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【読書メモ】自分を探すな世界を見よう

LINE株式会社 上級執行役員、株式会社ZOZO コミュニケーションデザイン室長など、メディア人としての経歴を歩まれてきた田端 信太郎 氏が今年3月に出された新著。
田端氏は「ブランド人になれ!」「これからの会社員の教科書」等のビジネスパーソン向けの書籍をこれまで多く書かれていましたが、本著は中学生の長男に向けて父親としてのメッセージを綴った内容という、今までとは少し毛色の違ったものです。

書籍の内容としては、息子さんとのエピソードをつぶさに回想していくものというよりも、むしろ田端氏自身がどのように仕事や家族、人生というものを捉え、生きてきたかというモノの考え方や価値観が中心に述べられています。それゆえに「オレはオレの人生をこうやって生きてきた。キミはキミの人生をどう生きるんだい?」と、息子さんへ問いかけるメッセージを発することが、本著の中核をなしているような印象を受けました。

ただし「なぜ君は学ぶのか」「仕事は自らの美学を作る場所」などのビジネスにつながるテーマも存分に含まれており、親目線でなくとも十分に価値のある田端流のノウハウも存分に本著には含まれているよう感じます。

以下では、本著を読んでいて特に心に残ったことをつらつらと書いてみようと思います。

親子の「愛」について

田端氏がnoteで公開されている本著のまえがきの中で、田端氏と息子さんとで行ったアメリカ旅行の際に思い浮かんだ、サン=テグジュペリの名言「愛とは、お互いを見つめ合うことではなく、 ともに同じ方向を見つめることである」を紹介されています。

相手に尽くすだけが「愛」ではない。対等に向き合い、時には相手のことを考えて、突き放すことも「愛」である。そんなことを考えておられたりするのかなと感じました。言い換えれば、このサン=テグジュペリの言葉こそ、田端氏の父親像(の理想)をあらわしているのかもしれないと、本著を読みながら思いを巡らせました。

この「自分を探すな世界を見よう」という本を読んでいて、実は個人的に一番心に残ったのは田端氏がご自身の父母とのエピソードを書かれている部分でした。田端氏とお父様との過去のやりとりや、あとがきにあるお母様に関する内容など、何か胸に来るものがありました。

自立して親元を離れ、子供を持ち自分の家庭を持った身だからこそ、親の愛情やありがたさが身に染みてわかる。親と子として、お互いを見つめ合う期間は過ぎてしまったけれども、そうした期間があったからこそ、自分らしく人生を生きている。

この本はご長男に向けて書かれたものとのことでしたが、むしろご両親に届けたい気持ちがその根底に流れているのではないか。そんなことを思いました。


田端氏の思考を一つの鑑として、自分自身の人生観や家族観をあらためて考えるきっかけになる、そんな一冊でした。とても良かったです。


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