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「現在感じていることは、過去に考えてきたことが決めている」(Think Out! vol.001 レポート)

「……僕らは、感じたままにフィーリングで行動して、結果が正しくなることもあれば、そうじゃないこともありますよね」

「うんうん、そうですね。ミスしちゃって、“もっと考えればよかったー!”ってなります」

「でもその反対に、感じたことをすぐ行動に移せなかったことを後悔して、“考えすぎて失敗したー!”なんて言ったりもします」

「ああ、確かに」

「そうすると、考えることと感じることというのは、どちらかが優位にあるのではなくて、状況によって使い分けるのがいい、ということにやっぱりなるんでしょうか」

「まあ、そりゃそうっちゃそりゃそうですね」

「いや、でも待ってください。私たちがそのとき何を感じるかって、それまでにどれだけ考えてきたか、経験してきたかによって変わるんじゃないでしょうか?」

「ええと、それはつまりどういうこと?」

「つまり、たくさん考えてきたことであれば、感じたことはある程度正しくなりますよね。でも逆に、子どもが感じるままに行動しようとすると、親が止めたりする。それって、子どもがまだいろいろ考えたり経験していないから、ではないのかなと」

「ほんとだ! ということは、“考える”と“感じる”は二項対立ではなくて、感じるということの裏には常に考えるということがある、とも言えそうですね」

* * *

■ 「考える」と「感じる」の違いはなにか?


私たちは普段、考えることもあれば感じることもある。
では、その違いはなんだろうか。

そんな答えの出ない問いについて考えた哲学対話プログラム『Think Out!』。第1回のテーマ『考える』のレポートです。(Think Outについてはこちらをご覧ください: https://note.mu/thinkoutinside/n/n89a6a7e5c503)


■ 互いに面識のない9人が集まり「考えるとは何か」を考えた

7月20日、土曜日の午後。吉祥寺にオープンしたばかりのリノベーションビル『バツヨンビル』に、事前の告知を見て申し込んだ男女9人が集まりました。お茶とお菓子を片手に、和やかな雰囲気の中で会ははじまります。

最初にThink Out!の説明を聞いた後、各々の自己紹介がはじまります。

自己紹介のポイントは、「その場で呼んでほしい名前だけを伝え、普段何をしているかなどの肩書きの説明は一切しないこと」。先入観なく自由な発言や傾聴ができるよう、哲学対話では一般的に用いられているルールです。

なぜ参加しようと思ったのかも、一人ずつ話します。普段よく哲学対話に参加しているという人、哲学対話は全く知らず、告知サイトでただ面白そうなイベントを探して見つけたという人、直感でピンときたから申し込んだという人。

共通していたのは、普段会わないような人と普段考えないようなことを考えるという、そのこと自体に期待を持ったということです。

■ 参加者がそれぞれの「考える」についての問いを考える

自己紹介の次に、それぞれが考えた、テーマに関連する「問い」とその理由を共有してもらいました。

「無意識の思考は、考えていることになるのか?」
「考えない状態は、無になっているのか?」
「考えることと感じることの違いとはなにか?」
「なぜ考えることをする必要があるのか?」
「決断する際に、どこまで考えればいいのか?」
「考えることに求めるものはなにか?」
「考えて人に合わせることの意味とはなにか?」
「“考えないほうがいいこと”の基準とはなにか?」


参加者はみな、写真のような『問いカード』に自身が問いたい問いを記入し、発表します。今回は、この中からひとつの問いを多数決で決めて、みんなで対話を深めていくことにしました。

決まった問いは、「考えることと感じることの違いとはなにか?」

なぜ、この問いなのか。問いを出した女性は、「もともと自分は考えることが多かった」と言います。最近、大きな体調の変化を経験して、自分は「感じること」をおろそかにしていたと「感じた」。「考えること」ばかりではなく、「感じること」も大切にしたほうがいいということに気がついた。そこで、「感じること」を増やすために、その違いについてもっと考えてみたいということで、この問いを出されたそうです。

問いが決まったら、グループを2つに分け、それぞれのグループで対話をスタート。その後、30分経ったらグループを入れ替え、後半ふたたび30分間の対話をします。そして最後に振り返りをして、終了です。


■ 「考えると感じるの違い」を対話で深めていく

対話の中では、参加者それぞれの視点から様々な考えや新たな問いが出てきました。

「考えるって疲れますよね」

「確かに、それは“考える”が能動的な行為だから? 逆に“感じる”は受動的ですよね」

「“考える”はみんなでもできることだけど、“感じる”は基本ひとりでしかできない気がする」

「よくよく考えた上で、感じたことを我慢してモヤモヤすること、ありますよね。例えば、飲み会で『もう帰りたいな』と感じても、『いやいや、印象悪くなるからやっぱ残らないと』と考えて、残るけど全然楽しめないとか」

「感じたままに行動する例でいうと、一目惚れして告白する、とかそうですよね」

「確かに。逆に、一目惚れで付き合った後に相手についていろいろ考えすぎるとあまりいいことが無かったりします(笑)」

「感じたことを信じた方がいい場合と、考えたことを信じた方がいい場合がありますよね。その違いって、なんなんでしょう?」

「それってたとえば、人とコミュニケーションするときに、相手の言っていることを感じたままに受け取ったほうがいいのか、深い意味を考えて受け取ったほうがいいのかで悩む、みたいなことですよね」

「それあります。『はい、わかりました』と言っていても、目が死んでいて『ほんとうは嫌なのかな?』って思う人とかもいます」

「いますね〜。人にもよりますが、職業によっても変わりそうです。たとえば、金融系の人は考えるタイプが多そうですが、学校の先生とかだと感じるタイプが多そうだったり」

……などなど、前半と後半あわせて約1時間、両グループの対話は終始盛り上がりを見せていました。


■ 答えは出ないけど得られる満足

最後に、全員で輪になり、感想を共有しました。

「“考える”というテーマなのに、“感じる”についての問いが出てきて、“あれっ?”って思ったけど、でも“実は感じているときも考えているんじゃないか"という気づきがあったのが面白かった」

「“感じるように考えること"が必要なんじゃないか。ということを思いついた」

「普段考えもしないようなことをいろんな方と考えることができて、自分の考えが広がった」

……などなど、みなさん新鮮な体験や気づきを得られたと話されていました。
そのほか、アンケートからはこんな感想をいただきました。

・「考えること、感じることの広がりを得られました。」
・「いろんな人とコミュニケーションをすることの豊かさ、広がりがあった」
・「思考の幅が広がる感じがする」
・「全く異なる視点を知ることができる」
・「『思考』を飛ばす方法がわかった」
・「自分の考えに執着しないことを知れた」
・「とにかく知らない人が集まっているのが良かった」
・「自分ひとりでは思いつかなかった新たな気付きが得られた」
・「普段こういったことに時間をかけて考えることがなくなっているということに気がつけて、毎日の生活にもとり込んでいこうと思いました」
・「運営の方々の姿勢がとても真摯で、安心して楽しく対話に取り組めました」


そんな第1回に続き、第2回の開催が決定しました。

〈頭のワークアウト〉Think Out! 第2回

◉日時|2019年8月24日(土)10:00 - 12:30(開場9:45)
◉場所|吉祥寺バツヨンビル
◉テーマ|『生きる』

この『生きる』というテーマは、第1回の参加者の方へのアンケートをもとに決定いたしました。生きるって、誰にとっても永遠のテーマですからね。

詳細・お申し込みはこちらへ→
https://www.kokuchpro.com/event/thinkout002/

おいしいお菓子やコーヒーもご用意してお待ちしています!


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