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生徒の自律について考える

主な内容
・「自律」というものを考えるとき、まず大切になるのは生徒自身の基盤が安定しているかどうか。
・安定するには「複数のコミュニティ」「複数の価値観」を持つことが重要
・現在の学校において、阻害する要因は、「教員の視野の狭さ」と「部活動の同調圧力」

学校教育には様々な目標があるが、その1つに「生徒の自律」が挙げられる。現場で高校生を見ていると、

  • 真面目だが、覇気がない

  • 好きなこと、やりたいことが見つからない

  • オーナーシップを持った行動ができない

といった印象を受ける。私はこれらを見て「自律していないなあ」と感じるが、そもそも自律しているとはどういう状況を指すのであろうか?

「自ら考えて、自ら行動できる」

私はこれを自律の定義と考えている。確かに今の生徒たちは特に弱くなってきている、と感じる部分である。では、なぜそうなってしまっているのか?どうすれば良いのであろうか?

生徒自身が安定した状態にあること

行動を起こすためには自分の基盤がしっかりと安定していなければならない。思春期にある生徒たちにとってこの部分が弱いのは当たり前である。

ここでいう安定しているとは、「盤石な強い軸を持っている」ことではない。価値観が多様化し、若いうちから不特定多数の様々な視線を意識せざるを得ない現代において、どうしても1つの軸では乗り越えられないことが出てくる。

たろ@民間で挑戦する元教員 X(@taroooo1011)の図解より

自分自身が安定するためには、複数の価値観、複数のコミュニティを持つことが必要な社会となってきている。

たろ@民間で挑戦する元教員 X(@taroooo1011)の図解より

学生のうちから学校だけでなく複数のコミュニティに所属し、様々な価値観を自分の中に内包しておくことが重要となるのだ。そして、ここに現在の学校教育の問題がある。主な論点は2つである。

教員の視野が狭い

今の生徒たちには、身近に様々なチャンスがある。例えば、私の住んでいる福岡やその周辺での例をいくつか挙げてみると、

女子中高生が学校を越えて、大人と一緒にプログラミングを学ぶ(Waffle Camp)
APU(立命館アジア太平洋大学)の高校生向け探求ブートキャンプ

など、面白そうな案内を多く目にした。これらを教員が適切に提示できれば興味を持つ生徒は出てくるはずである。そこで問題なのは、これらのことに関心のある教員がまだまだ少ない、ということである。

これからはTeacherとしてだけではなく、Facilitatorとなることが求められる教員にとって、こういった情報を適切に生徒へ渡し、興味・関心を喚起することこそ重要である。しかし、残念ながら視野が狭く、そういった意識を持っている教員は少ないと感じる。(もちろんすでにこういったことへ積極的な教員の多い地域・学校はあると思うが)

部活動の問題

もう1つは部活動の問題である。これらのイベントを生徒に紹介したとき、最も多い反応が「部活があるから無理です」である。

部活動に教育効果があるのは否定しないが問題点も多い。最も問題なのは「強すぎる同調圧力」である。特に運動部に顕著であるが、日本の部活動は入部したら最後、休むことも辞めることも罪悪となってしまう風潮がある。

前述した通り、現代においては複数のコミュニティ、価値観を持つことが重要である。自分にとっての価値観を探し出すためにも生徒にはどんどん外に出てもらわなくてはならない。それを部活動、教員が邪魔してしまっているのだ。このことに教員はもっと自覚的であるべきである。

部活動もコミュニティの1つであるので、参加は奨励しつつ考え方を変えるべきである。日本は、1つのことをやり遂げることに重きを置くので部活動も専念を求めることが多いが、これからはいくつもの部活動に所属することが当たり前となっていくべきである。

興味を持ったものにはとりあえずチャレンジし、違ったと思えば変えても良い。または、「今はこちらの活動に力を入れるとき」などを自分で判断して強弱をつける。そういった参加の仕方が普通となれば、学校外のコミュニティへの参加の基礎ともなっていく。

いずれにせよ、まずは教員が意識をアップデートしていくべき問題である。

ご紹介
記事内で使わせてもらったイラストは、図解で様々な考えを発信しているたろさんのものです。分かりやすくハッとさせられるものもしばしば。
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たろ@民間で挑戦する元教員  @taroooo1011

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