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神保町の蕎麦屋たかやで、赤ふんについて知った日

2月某日。職場の人とランチをする予定があった。場所は神保町の蕎麦屋、たかや。大きすぎず小さすぎない店内は居心地が良い。夜利用はしたことがあったが昼に利用するのは初めてだった。前日に食べログを確認すると、現在昼営業は予約のみ受け付けているとのこと。恐る恐る電話をし、「明日のお昼4名でお願いしたいのですが」と伝えると、すんなり良いですよ、とのこと。良かった。
実際当日は我々4名で貸し切り状態だった。他にお客さんがいなくてもお店を開けてくれるなんて、ありがたい限りである。店員さん一人と、我々4名だけで、なんだか芸能人の密会をしているような気持ちにもなり、一石二鳥な気持ちが味わうことができた。

2月というのに気温は温かく、冷たいものでも食べたい気分だったので、蕎麦屋というセレクトは正解だった。4名中2名はおろし納豆そばを選択し、私の目の前に座っていた上司は3色そばをセレクトした。くるみそばか3色そばかで決めかねていた私は、上司につられて3色そばをセレクトした。すると上司が、「君がどういう人かわかったよ」とにやにやしている。なんだろうと思っていると、「おろし納豆が2名、二人でチームを組んだと考えたんだよね。そこで僕とチームを組んでくれようとして、3色そばにしたんでしょ。君はつまりバランサーだねえ」と上司がさも性格見抜いちゃった、といたずら顔でこちらを見て言った。ううーん、あっているようなあっていないような。確かに昔からそういうところがあるかもしれない。もちろん、絶対これが食べたい、と目を奪われてしまうメニューがあった場合、他の皆が同じメニューを選んでいても自分だけ他のメニューを頼むことがある。一方、今回のように、どちらか決めかねている場合に、他の人に合わせるということはちょくちょく発生する。例えばメニュー選びが2:1:1に別れてしまった場合。自分が仮に1を選び、他の2や1のほうがおいしそうなメニューだった場合、「あれにしとけばよかった」と悔しい思いをしてしまうので、それなら2:2にして、たとえあんまりなメニューだったとしても、自分の食べている味について感想を共有しあえるメンバーがいるからまあ良いか、という気持ちになるのだ。そんなわけで、往々にして今回のような、図らずもチームを組むようなことが発生する。ある種面倒くさい性格なのだと思う。

届いた3色そばは正解だった。2倍盛りでも十分に食べることができるくらい、かわいい量ではあったが、それを除けば最高だった。ゆずを練りこんだそば、細麺のそば、太麺のそば。そのどれもがおいしく、丁寧に作られている。皆でおいしいおいしいと口ずさんでいると、話題は学生時代の赤ふんの話に。途中まで「あかふん」というワードが一体何を指しているのか全く分からなかったが、どうも昔の私立の小学校では遠泳が毎年開催され、男子は赤いふんどしを巻いて泳いでいたとのこと。驚いた。ゆるく身に着けてしまうと、外れてしまって後で恥ずかしい思いをすることになる。どうやら上司は赤ふんを身に着けることに長けていたらしく、他の同級生がはだけて到着する中で、最後までびしっと身に着けてゴールしていたと話していた。かっこいいですね、という返しは変だなと思い、すごいですね、と返答したが、それも正しい返答だったかわからないなと後になって思う。

会話の途中、赤ふんを見たことのない私は、どういうものなんですがと質問すると、一人がiPhoneで画像検索して出してくれた。ああこういうものか、と理解すると同時に、その日私が来ていたカーディガンの色がまさに被っていて、皆で赤ふん色だね、と笑いあった。しかし、長袖のカーディガンで露出も少ないのに、なぜか恥ずかしい気持ちを抱えて帰り道を歩くことになってしまった。このメンバーでランチに行くことがあったら、しばらく赤ふんカラーのカーディガンは封印しておこうと思う。

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