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追憶の部屋(両親と私)

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追憶の部屋(両親と私)
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記事一覧

芦原妃名子様 16年前のファンレター

昨年末から、断片的に流れてくる、ドラマ『セクシー田中さん』のショート動画をおもしろく観て…

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記憶の宮殿

(2010年7月6日記) 五七の桐 4月19日、父が帰ってきました、献体先から遺骨となって。 実家…

STRAWBERRY FIELDS

『砂時計』芦原妃名子様 拝啓  初めてお便りいたします。 『砂時計』先日、高校一年の娘に…

ホットチョコレート

なんでもないようなことばやまなざしが、真冬のホットチョコレートのように甘く熱く感じること…

桃の缶詰

                 水蜜桃 幼い人のほっぺのようにやわやわしたうぶ毛が光っ…

「童話を書く」という試み~『かわたれの灯り』をめぐって ~

「童話を書く」という試み ~『かわたれの灯り』をめぐって ~ 「童話実作入門教室へのお誘い…

ごいん

ごいん  草餅の季節です。きな粉の黄色と草餅の深緑の鮮やかなコントラストを目にすると、必ず浮かぶ音があります。 父の声。 「のどが、ごいんっ って鳴るなあ。うんめぇなあ、できたての草餅は」 ゴクンとイントネーションが同じの、のど越しの質感を表す、その「ごいん」というオノマトペはたしか、自家製の草餅限定ではなかったでしょうか。 よもぎ摘み  もちくさ(よもぎ)を摘むのは、祖母と孫の役目でした。父方の祖母のおみっつあんは、どこに、いつごろ、よもぎが生えているかを熟知している

父の味・母の手触り

父の味・母の手触り  天袋から出したばかりのこたつぶとんは、陽に当ててもまだ少し湿っぽい…

ぼっとかして

ぼっとかして 母の三回忌に  2000年12月23日。母の命日がまためぐって来た。 三回忌とし…

父の手記「私の履歴書(3)」

父の手記「私の履歴書(3)」       岩﨑一雄 結婚  住宅の普請が終わった昭和二十五…

父の手記「私の履歴書(2)」

私の履歴書(2)          岩﨑一雄 宿願  昭和十三年九月一日、荒川の堤防が決壊し…

父の手記「私の履歴書(1)」 

父の手記「私の履歴書 (1)」はじめに 「暁の闇 (前編)(後編)」に書きましたように、私の母…

暁の闇 (後編)

暁の闇 (後編) 1998年1月8日  朝焼けの雪原に1人車を走らせる。雲の色の清々しさ。大地か…

暁の闇 (前編)

暁の闇 (前編)                           暁(あかつき)の空には何もなかった。 ただ星だけが輝いていた。 月は去った。雲も去った。日はまだいずこにも訪れない。 橋本治『窯変 源氏物語』より  両親はs28年に24才と23才で結婚した。 「金婚式を孫たちもみんな呼んでにぎやかにお祝いしよう」と話していたそうだ。  1997年の年の瀬。 珍しくいい正月が訪れそうな気配に、なごむような空気が流れていた。両親にも、私たちの家庭にも。  思ってもみな