかもごもご言っていました。きっとあの人の中でもちょっとした黒歴史になったのではないかと思います。みんな、気をつけよう! 私も気をつけます!

本来は人間がやる必要の無い仕事

いろいろ書いてきましたが、本当の本当は、こんな業務は人間がやる必要の無いことですよね。WEBで検索出来るようにしておけばいいわけです。
日に10件あるか無いかだったので、私以外の人間は誰も業務を改善しようなどという気は無く、10年1日のごとく無駄な時間を使っていました。
でも、ウィズコロナ、アフターコロナの世界では、こういう無駄もなくしていかないといけないですよね。FAXの送受信も事務所にいないと出来ませんからね。
インターネットファックスを使えばリモートワークでも大丈夫!と思う人、インターネット使うならFAXじゃなくていいよね?
もうやめていきましょうよ、FAX。紙もトナーももったいないですし。
FAX愛用の方に言わせると、「紙をスキャンしてメールに添付するより、FAXで送った方がはやい」そうですが、そもそもなぜ紙に印刷したものをスキャンしなければならないのか?
そこは日本のハンコ文化も絡んでくるようですので、また別の回で。
それでは、また。

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